【四国】〈Discovery SHIKOKU〉5 香川・オリーブ 実は、とってもSDGsな植物2024年5月24日

 香川の県花・県木「オリーブ」は、平和の象徴であり、健康にも良いと評判。実は、とっても“SDGsな植物”なのを知っていましたか? 今回は、「瀬戸内オリーブ園㈱」の蓮井平記代表取締役に、その魅力を聞きました。

インタビュー 瀬戸内オリーブ園㈱ 蓮井平記 代表取締役

生産者が連携 → ブランド化し発信
利益より地域活性化を

 ――オリーブオイルは、健康に良いといわれます。
  
 サラダや納豆、おみそ汁に入れると最高においしいです。ソフトクリームにかけるのも、お勧めです。
 私は、オリーブオイルを何にでもかけて毎日食べています。
 そのおかげか、今年76歳になりますが、定期的な血液検査は異常なし。今でも、車を一日700キロ運転することもあります(笑)。
 
 年齢を重ねても、いつまでも活動的で、健康な体を維持できる――わが社のキャッチフレーズ「100年クオリティ」には、オリーブの力で、人生100年を元気いっぱい生きていこうという思いを込めています。

オリーブの様子を確認する蓮井さん

オリーブの様子を確認する蓮井さん

開花状況をルーペで確認

開花状況をルーペで確認

取材当日は、オリーブの花が咲き始めていた

取材当日は、オリーブの花が咲き始めていた

 ――ハトと並んで、「平和の象徴」としても知られています。
  
 ハトとオリーブが平和の象徴といわれるようになったのは、旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」のエピソードで、箱舟から放たれたハトがオリーブの葉をくわえて戻ってきた姿に、ノアが大災害が収まったことを知ったという逸話に由来するようです。
 
 国連の旗も、オリーブの葉が北極を中心とした世界を囲むデザインになっています。
 また勝者の証しともされており、2004年(平成16年)のアテネオリンピックでは、月桂冠ではなく、オリーブの冠が使われました。
 
  
 ――「瀬戸内オリーブ園」では、オリーブの木を隅々まで無駄にしない取り組みをされていますね。
  
 10年(同22年)に、東京で土木工学の教授をしていた方から、“オリーブ農園を造りたい”と、声をかけられたんです。前身となる「㈱瀬戸内オリーブ」の立ち上げでは、土地の整備や木の植え付けにも携わらせてもらいました。
 20年(令和2年)に3代目の代表取締役として事業継承し、「瀬戸内オリーブ園㈱」として出発させていただきました。

香川・坂出市に広がるオリーブの農園。かつて塩田だった土地を活用して造られた(瀬戸内オリーブ園提供)

香川・坂出市に広がるオリーブの農園。かつて塩田だった土地を活用して造られた(瀬戸内オリーブ園提供)

 初代の社長の時代から、大切にしてきたのが、「オリーブの木を無駄にしない」取り組みです。
 
 オリーブの搾りかすは、県のブランドである「オリーブ牛」「オリーブ豚」「オリーブ地鶏」などの飼料として活用されています。オリーブを摂取した家畜の肉は、脂があっさりしていて、ヘルシーなのが特徴。
 
 オリーブの葉を、ハマチをはじめとした魚の餌に加工する技術も開発しました。漁業協同組合連合会へのオリーブパウダーの供給量は、年間約5トンと、わが社が全国でナンバー1を誇っています。
 オリーブの葉の粉末の含有量や塩の配合、練り方などを研究する中で、「オリーブうどん」「オリーブパスタ」を商品化できました。

 その他にも、木を育てる時に伐採した木片はチップにし、1年かけて肥料として土に戻すなど、オリーブは、余すところなく利用できる、SDGsな植物なんです。
 
 設備や広大な土地が必要でコストもかかりますが、オリーブへの感謝の思いで機械を開発するなど、効率化を図りながら取り組んでいます。
 
 今月には、大手コンビニエンスストアの人気唐揚げ商品に、わが社のオリーブ酢を採用していただきました。
 このお酢も、オリーブオイルの搾りかすを発酵させて造ったもので、オリーブの魅力を知ってもらう機会になればと思っています。

収穫したオリーブの実(同)

収穫したオリーブの実(同)

オリーブオイル(同)

オリーブオイル(同)

