〈社説〉 2024・5・15 「五月病」に注意2024年5月15日

自分の歩幅で一歩ずつ前へ

 ゴールデンウイークが終わったこの時期、話題に上るのが「五月病」。新年度から張り詰めていた緊張感が連休で解け、学業や仕事への意欲が湧かなくなったり、心身の不調を感じたりした経験を持つ人は多いのではないか。
 
 「五月病」という言葉は通称であり、正式な疾患名ではない。新しい環境にうまく対処できないことで起きる「適応障害」や、気分が落ち込む「抑うつ状態」に関係するともいわれる。
 
 特に新入生や新社会人がストレスを抱えてしまいがちな時期。放置すると、本格的なうつの症状が出ることもある。ストレスや疲労に、上手に対応するために、自己管理と工夫が必要だ。
 
 まず生活習慣を整えていきたい。適切な睡眠時間を確保したり、適度な運動を心がけたりすることが、心身の健康の土台となる。厚生労働省は、五月病への対処として「親しい人たちと交流する」「笑う」「仕事から離れた趣味をもつ」などを挙げ、自分に合ったストレス対処法を生活に取り入れるよう呼びかけている。
 
 加えて、普段からストレスに対するレジリエンス(回復力)を高めておくことも重要だ。そのために「健全な人間関係を育む」「自分を大切にする」「目標に向かって努力する」「感謝の気持ちをもつ」ことが効果的という専門家もいる(モリー・マルーフ著『脳と身体を最適化せよ!』ダイヤモンド社)。これらの多くは、自他共の幸福を目指し、日々の学会活動の中で実践していることに共通するともいえよう。
 
 もちろん、十分に注意して生活していても、周囲の状況の変化などで、心身のバランスを崩してしまうことはある。ちょっとした戸惑いや悩みを気軽に相談できる安心感こそ、メンタルヘルスにつながるに違いない。
 
 その意味で、学校や職場における先輩の役割は重要だろう。「疲れていないか」「体調を崩していないか」と後輩の状態に気を配るとともに、相手への言動や振る舞いなどにも配慮したい。
 
 “フレッシュな新人の息吹”は、周囲の皆の心をも新しくしてくれるものだ。新入生、新社会人の皆さんは、一歩ずつ自分の歩幅で進んでほしい。先輩たちはその挑戦を温かく応援しつつ、自らも初心に返り、共にすがすがしい日々を送ろう。