誓願 421~423ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年6月4日

 二十六日、山本伸一は、シンガポールとオーストラリアの合同最高会議に出席した。席上、彼は、シンガポールが「獅子の都」を意味することから、仏法で説く「師子」に言及した。
 「仏法では、仏を『師子』と呼び、仏の説法を『師子吼』という。大聖人は、『師子』には『師弟』の意義があると説かれている。仏という師匠と共に生き抜くならば、弟子すなわち衆生もまた、師匠と同じ偉大な境涯になれるのを教えたのが法華経なんです」
 一般的にも、師弟の関係は、高き精神性をもつ、人間だけがつくりえる特権といえる。芸術の世界にも、教育の世界にも、職人の技の世界にも、自らを高めゆかんとするところには、必ず師弟の世界がある。
 伸一は、青年たちに力説した。
 「『人生の師』をもつことは、『生き方の規範』をもつことであり、なかでも、師弟が共に、人類の幸福と平和の大理想に生き抜く姿ほど、すばらしい世界はありません。
 この師弟不二の共戦こそが、広宣流布を永遠ならしめる生命線です。そして、広布の流れを、末法万年を潤す大河にするかどうかは、すべて後継の弟子によって決まります。
 戸田先生は、よく言われていた。『伸一がいれば、心配ない!』『君がいれば、安心だ!』と。私も今、師子の道を歩む皆さんがいれば、世界広布は盤石である、安心であると、強く確信しています」
 さらに、彼は、「各各師子王の心を取り出して・いかに人をどすともをづる事なかれ」(御書一一九〇ページ)と仰せのように、師子王の心とは、「勇気」であると訴えた。
 「勇気は、誰でも平等にもっています。勇気は、幸福という無尽蔵の宝の扉を開くカギです。しかし、多くの人が、それを封印し、臆病、弱気、迷いの波間を漂流している。どうか皆さんは、勇気を取り出し、胸中の臆病を打ち破ってください。そこに人生を勝利する要因があります」
 未来は青年のものだ。ゆえに、青年には、民衆を守り抜く師子王に育つ責任がある。