名字の言 いのちの場所はどこにある?2024年5月16日

 小学校4年2組の教室に入ってきたのは、95歳の医師だった。始まるのは「いのちの授業」。その“先生”が児童に尋ねる。「いのちはどこにあると思いますか?」▼105歳で天寿を全うした医師・日野原重明さんが、実際に行っていた“出張授業”を描いた絵本の場面である。聴診器が配られ、子どもたちは互いの胸の心音を聞く。先の質問に対する回答は「心臓」「頭」「からだぜんぶ!」とさまざま。日野原さんは言う。「いのちは、きみたちのもっている時間だといえますよ」(『いのちのおはなし』講談社)▼日々の忙しさに追われるたび、「時間がない」と口にしてしまうわが身を振り返る。それを「命を使っている」と捉えればどうか。限りあるからこそ「何のために使うのか」が問われよう▼人間の生命を最大に輝かせるものは、お金や財産という「蔵の財」でも、健康や肩書・名誉といった「身の財」でもない。日蓮大聖人は「心の財」こそ第一と仰せである(新1596・全1173)▼家庭であれ職場であれ地域であれ、自他共の幸福を願い、信心根本に他者に尽くす行動は、全て「心の財」を積む営みとなる。わが命を使う「使命」の場所はどこにあるか。その答えは「今、ここにあり」に違いない。(之)