〈Seikyo Gift〉 あなたの家は大丈夫? 住居の揺れ対策〈防災――身を守る行動〉2024年4月27日

 
 東日本大震災からあすで13年。この間だけでも、震度7を観測した大地震は熊本、北海道胆振東部、能登半島で発生し、甚大な被害に見舞われました。地震大国・日本では、命を守るための対策が欠かせません。「防災――身を守る行動」の第6回は、防災の専門家でソナエルワークス代表の高荷智也さんに住宅の揺れ対策について聞きました。(3月10日付)
 

 地震は突発的な自然災害です。
 いつ、どこで揺れに遭遇するかは分かりません。想像力を湧かせ、いつ、どこで地震に遭ってもいいよう、細やかな備えが求められます。今回は自宅で遭遇した時に、被害を最小限に抑える対策についてお伝えします。
 まずは、建物の倒壊を防ぐこと。建物の耐震性は、設計の偽装や手抜き工事がない限り、国の法律である建築基準法に定められた「耐震基準」によって見分けることができます(上の表)。
 この法律は、大地震が起こるたびに見直しが行われ、建物の建築がスタートした日(築年月日でなく、建築確認申請が受理された「建築確認日」)によって、耐震性が決まっています。
 まず、1981年6月1日より前に建築がスタートした古い建物(木造とそれ以外)は「旧耐震基準」に該当します。震度6弱以上の揺れで倒壊の恐れがあります。
 そして1981年6月1日から2000年5月までに建築がスタートした建物(木造とそれ以外)は「新耐震基準」に該当します。震度6強以上の揺れでも耐えられるといわれています。
 それ以降の住宅(木造)は「新耐震2000年基準」となり、さらに耐震性が向上しています。
 さらに2000年4月には「住宅性能表示制度」がスタートし、耐震等級3と評価された建物(木造)は、2000年基準の1・5倍の耐震性能が備わっています。住宅の購入を検討している方は、地震対策には耐震等級3の建物をおすすめします。
 また、建物が立つ地盤の良しあしによって揺れの大きさが変わります。ただ、地盤がいいからといって建物の対策をやらなくていいということではありません。
 当然、地盤があまりよくない地域は十分な対策が必要です。地盤を調べる場合は「地盤サポートマップ」というウェブサイトがおすすめです。4段階の評価で地盤の良しあし(地耐力)を確認できます。自宅の購入や引っ越しを考えている場合にも参考になります。
 

耐震基準とは1回の揺れに対するもの

 この「耐震基準」は、あくまでも1回のみの地震に耐えられるかどうかの基準です。注意が必要です。
 新耐震基準は震度6強以上の地震でも倒壊しないとされていますが、震度6強以上の地震に、複数回にわたって襲われた場合には、当然、倒壊のリスクが生じてしまいます。
 わずか3日間に、震度7が2回、震度6強が2回、そして震度6弱が3回という強い揺れが連続した熊本地震の例を見てみましょう。益城町の中心部で行われた建物(木造)の全数調査の結果が上の表の通りです。
 旧耐震の建物で無傷だったのは、たった5%でした。新耐震基準の家でも2割が「大破」「倒壊」し、無傷だったのは、2割だけでした。大きな揺れが連続で起きると、新耐震基準でも安心ができません。
 大地震の直後には必ず強い地震が起こります。
 だからこそ、地震の建物対策は、まず1回目の揺れで自宅の倒壊を防ぎ、命を守ること。
 そして、1回目の大地震の直後に、それ以降の強い揺れに備えて自宅の損壊状況を自ら確認し、自宅にとどまるか、安全な場所に避難するか判断することです。
 それぞれの具体的な対策を紹介します。
 

