誓願 379~381ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年5月6日

 ──一九七四年(昭和四十九年)、山本伸一は、ブラジルを訪問する予定であった。しかし、学会に対する誤解などがもとでビザが発給されず、結局、ブラジル行きはなくなった。
 この時、パラグアイ音楽隊は、伸一の前で演奏し、パラグアイの同志の心意気を示したいと、ブラジルをめざした。ところが、彼らも入国は許可されなかった。それでも、観光地であるブラジル国境のイグアスの滝までは、バスで入ることができた。
 「よし、ここで演奏しよう! 自分たちの心は、先生に届くはずだ」
 彼らは、大瀑布の轟音と競うかのように、力いっぱい演奏した。
 その十年後の八四年(同五十九年)、伸一は、十八年ぶりにブラジルを訪れた。喜びに胸を躍らせて駆けつけたパラグアイのメンバーが、伸一の前で熱唱したのが、この「パラグアイ本部歌」であった。

 〽梢をわたる 風の音
  コロラドの森 越えゆけば
  流れる汗か 同志の顔
  コロニア(入植地)の道 果てしなし
           (作詞・山本邦男)

 歌を聴き終わった伸一は言った。
 「いい歌だ! 決意が伝わってきます。今度は、パラグアイにも行くからね」
 以来九年、遂に、念願が叶い、この日を迎えたのだ。
 「友好の夕べ」で伸一は、音楽隊、鼓笛隊の演奏に大きな拍手で応えながら言った。
 「ありがとう! 生命が共鳴しました。二十一世紀には、青年の皆さんが、草創の同志の後を継いで、使命の空へ、大きく羽ばたいてください。また、皆が私を超えていってください。その時、広宣流布の流れは、全世界を潤す、滔々たる大河となるでしょう」
 二十二日、伸一は大統領府にロドリゲス大統領を表敬訪問した。その折、長編詩「民衆の大河の流れ」を贈っている。