〈訪中団〉 北京大学での青年交流会から 中日友好協会常務副会長 程永華氏の基調講演(要旨)2024年6月5日

 池田大作先生の初訪中50周年に当たる年に、中日青年友好の交流活動を行うことは特別な意義があります。池田先生が架けられた「金の橋」を継承するため、青年の皆さんと共に中日関係の未来について考えてみたいと思います。
 
 私が日本語を学び、外交という仕事を選んだことに関して、周恩来総理に感謝しなければなりません。総理のもと1963年、国内に八つの外国語学校が創立されました。私はこのうちの長春外国語学校に入学しました。
 
 そこで日本語を学び、外交の道へ歩み始めたのです。外交官を目指していた1972年、アメリカのニクソン大統領の訪中などがありました。その後、周総理が若手の育成に注力するように指示し、私は派遣留学生として来日したのです。
 
 当時を振り返る時、創価大学や池田先生のことが思い起こされてなりません。先生は中国人民がよく知り、かつ尊敬する古き良き友人です。長年、中日友好事業に取り組み、両国関係の回復と発展に多大な貢献をされてきました。
 
 68年には決然と日中国交正常化提言を行い、優れた勇気と高い見識が大きな反響を呼びました。先生は10度も訪中し、特に74年の周総理との面会は、中日友好の歴史に永遠に刻まれるものとなっています。
 
 75年、池田先生自ら身元保証人となって、私を含む6人の中国人留学生が創価大学に入ることができました。先生が私たちに、周総理との思い出を語られたり、キャンパスに「周桜」を植えることを提案されたりした光景は、昨日のことのように目に浮かんできます。
 
 日本の学生と一緒に過ごした滝山寮での生活も思い出されます。雪合戦したり、卓球をしたり、滝山祭ではギョーザの作り方を教えたりした日々は今でも忘れられません。
 
 この留学を通して、日本文化の理解を深め、真実の友情を得ることができ、その後の私の駐日大使等の仕事に、大いに役立つ経験になりました。

笑顔はじける日中の青年たち。今回、紡いだ“心の絆”は、いかなる状況にもかかわらず、両国友好の未来を支えゆく(5月28日、北京大学で)

笑顔はじける日中の青年たち。今回、紡いだ“心の絆”は、いかなる状況にもかかわらず、両国友好の未来を支えゆく(5月28日、北京大学で)

 2019年5月、私は9年3カ月の在任期間を経て、駐日大使の任務を終えました。歴代で最長の任期だといわれています。
 
 日本で勉強や仕事をした年月は、ちょうど30年です。両国が一つ一つの問題を解決し、関係を大きく発展させてきた過程を、この目で見てきました。特にここ十数年は、両国関係は困難な時期を経て、正しい軌道に進み、新たな方向に向かっています。近年は人の往来、貿易、経済などの分野で、かつてないほど発展してきています。
 
 昨年11月の習近平国家主席と岸田文雄総理大臣との会見をはじめ、先日には中日韓首脳会談がありました。このような対話と交流を維持し、中日関係が新しい軌道に沿って持続的に改善・発展するよう推進しなければなりません。
 
 今回、青年を中心とした創価学会代表訪中団は、両国の人的交流の強化において重要です。青年はそれぞれの国の希望であり、中日友好の未来と使命を担います。そんな皆さんに希望を託し、四つの指針を贈ります。

青年への4つの指針 「客観的な認識」「学び合いの伝統」「国際的な視野」「両国友好を堅持」

 第一に、理性をもって客観的に相手を認識していただきたいということです。
 
 中日両国は地理的に近く、漢字など文化的に類似するところも多い。ただ、ここに大きな落とし穴があることを忘れてはいけません。初めから、考え方も物事の見方も同じだと思い込むと、誤解を生みやすい。むしろ“違いがある”と意識すれば、共通点や共感を見つけやすくなります。これは私が実体験から学んだことです。
 
 中国にも日本にも「百聞は一見に如かず」という言葉があります。自分から相手に近づき、共に過ごし、両国の相互信頼への努力をしてください。
 
 第二に、互いに学び合い、社会の発展のために積極的に取り組んでいただきたい。
 
 歴史的にみても両国は2000年もの間、互いから学び合い、進歩を遂げてきました。
 
 この姿勢は、これからも変わることはありません。皆さんは「学び合い」という優れた伝統を受け継ぎ、相手の良い面を積極的に取り入れ、社会の進展に資する人になってください。
 
 第三に、国際的な視野をもっていただきたいということです。
 
 両国は、環境保全や高齢化社会の問題、持続可能な発展など、世界的な課題に直面しています。皆さんは視野を広げ、時代の動向を理解し、両国の国民に幸福をもたらしてください。
 
 第四に、友好の信念を堅持し、友好の事業を受け継ぎ、中日人民友好の推進力になっていただきたい。青年時代にまかれた友情の種は、歳月を重ねて、やがて、中日関係を支える大木になるでしょう。
 
 両国の青年の皆さんが、中日友好のバトンを受け継ぎ、その歴史的使命を継承してください。
 
 そして、一時的な困難に屈せず、友情の輪を広げて、中日友好事業の未来にわたる原動力となりゆくことを、心から期待しています。

中日友好青年交流会では、北京大学の周張弛さんが両国の友好を継承する思いを語った(同日、同大学で)

中日友好青年交流会では、北京大学の周張弛さんが両国の友好を継承する思いを語った(同日、同大学で)