おはようございます。部屋の温度は20℃。写真を通して友好を深める。それぞれの持ち味を生かし、楽しい対話が弾む。楽しいことを始めよう。今日もお元気で!

 

【ルポ一滴】 座談会で「写真展」を開いてみたら…2024年6月4日

石﨑地区部長㊨と谷越さんが「撮影ドライブ」に。呉羽山展望台から立山連峰を撮影。互いの写真を見せ合いながら、和やかに語らう(先月、富山市内で)

石﨑地区部長㊨と谷越さんが「撮影ドライブ」に。呉羽山展望台から立山連峰を撮影。互いの写真を見せ合いながら、和やかに語らう(先月、富山市内で)

 先月、富山県の推計人口が「100万人を割った」と報じられました。
 76年ぶりのことで、主な要因は「出生数の減少や若い女性の県外流出」だといいます。
  
 少子高齢化や過疎化が進む中でも、“地区座談会の参加者を増やしたい”と祈り、アイデアを出した地区部長がいました。(記事=中谷光昭)

会合に来られる人も、足を運べない人も、「心通う、ひととき」を。

 北陸新幹線「かがやき」は、東京から富山までを約2時間強で結ぶ。
 富山駅は、キャリーケースを引く人でにぎわい、富山市内の店では、名物の白エビやホタルイカの海鮮丼に歓声を上げる外国人観光客の姿もあった。
 コロナ禍を越え、インバウンド(訪日客)も順調に回復しているようだ。
  
 記者が訪れたのは、5月中旬。彼方の立山連峰は、まだ雪をかぶっていた。
 市街地を、色とりどりの路面電車が行き交う。停留所で待つ人が「『市電』の数が増えて、移動がしやすい」と言っていた。
 地元では、市電の名で親しまれる路面電車。人口減少と超高齢社会を見据え、歩いて暮らせるコンパクトな町づくりを目指す富山市では、公共交通の整備が進んでいる。

 5月17日。富山駅から富山湾方面に、車で北上すること約20分。
 「東富山地区」の座談会場である稲垣俊一さん(壮年部員)、京子さん(地区副女性部長)夫妻の自宅に着いた。
  
 続々と人が集まり、談笑の輪が広がる。
 座談会は、石﨑民江さん(地区女性部長)のあいさつや、石﨑潤さん(地区部長)の御書講義など、スムーズに進む。
 いよいよ、メイン企画。
 「皆さん、大変お待たせいたしました。東富山地区の写真展を開催します!」
 司会の内村智志さん(男子地区リーダー)の声に、参加者の顔がほころぶ。
  
 次々と、テレビモニターに写真が映し出される。
 座談会のために、地区の同志が撮影・提供したもの。未入会家族や活動に参加したことのないメンバーが撮った写真もあった。
 愛猫や押し花、岩瀬浜や富岩運河環水公園の風景。同志の心を映すような、思い出の一枚また一枚。
 「きれいだね」「どこかのカレンダーに出てきそう」と感嘆の声が漏れる。

東富山地区の座談会。未来部のメンバーが、撮影した「富山市ファミリーパーク」の思い出を語ると、参加者から温かい拍手が寄せられた(先月、富山市内で)

東富山地区の座談会。未来部のメンバーが、撮影した「富山市ファミリーパーク」の思い出を語ると、参加者から温かい拍手が寄せられた(先月、富山市内で)

内村智志さん

内村智志さん

 司会の内村さんは、滑川市の古民家を撮った。
 この古民家は、地域活性化の一環として改装され、現在は「eスポーツ」のプロチームの拠点に。この施設で、内村さんは趣味のゲームを楽しみ、交流を広げた様子を話していた。
 さらに、内村さんの勧めで企画に参加した兄の写真が映ると、歓声と拍手が起こった。
  