●1回目の大地震 まずは倒壊防ぐ●

 1回目の大地震で自宅の倒壊を防ぐポイントを説明します。
 旧耐震基準の建物は、「耐震診断」を受けて、耐震に問題があるとの結果が出たら、地震から命を守るためには、耐震リフォーム(補強)や、引っ越しを検討してください。
 新耐震基準の建物でも、一つの目安としては、築30年以上の住居は、旧耐震の建物と同様に耐震診断を行ったほうが安心といえます。
 その上で、耐震リフォームや補強をしたとしても、耐震基準と同じで、1回の大地震から建物の倒壊を防ぐものとお考えください。そして、耐震診断・補強の話が出ると、必ずといっていいほどネックになるのが、多額の費用がかかってしまうことでしょう。
 しかし、多くの自治体では、手厚い助成を実施しています。ぜひ、お住まいの自治体に確認をしてください。
 特に旧耐震の建物では、無料で耐震診断を行える地域が数多くあります。耐震補強にも、助成があります。また、家全体をリフォームすると高額になりますが、居間や寝室など1部屋だけのリフォームの場合は、費用を抑えることができます。
 分譲や賃貸のマンションが住まいの場合、耐震診断を実施するには管理組合の合意が必要だったり、借家の持ち主の判断によったりします。
 耐震診断やリフォームを行うのが難しい時は、耐震アイテムの導入を検討してみてください。
 

リフォームまでの流れ

 (1)自治体や工務店に耐震診断を申し込む
 (2)耐震性に問題なければ終了
 (3)問題がある時は、耐震リフォーム(補強)
 (4)自宅を建てた工務店などに耐震リフォームを依頼
 (5)補強案を検討。見積もりを確認して契約
 (6)施工して完了
 

耐震アイテム

 さまざまな理由で耐震診断や耐震リフォームが行えない場合には、耐震アイテムの導入をおすすめします。
 一つ目のアイテムが「耐震ベッド」です。自宅にいる時間の中で、寝ている時間が多くを占める方もいるでしょう。大地震で家が倒壊しても、ここにいれば、命を守れる可能性が高まります。
 

 二つ目が「耐震シェルター」。
 耐震ベッドよりも安く購入できます。それぞれ、インターネット通販などで購入が可能です。
 さまざまなタイプがありますので、インターネットで検索してみてください。
 

 
 
●2回目以降の大地震に備える●

 1回目の揺れが収まって、周囲の安全が確保できたら、2回目以降の大地震に備えましょう。
 具体的には、自宅にとどまるべきか、自宅以外の安全な場所に避難するべきかの判断をします。
 自宅の中から、また外から、自分の目で建物の損壊状況を確認してください。チェックポイントは下記の通りです。ここで、建物に大きな損壊がなければ、在宅避難を選択しましょう。
 ただし、事前の備えとして、家具固定など室内の安全対策は必須です。建物が安全でも、揺れによって室内がぐちゃぐちゃになってしまうと生活ができなくなります。建物の対策とともに、室内の安全対策にも心がけてください。
 また、大地震の直後、津波や土砂災害、火災など二次災害の危険が迫っている場合があります。
 そうした危険性がある時は当然、建物の確認は行いません。
 すぐに避難してください。
 
 

自宅にとどまるべきか避難するべきか
――自分でできる確認方法

 揺れが収まり、周辺の安全を確認したら、建物の内外を確認します。損壊状況が下記の一つでも当てはまる場合は自宅以外の安全な場所に避難してください。

 □建物が傾いている
 
 □窓やドアの開閉がスムーズにいかないなど、建物がゆがんでいる
 
 □部屋の壁や外壁、建物の基礎に深かったり、長かったりするひび割れがある。もしくは破損が生じている 
 
 □建物周辺の地盤で液状化が発生している
 

 
 本連載で紹介した家具固定の方法↓↓↓
https://www.seikyoonline.com/article/DC022FB89A81D8F4A4AD2EAF39E2BA05
 
 本連載で紹介した安全な室内のレイアウト↓↓↓
https://www.seikyoonline.com/article/08F062B60FAB5B0A6DE544E0476C2464
 

●玄関に装備品●

 地震はいつ襲ってくるか分かりません。
 1回目の大地震の直後に、すぐに建物の確認ができるよう、装備品を準備しておくことも大切です。少なくとも、ライトと雨具、ヘルメットは玄関など、すぐ取り出せる場所に置いておきましょう。
 また、すぐ避難できるよう、持ち出し品や防災リュックサックなども、すぐに持ち出せる場所に置いてください。