誓願 393~394ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年5月15日

 阪神・淡路大震災の被災地では、各会館が一時的な緊急避難所となり、また、生活物資供給のための救援センターとなった。
 高速道路は倒壊し、建物の崩壊などから一般道の寸断も多く、どこも、どの道も、大渋滞していた。直ちにバイク隊が編成され、瓦礫の残る道を走り、救援物資が被災各地に届けられていった。
 山本伸一は、愛する家族や、住み慣れた家、職場を失った人たちのことを思うと、身を切られるように辛かった。自ら、すぐに被災地に飛び、皆を励ましたかったが、「東西センター」での講演の日が迫っていた。彼は、被災地へ向かう、会長の秋月英介や婦人部長、青年部長らに言った。
 「私に代わって、全生命を注ぐ思いで、皆さんを励ましてほしい。信心をしていたご家族を亡くされた人もいるでしょう。そうした方々には、こう伝えてください。
 ──すべては壊れても、生命に積んだ福徳は、永遠に壊されることはありません。一遍でも題目を唱えたならば、成仏できるのが大聖人の仏法です。亡くなられた同志は、今世で宿命を転換し、来世も御本尊のもとに生まれ、幸せになれることは間違いありません。
 また、『変毒為薬』とあるように、信心によって、毒を変じて薬にすることができる。大聖人は『大悪をこれば大善きたる』(御書一三〇〇ページ)と仰せです。
 今は、どんなに苦しくとも、必ず幸せになれることを確信してください。いや、必ずなってください。強い心で、強い生命で、見事に再起されるよう祈り待っています」
 秋月らは、二十四日には、被災地を訪れ、激励に回っている。
 伸一は、その翌日の夜、日本を発ち、ハワイのホノルルへ向かった。
 二十六日に、ハワイ大学マノア校を訪問したあと、同大学に隣接する「東西センター」を訪れた。ここで、国連創設五十周年を記念し、「平和と人間のための安全保障」と題して講演したのである。