名字の言 心にうるおいを生む“ひと手間”2024年5月19日

 ある10代のメンバーと音楽が話題に上った。好きなジャンルを聞くと「僕は“雑食”なんです」と。琴線に触れた楽曲を、ジャンルや年代を問わずに聴くのだそう▼近年はサブスクリプション(定額制)サービスが普及し、気に入った音楽や映画などを手軽に視聴できるようになった。若者世代で、昭和や平成初期の文化が脚光を浴びる“レトロブーム”も、こうした趣味の“入り口”が増えたことと無関係ではないだろう▼レコードの売り上げは、20代の間でも伸びている。雑誌「アナログ」の編集長・野間美紀子氏は、針を下ろすなどの“身体感覚が、デジタルネーティブの若者にとって新鮮”(朝日新聞2023年11月28日付)と分析する。レコードをかける時の、音が鳴るまでの“待ち遠しさ”は、配信では味わいにくい▼生活の効率化・時短化が進む昨今。チャットでの会話やビデオ通話など、コミュニケーションのあり方も変化した。そうした中でも、心を動かされる喜びまでは“省略”したくない▼「心こそ大切なれ」(新1623・全1192)。一つのあいさつ、一つの語らいに込める気持ちの“密度”は必ず相手に届く。ささやかであっても、心にうるおいを生む“ひと手間”を重ねていきたい。(積)