 自らが経営する餃子店の配送車を撮ったのは、中山直美さん(地区副女性部長)。
 店の名は「ミッちゃん餃子」。テレビや雑誌でたびたび紹介され、ある著名人は「日本一の餃子」と太鼓判を押す。
 中山さんは昨年、この「写真企画」を機に、数年ぶりに座談会に参加した。店が多忙の中、「5分でも、10分でも」と会合に駆けつけている。
  
 また、「友情出演」として、昨年、富山商業高校のエース投手として甲子園に出場し、この春、地区を巣立って創価大学に進学した上田海翔さんからも「桜」の写真が届いた。

ミッちゃん餃子を営む中山清さん㊨、直美さん夫妻。店内には著名人のサインがずらりと

ミッちゃん餃子を営む中山清さん㊨、直美さん夫妻。店内には著名人のサインがずらりと

■未入会家族も楽しめる企画

 掉尾を飾ったのは、古川智子さん(女性部副本部長)の写真。
 タイトルは「無冠の道」。古川さんは「大好きな桜並木、聖教新聞の配達の時に撮りました」とほほ笑んだ。
  
 写真を通して座談会に“参加”し、心と心を通わせる。写真企画の参加者は、未入会家族2人、初参加11人を含む61人だった。
  
 石﨑地区女性部長は語る。
 「普段、会うことはできても、“会合への参加はちょっと……”と言う方もいらっしゃいます。そうした皆さんも“写真ならいいですよ”と参加してくださり、未入会や未活動のご家族とも縁することができています」

 地区部長の石﨑さんは、この地区で育った。
 創大への進学を機に上京し、都内で就職。信心根本に、指定難病の「クローン病」を克服する。
 本紙の通信員として、記事や写真に携わってきた経験が、「写真展」の企画を進める力になった。
  
 2018年末、故郷へのUターンを決断。
 当時、長女の恵美さんはまだ6歳。東京で生まれ育った妻・民江さんにとっても、見ず知らずの土地での新生活は、不安を伴うものだった。
  
 土地勘もなく、車の運転免許も持っていなかった民江さんを支えたのは、杉瀬まつ子さん(支部女性部長)だった。
 「杉瀬さんがいつも気にかけてくれ、車を出しては会館に連れて行ってくださいました。温かな地区の皆さんと過ごす中で、新生活の不安が和らいでいったんです」

石﨑民江さん

石﨑民江さん

杉瀬まつ子さん

杉瀬まつ子さん

 東富山地区も高齢化が進み、年々、座談会の参加者が減っていた。
 だが地区部長は、それでも前に進んだ。
 手放さなかった「三つの祈り」があった。
  
 ①座談会の参加者を増やしたい。
 ②参加者が喜んで取り組める企画を考えたい。
 ③座談会に参加できない人も、学会や師匠に縁してもらいたい。
  
 思案を巡らせ、祈りを重ねた石﨑さん。魚津市で開かれた「自然との対話――池田大作写真展」(昨年9月)へ足を運んだ。
 先生の写真を見つめながら、“どんな思いでシャッターを切られたんだろう”と考える。その時、ハッとひらめいた。
 “地区で、写真展を開催したらどうだろうか”
  
 地区の皆さんに写真を撮ってもらい、それを集め、座談会で発表する。
 「それなら、座談会に足を運べない方も、写真を通して“参加”してもらえるかもしれない」
 さらに、皆が「座談会をつくる主体者」にもなれるし、写真を通して、「共通の話題もできる」。
 それは「三つの祈り」をことごとく叶える妙案だった。

先月の昼の部の座談会。会場を提供する林昭一さんの自宅は、元日の地震で一部損壊した。復興の途上にあって同志は困難に負けず、励まし合って進む(写真は石﨑地区女性部長提供)

先月の昼の部の座談会。会場を提供する林昭一さんの自宅は、元日の地震で一部損壊した。復興の途上にあって同志は困難に負けず、励まし合って進む(写真は石﨑地区女性部長提供)

