誓願 366~368ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年4月26日

 山本伸一は、声を弾ませて語っていった。
 「アルゼンチンと日本は、地球の反対側に位置し、距離的には最も離れています。そのアルゼンチンの皆様と、日蓮大聖人の御聖誕の日をお祝いすることができた。大聖人は、どれほどお喜びであろうか。
 アルゼンチンのことわざに『太陽は皆のために昇る』とあります。大聖人の『太陽の仏法』は『平等の仏法』である。大聖人は『皆のために』──末法万年のすべての民衆のために、大法を説き残された。信仰しているか、信仰していないかによって、人間を偏狭に差別するものでは決してありません。どうか皆様は、心広々と、太陽のように明るく、アルゼンチンの全国土、全民衆に希望の光彩を送っていただきたい」
 彼は、「臨終只今にあり」(御書一三三七ページ)との思いで励まし、同国の大詩人アルマフェルテの言葉「時には、『偉大なる運命』が眠っている場合がある。それを呼び覚ますのは『苦悩』である」を紹介した。
 「仏法で『煩悩即菩提』と説かれているように、問題や悩みを抱えていない人など、おりません。また、そんな一家もなければ、そんな地域もありません。
 人生は、悩みとの戦いです。大事なことは、自分にのしかかる、さまざまな苦悩や問題を、いかに解決していくかです。『悩み』を越えた向こう側にある『勝利』に向かって、知恵を絞り、努力を重ねることです。
 もし、こんな悩みがなければ──と現実を離れ、夢を見ているだけの生き方は、敗北です。どうすれば、今の課題を乗り越え、価値と勝利に変えていけるか──常に、その前向きな努力をなす人が『勝つ人』なんです。
 自分の一念が、そのまま人生となる──この真理を、見事なる勝利の劇で証明する『名優』であっていただきたい。また、周囲にも『自信』をもたせる『励ましの人』であっていただきたい」
 伸一は、アルゼンチンの同志が一人も漏れなく「不屈の勝利王」であってほしかった。