「国連女性の地位委員会」に参加して2024年5月12日

CSW68に参加したSGI国連事務所のクック氏㊨、ガゾッティ氏㊥と伊藤氏(3月、ニューヨークの国連本部で)

CSW68に参加したSGI国連事務所のクック氏㊨、ガゾッティ氏㊥と伊藤氏(3月、ニューヨークの国連本部で)

 第68回「国連女性の地位委員会」(CSW68)が3月にニューヨークの国連本部で行われた。SGI人権担当コーディネーターとして参加した伊藤優貴氏の手記を紹介する。

SGI人権担当コーディネーター 伊藤優貴氏

 今回のCSW68で焦点が当てられたのは、世界の女性の10%以上が極度の貧困のサイクルに陥っていることへの対策と、ジェンダー平等への投資という点です。家事や育児等の無償ケア労働、ジェンダー・ステレオタイプの再考、ジェンダーに基づく暴力の根絶などを巡って議論が交わされました。
 
 鮮明に心に残る場面があります。開会式で3人の男性が登壇した時のこと。一人が「男性が連続でここに立つこと自体、男女間の不均衡に拍車をかけています」と発言したのです。無意識に既存の不平等を受け入れていたことを痛感するとともに、こうした発言機会の不平等は“特殊なエピソード”ではなく、世界各地、特に日本において繰り返されてきた現実ではないかとの思いを強くしました。
 
 男性の読者の方に想像してみてほしいことがあります。ほぼ全ての参加者が女性である会議に、あなたが一人だけで参加し、意見を求められる光景を。皆の視線が注がれる中、あなたは発言しています――これと逆の状況が、長らく日本社会のありふれた風景と指摘されています。
 
 例えば「女性ばかりの国会」「男性だけがお茶出しをする会社」など、“女性と男性を入れ替えてみたら”と思いを巡らせてみるとどうでしょう。こうしたジェンダー視点の思考実験を通し、無意識の偏見がいかに私たちのありようを規定し、アンバランスな社会を形成しているかに気付くことができます。
 
 CSW68で異性の中に飛び込むことは緊張の連続でした。これまでもジェンダー平等について学び理解を深めてきたつもりでしたが、孤独と緊張を多くの女性が余儀なくされていることを、初めて“自分事”として肌で感じました。
 
 もちろん、ジェンダーの問題は個々人が感じる孤独感と緊張感という個別具体的なミクロの問題だけでなく、制度や組織といった社会構造に関わるマクロの問題でもあります。
 
 今回改めて実感したことがあります。それは、女性が経済的、社会的、政治的な意思決定の場において平等な権利を持たない限り、持続可能な開発は不可能だということです。
 
 ジェンダー平等な社会は、女性だけでなく男性にとっても生きやすい世の中に違いありません。ジェンダー平等は、まさに全人類の課題であり、誰一人取り残さない社会を築く挑戦といえましょう。
 

全ての人の人権が守られる世界を

 今回、SGIは二つの行事を共同で開催しました。「貧困の克服――教育による若い女性のリーダーシップ」と題する行事では、貧困を克服し若い女性のジェンダー平等を推進するために、教育、特に人権教育がどのように活用されているかを共有しました。
 
 「ジェンダー平等のための平和の資金調達――1325アジェンダの資金調達の促進」と題する行事では、国連安全保障理事会の「女性と平和および安全保障に関する1325アジェンダ」に効果的な資金を提供するために、どのような新たなステップを踏む必要があるか、また、軍拡のための資源を女性のエンパワーメントに振り替えるにはどのような改革が必要かなどについて論及しました。
 
 また、SGIとして「女性の貧困撲滅、ジェンダー平等達成のための経済モデルの転換、資金援助の強化の実現を呼びかける宗教間声明」と「気候変動と女性の貧困における関係性を述べ、ジェンダー平等支援のための資金調達の強化に言及した共同声明」に賛同し、議論に貢献しました。
 
 会期中、アフリカのザンビアで男女共同参画に取り組む若者と出会い、ジェンダー平等の取り組みにおける男性の関与の重要性を語り合いました。LGBTIQ+(性的少数者)の人々と意見を交わす機会もありました。依然として多くの地域で日常的な差別が存在しています。多様な性の垣根を超え、全ての人が自他共の尊厳に目覚め、ありのままの自分でいることに安心を感じられる環境をつくることが、真の平等であると考えます。
 
 2022年に発表した「SGIの日」記念提言で、池田大作先生は述べられています。
 
 「私たち人間には、いかなる逆境の最中にあっても、プラスの価値を共に生み出し、時代変革の波を起こす力が具わっています。コロナ危機を乗り越え、人間の尊厳を支える経済と社会を築く源泉となるものこそ、『ジェンダー平等』と『女性のエンパワーメント』ではないでしょうか」
 
 周りを見渡した時、「誰かを置き去りにしていないか」と常に自分に問いかけること、「男性だけの意見で、あるいは性的少数者への配慮なしに物事を進めていないか」「職場や学校や組織のポリシーは全ての人に平等なものになっているか」など、一歩立ち止まって考えてみることを忘れないことが重要だと思います。今回の経験を新たな出発として、全ての人の人権が守られる世界の構築に寄与できるよう、さらに尽力してまいります。
 


 SGIが賛同した声明の内容(英語)は下記で閲覧できます。
 
 ●女性の貧困撲滅、ジェンダー平等達成のための経済モデルの転換、資金援助の強化の実現を呼びかける宗教間声明
 https://undocs.org/E/CN.6/2024/NGO/44
 
 ●気候変動と女性の貧困における関係性を述べ、ジェンダー平等支援のための資金調達の強化に言及した共同声明
 https://undocs.org/E/CN.6/2024/NGO/125

 SGIが共同議長を務めるニューヨーク「女性の地位」NGO委員会の50年史(英語)はこちらで閲覧できます。
 https://ngocsw.org/about-us/ourstory/
 
 また、CSW68に関するSGI国連事務所のSNSアカウントの投稿(英語)を下記で閲覧できます。
 ●X
 https://x.com/sgi_ouna/status/1770057636689666228?s=46
 
 ●インスタグラム
 https://www.instagram.com/reel/C4sfCGOsF7g/?igsh=NTlxNmtieTJmdnZx