誓願 410~411ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年5月27日

 山本伸一たちは、バハマからキューバが差し向けたソ連製の飛行機で首都ハバナのホセ・マルティ国際空港へ向かった。
 二十四日の午後五時半過ぎ、空港に到着すると、ハルト文化大臣夫妻をはじめ、多くの政府要人が出迎えてくれた。
 伸一は、心からの謝意を述べ、「民間人であるが、『勇気』と『行動』で、人びとや国と国の“分断”を“結合”に変えていきたい。二十一世紀のために、全力で平和の道を開きたい」と、語った。
 キューバでの滞在は二泊三日であるが、彼は、多くの人びとと友誼を結ぼうと深く心に誓っていた。一つ一つの行事に、一人ひとりとの出会いに、全精魂を注ぐ思いで臨んだ。
 二十五日の午後四時、国立ハバナ大学を訪問した。ここで、伸一の文化交流への貢献を讃えて、文化大臣から国家勲章「フェリックス・バレラ勲章勲一等」が贈られた。
 叙勲式で文化大臣は、「会長は『平和の不屈の行動者』であり、叙勲は『平和を願う民衆の連帯』の表れである」と述べた。
 次いで、ハバナ大学からの「名誉人文学博士号」の授与式が行われ、引き続き伸一が、「新世紀へ 大いなる精神の架橋を」と題して記念講演をすることになっていた。
 式典の途中から、晴れていた空が、にわかに曇り、沛然たる豪雨となった。会場の講堂の窓に稲妻が走り、雷鳴が轟く。酷暑のキューバで、雨は涼をもたらす恵みである。しかし、あまりにも激しい突然の雷雨であった。
 伸一はマイクに向かい、こう話し始めた。
 「雷鳴──なんとすばらしき天の音楽でありましょう。『平和の勝利』への人類の大行進を、天が祝福してくれている『ドラムの響き』です。『大交響楽』です。
 また、なんとすばらしき雨でありましょう。苦難に負けてはならない、苦難の嵐の中を堂々と進めと、天がわれらに教えてくれているようではありませんか!」
 大拍手が起こり、皆の顔に笑みが浮かぶ。深い心の共鳴が場内に広がった。