誓願 416~418ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年5月31日

 山本伸一が、二十一世紀を生きる青年たちへのメッセージを求めると、ナザン大統領は学会の青年部への讃辞を惜しまなかった。
 「独立記念日の式典で、私は何度も、シンガポール創価学会の演技を見てきました。本当にすばらしい。シンガポールだけでなく、マレーシア創価学会の演技も見てきました。見事に調和しています。規律がある。心を引きつける美しさがあります。いったい、どうしたら、こんなすばらしい演技ができるのだろう──いつも、そう驚いていました。
 しかも、青年が主体者として参加している。演技には、仏法の教えが体現されています。シンガポールの社会においても、人間的な質が、一段と大事になってきています。その意味でも、創価学会は、社会と国家に、すばらしい貢献をしてくださっています」
 伸一は、学会への信頼と期待がここまで社会に広がり、後継の青年たちが賞讃されていることが、何よりも嬉しかった。
 次代を担う青年たちの成長こそが、弟子の勝利こそが、自身の喜びであり、楽しみであり、希望である──それが師の心である。それが師弟の絆である。

 翌二十四日、オーストラリアのシドニー大学から山本伸一に名誉文学博士号が贈られた。名誉学位記の授与は、シンガポール及び周辺国からの留学生の卒業式典の席で行われた。
 会場は、シンガポールの中心部にあるホテルであった。
 シドニー大学は、オーストラリア最初の大学であり、世界に開かれ、約三千人の留学生が学んでいる。特に、アジアからの留学生が多く、シンガポールも、その一つであった。
 「留学生と長い間、離れていた家族や友人たちにも、晴れ姿を見せてあげたい」との配慮から、シンガポールと香港で卒業式を行うことになったという。そのこまやかな心遣いにも、学生中心の教育思想が脈打っていた。
 「学生のための大学」という考え方こそ、人間教育の確固たる基盤となる。