■写真は「かすがい」

 早速、地区協議会で提案。賛同を得て、昨年11月の座談会を、東富山地区の「第1回写真展」とすることが決まった。
  
 「単なる“写真集め”にはしたくなかった」と、地区部長は振り返る。
 「一枚」の写真に心を通わせたい。「写真を“かすがい”として、師匠や同志との絆をつくること」が最大の目的だった。
  
 当時、地区女性部長をしていた杉瀬さんは「地区部長から『日頃、会合に出られない人にも池田先生との絆を結んでもらいたい』という言葉を聞いた瞬間、『中途半端な戦いはできない』と、スイッチが入りました」と述懐する。
  
 写真企画の参加目標を何人にするか――。
 当時、地区座談会の参加者は、昼夜合わせて20人前後。石﨑さんは目標を倍の「40人」に設定した。
 チラシを作り、杉瀬さんと二人三脚で地区の隅々まで駆け回り、企画参加を呼びかけていった。

地区部長が作った写真展のチラシ

地区部長が作った写真展のチラシ

■撮影ドライブ

 壮年部員の谷越元さんは、10年以上前に脳出血を患い、足にまひが残る。
 石﨑さんは谷越さんのもとを訪ね、「僕が車を出しますから、一緒に撮影ドライブに行きませんか?」と持ちかけた。
  
 谷越さんは「フレンドリーに声をかけてもらえて、うれしかった。ドライブしながら車でいろんな話ができて、仲が深まったと思います」と。
 撮影スポットは、谷越さんのリクエストで「富山港展望台」に決まった。
  
 スマホ越しに、二人で同じ景色を眺め、撮った写真を見せ合う。
 それはまさに、石﨑さんが願った「心通い合う、ひととき」だった。

富山港

富山港

 尾島陽子さん(支部副女性部長)は長年、全身性エリテマトーデスと闘ってきた。
 現在は歩行器を使っての生活。だが、いつも対話に率先し、「信心の炎」は衰えを知らない。
  
 尾島さんのもとを、杉瀬さんが訪ね、写真企画の話をした。
 「足も悪いし、携帯電話の使い方もよく分からないから、写真は撮れないわ」と残念そうな尾島さん。
 「それなら、尾島さんが大事にしているものを、私が撮ってあげますよ」と杉瀬さんは応えた。
 思い出が詰まった「編み笠と壁掛け」を写真に収める。それが座談会で紹介され、尾島さんは「とてもうれしかった」という。
  
 杉瀬さんは語っていた。
 「普段、会合の連絡や近況で話が終わってしまいがちなところを、写真を通して、その方が好きなこと、大事にしてこられたことなど、人生の来し方まで知ることができます。それも、この企画の魅力です」
  
 一軒一軒、訪ねて歩き、最終的に写真企画に参加した人は、目標を大きく上回る52人となった。
 そして、本年5月の第2回は、さらに参加者を増やすことができ、東富山地区の座談会に新たな歴史が刻まれた。

尾島陽子さん

尾島陽子さん

 写真企画は、座談会で終わりではない。
 地区部長は、全ての写真を一枚の紙にまとめて額装し、座談会に参加できなかった同志のもとを訪ねては、見せて回っている。
  
 また、写真収集のために交換したLINEが、元日の能登半島地震において、同志の安否を確認する大切な「命綱」にもなった。
  
 池田先生は語っている。
 「一人の必死の挑戦が壁を破る。一人の宿命転換の実証が皆に希望を送る。一人の逆転の勝利が、未来までも勇気を広げる。率先垂範で『我に続け!』と波動を起こすのだ。一人一人を大切にして、心をつかみ、仏縁を結ぶのだ」と。
  
 押し寄せる時代の波に身をゆだねることなく、もがきつつも打開の道を探る。
 その「必死の一人」から、新たな広布前進のドラマは生まれる。
 「写真企画を、地区の伝統にしたい」。そう語る地区部長の瞳は、若々しく燃えていた。

地区の皆さんが撮った写真を一つに

地区の皆さんが撮った写真を一つに

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