地球憲章会議に参加して2024年5月31日

  • SGI開発・人道担当プログラムコーディネーター 赤須清志さん

 地球憲章インタナショナル(ECI)が主催し、SGI(創価学会インタナショナル)などが後援する地球憲章会議が4月12日から14日にかけて、アメリカ・フロリダ州のロリンズ・カレッジで行われた。会議に出席したSGI開発・人道担当プログラムコーディネーターの赤須清志氏の手記を紹介する。
 
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 地球憲章運動の中心の方々との交流は20年以上続いており、SGIは展示の共同制作や会議での協働、スマホ用アプリの開発等、広く教育・啓発活動を共に展開してきました。先日は新たに「希望と行動の種子ハッシュタグキャンペーン」を立ち上げたところです。
 
 地球憲章は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)が具体的な実践の「目標」だとすれば、なぜその目標を目指すのかという倫理的な「目的」を教えるものです。ECIのミリアン・ビレラ事務局長は、「SDGsを建物とするならば、地球憲章はその土台といえる」と語っています。
 
 産業革命を経て、時に自然を犠牲にして開発を進めてきた現代の文明。しかし、人間と自然環境を切り離して考えがちな見方は、地球環境システム全体に影響を及ぼすに至り、気候危機や核兵器の問題に見られるように、限界を迎えています。そのため、人間と地球の関係を見直した「生態文明」ともいうべき新しい文明が求められており、国際的に議論が活発になっています。今回の会議には20カ国・地域から155人が集い、生態文明を築く方途を巡って70以上の発表が行われました。

アメリカのロリンズ・カレッジで行われた地球憲章会議。環境教育を巡る分科会でSGIの代表が発表した(4月)

アメリカのロリンズ・カレッジで行われた地球憲章会議。環境教育を巡る分科会でSGIの代表が発表した(4月)

 特に印象に残った場面が三つあります。
 
 一つ目は、米エール大学のメアリー・イブリン・タッカー博士の講演です。生態文明について、中国では10年以上前から国を挙げて環境政策を推し進めており、言葉自体の認識は若者の間で広がっているとのことでした。
 
 博士の発表に対し中国からの参加者が、そうした政策に「心」を入れ込むのが地球憲章であると、憲章の意義を語っていました。世界を変えるには、制度の整備とともに、人間の心を変えねばならないとの思いを改めて深くした一幕でした。
 
 もう一つは、地球憲章国際審議会委員のサム・クローウェル博士が講演中に三つの空席を指して語った言葉です。博士は「これらの席は、虐げられ、声を聴いてもらえなかった人々の代表、自分では声を出すことのできない自然環境の代表、これから生まれてくる未来の代表のためにあえて空けてある席です」と、空席を設けた意図を説明したのです。人間への配慮の精神にあふれる、地球憲章を実践しているかのような心温まる内容でした。
 
 最後に、ECIのユースの代表が主体となって行われた参加型の全体セッションです。
 
 「青年は、私たちの世代が受けたような経験が足りないので、導いてあげないといけない」といった青年に対する固定的な考えが紹介され、会場にいた若者の多くが、実際にこのような言葉をかけられたことがあると発表しました。
 
 現在の文明や価値観の影響を、より長く大きく受けるのは青年世代です。“教える”という態度ではなく、青年の思いに耳を傾け、“互いに学び合う”という姿勢が大事ではないかとの主張に、3日間で一番大きな拍手が起こりました。

心の変革から社会の変革へ 人間革命の連帯さらに

 SGIを代表して参加したジョーン・アンダーソン氏と私は、環境教育を巡る分科会で発表の機会がありました。池田先生とローマクラブのアウレリオ・ペッチェイ博士の対談を紹介し、時代変革のために必要な「人間革命の原理」と、池田先生が貫いてきた「対話の重要性」を訴えました。
 
 さまざまな場面で世論が二分され、相手を負かすことだけを目的とするような言論も少なくない中で、互いを信頼し、より良い答えを導く創造的な方途が「対話」であるとの訴えは、多くの参加者から高い評価が寄せられました。
 
 その他、創価大学の掛川三千代教授による、学生が主体的に授業を進める研究事例の紹介や、アメリカ創価大学のエド・フィーゼル学長による、世界市民育成のために大学を一から手づくりしてきた経験の発表。また、ブラジルのアマゾン創価研究所が取り組んできた、環境教育や民間企業と連携しての活動などが発表され、創価の思想に大きな共感が寄せられました。
 
 会議最終日には、地球憲章国際審議会のアクペジ・オグブイグウェ委員長が、池田先生の写真集を取り出し、「SGI会長は、写真や詩で大切な出会いをとどめてこられた。今の私の思いにピッタリだ。ここに集い合った皆さんのことを同様にとどめていきたい」と語られました。さらに「色とりどりに たくさんの花が咲き香ったとき それぞれの個性も ひときわ鮮やかに映える」との先生の言葉を引用し、一人一人が尊い使命を果たしていけるようにと願われたのです。
 
 現代が直面する諸問題は、“より多く所有したい”という人間の貪欲が引き起こしてきた。そうであるならば人間の手で必ず解決できる。そして、人間の行動を変えていくためには「心の変革」が求められている――今回の会議を通して、そう痛感しました。
 
 目の前の一人を徹底して励ます学会活動を通して、自他共の心の変革を促す人間革命に励むことこそ、その一番の近道であると確信し、一層努力してまいります。

●「希望と行動の種子ハッシュタグキャンペーン」への参加方法

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 ※「希望と行動の種子ハッシュタグキャンペーン」の詳細(英語)はこちら