 国産のオリーブオイルって、とても高いですよね。
 私は生産者だから毎日食べていますけど、「たっぷりかけろ」なんて言われたら、普通は「冗談言っちゃ困るよ!」となりますよね(笑)。
 
 でも、海外製に比べて鮮度も良くて深みのあるオリーブオイルを、もっと多くの人に味わってほしい。
 
 オリーブを活用した商品を作っているのも、副産物で得た利益で、もっとオイルを安くしたいという思いからなんです。
 
 
 ――企業として、地域との関わりも大切にされています。
  
 毎年、地元の園児や小・中学生らが遠足や収穫体験などでオリーブ園を訪れています。昨年からは、敷地を地域のマルシェ会場として提供。今月も開催し、お菓子屋さんや楽器の生演奏もあって、大盛況でした。
 
 また、趣味でオリーブを育てている方は意外と多く、そうした方から栽培方法の相談なども受けています。オリーブの実がなっても、自宅で加工してオイルにするのは難しい。そこで、坂出市加茂町にある直営店に、小型の搾油機を置いて、手軽に自家製のオイルを作れるようにしました。
 
 こうした取り組みを通して、地域の皆さんにオリーブを、身近に感じてもらえたら、うれしいです。

オリーブを持参すれば、自家製オイルが作れる坂出市加茂町の直営店(同)

オリーブを持参すれば、自家製オイルが作れる坂出市加茂町の直営店(同)

 ――瀬戸内海エリア対象の協定の策定にも挑まれています。
  
 今春から販売が始まったオリーブサーモンをはじめ、今後、飼料や加工品としてオリーブの需要が高まっていくでしょう。それを見据えて、先代の時に、瀬戸内海地域の生産者が連携する「環瀬戸内海オリーブ産業促進協議会」を提案。一社一社を訪問する中で、県内で協定が実現し、岡山や広島でも賛同を得ることができました。
 
 瀬戸内海の質の高いオリーブオイルをブランド化して発信することで、国産オリーブオイルの価値を高め、認知・需要拡大を目指しています。
 
 自社の利益だけを求めるのではなく、オリーブを通じて競合他社とも団結し、地域活性化につなげていきたいですね。

瀬戸内海を望める農園(同)

瀬戸内海を望める農園(同)

◆◇◆ 社会貢献や人々をつなぐ学会に期待 ◆◇◆

 ――4月に高松市で行われた「ごはんといのちのストーリー展」では、オリーブに関する地元展示に携わっていただきました。
  
 パネル作成に当たっての情報提供と、オリーブの粉末サンプルやオリーブの木で作ったコースターなどを提供させていただきました。
 
 創価学会の皆さんは、地域に開かれた展示を長年やってこられ、社会に大きな貢献をしておられます。他の宗教団体で、こうした規模で開催できる教団は、ないのではと思います。

4月の“ごはん展”で好評を博したオリーブに関する地元展示

4月の“ごはん展”で好評を博したオリーブに関する地元展示

 ――最後に青年読者へ向けたエールをお願いします。
  
 私は、聖教新聞と共に月刊誌「潮」も読ませてもらっていますが、先日は韓非子の格言が載っていました。「老いたる馬は路を忘れず」――経験を積んだ者や経験の重要性を説いた故事です。
 
 現代は、人々のつながりが希薄になっています。孤独死してしまう高齢者も多いと問題です。しかし、高齢者の経験や積み上げてきたものには、本当に学ぶことがたくさんある。
 
 わが社では、「定年」は設けていません。下は20代から、上は80歳近くの人もいますが、本人が希望すれば、いつまででも雇用しています。仕事を通して、やりがいを感じてもらいながら、私たちも人生の先輩から多くのことを学ばせてもらっているのです。
 
 学会では、老若男女が集まる座談会を行っているそうですね。こうした地域のつながりは、とても大切だと思います。ぜひ、若い方々には、人生の先輩たちとのつながりを持って耳を傾けてほしいです。「世代を超えたコミュニケーション」のリード役となることを期待しています。

プロフィル

 はすい つねき 1948年、愛媛県生まれ。香川県で水道などの設備会社を営んでいたが、2011年に「㈱瀬戸内オリーブ」の創業に携わって以来、オリーブ栽培に従事。20年に事業継承し、「瀬戸内オリーブ園㈱」の代表取締役に就任した。オリーブオイルのほか、オリーブを使ったお酢や麺類の商品開発を手がける。