〈社説〉 2024・5・20 あす「山光提言」40周年2024年5月20日

地域の力引き出す「意識の変革」

 1973年9月、池田先生は、島根県出雲市の日御碕灯台を訪れた。雄大な景色を眺めつつ、山陰の風土や歴史に思いをはせ、ある着想を得る。
 
 そして11年後の84年5月21日、島根文化会館で行われた各部代表者会議で、先生は山陰地方の風光明媚な風景と食文化の豊かさをたたえた後、「(山陰を)光り輝く地、つまり『山光』と申しあげたい」と語った。この「山光提言」から、あすで40周年となる。
 
 今、山陰地方には、幸福な社会を地域一体でつくるモデルが数多く存在する。青年移住者数を大きく増やした鳥取の就農支援。働きながら子育てできる島根の環境づくり。両県の地産地消の推進や、地球規模の環境問題に対する先進的な施策も注目される。
 
 地域エコノミストの藻谷浩介氏は“過疎地の代表”といわれる島根県を例に挙げつつ、日本の降水量の多さや土地の肥沃さから考えれば、面積当たりの人口支持力はむしろ高いと指摘。世界的に見ると、清流・土壌・気候など「地の利」に恵まれた日本の「過疎」は、いわば適切な人数の「適疎」であり、「適密」ですらあると主張する。
 
 そうした地域の潜在力を引き出すには、まず地元の人々の「意識の変革」が欠かせない。これを促したのが「山光提言」だった。
 
 先生の言葉に勇気を得た鳥取・島根の同志は、地域貢献に徹してきた。山間部をもり立てるグルメ事業、障がい児のデイサービス施設の運営。“世界で活躍する人材に”との夢を胸に、勉学・仕事に励む青年もいる。
 
 「(山光提言は)地域再生の“希望の哲学”」「未来への力強さを感じる」など識者の評価も高い。「鳥の劇場」芸術監督の中島諒人氏は「球体の表面に中心はなく、陰も陽もないように、それぞれの人が生きている場所が地球の中心」「山陰から放たれる人や地域の輝きは、日本の行く先を照らす光」「その光が『山光』と呼ばれる日はきっと来る」と期待した。
 
 仏法では一念三千の法理を説く。生命には、あらゆる物事・働きが具わり連関しているゆえに、自身の一念が変われば、環境も変わるという思想である。
 
 愛する地域を理想の楽土へ――その出発点は自身の「心の変革」にあると銘記し、今いる使命の天地を輝かせたい。