〈創価大学駅伝部2024―2025 vol.1〉 今シーズンの展望2024年4月25日

  • 世界を目指す「強い」チームに

10:15

 さあ、新たなステージへ! 今シーズン、「大学三大駅伝」に3年連続で挑む創価大学駅伝部は、新体制の始動から間もなく4カ月を迎える。取材した新チームの様子を、今月1日付で総監督に就任した川嶋伸次氏のインタビューとともに紹介する。

3年連続で「大学三大駅伝」に出場する創価大学駅伝部。吉田凌主将(左端)や小池選手(先頭)らが真剣に練習に取り組む(東京・八王子市の創大池田記念グラウンドで)

3年連続で「大学三大駅伝」に出場する創価大学駅伝部。吉田凌主将(左端)や小池選手(先頭)らが真剣に練習に取り組む(東京・八王子市の創大池田記念グラウンドで)

 創価大学を訪ねたのは4月初旬。選手たちが練習する創大池田記念グラウンドの周辺には、“新出発の春”を告げる桜が開花していた。
 
 チームは榎木和貴監督の就任以降、5年連続で箱根駅伝に出場。出雲駅伝、全日本大学駅伝の出場も果たし、「大学三大駅伝」の常連校となった。
 
 昨季は5000メートル13分台を14人、1万メートル28分台を13人輩出するなど、過去最高の選手層で強豪校にも劣らない戦力を整えた。だが、総合3位以上を目指して臨んだ今年の箱根駅伝は8位に終わり、上位争いに絡むことができなかった。
 
 6年目を迎えた榎木監督は、今後の展望を次のように語る。
 
 「これからは常に優勝争いをできるチームにならなければなりません。そのために今季は、5000メートル13分台を20人以上、1万メートル28分台を16人以上出したいと思っています。その中で、13分30秒切りや27分台を記録する『Sクラス』の選手も育てていきたい。一人一人が世界を見据え、日本代表を目指すなど、さらに上のステージにチャレンジすることが必要だと考えています」

榎木監督が選手たちに練習内容のポイントを伝える

榎木監督が選手たちに練習内容のポイントを伝える

 監督の高い志に呼応するように、今季の目標を「出雲駅伝と全日本大学駅伝で3位以上、箱根駅伝で総合優勝」と定めた選手たち。スローガンには「真価の創花~Next Stage~」と掲げた。
 
 「真価」には、本来の「真の価値や能力」の意味に加え、目標達成に向けて全員が「進化」するという思いがある。
 
 「真」と「花」の字には、自分たちの意思を真っすぐ貫き、どんな状況でも誰が相手でも実力を発揮し、創価大学らしい走りで“箱根の総合優勝”という大輪を咲かせるとの決意を込めた。
 
 副題では、チームとして次なるステージに挑むとの強固な意思を示した。
 
 ユニホームも新しくなった。「情熱」と「冷静」を意味する「赤」と「青」のストライプなどの特徴は残しつつ、「強さ」をイメージした「黒」を基調とするデザインに刷新。サブユニホームは、青と白のさわやかなスタイルになった。
 
 新ユニホームで新たな歴史をと誓う選手・マネジャー・スタッフたち。主将の吉田凌選手(4年)は意気込む。
 
 「皆が世界を目指す高い意識で練習に励んでいますが、真剣さの中にも明るさがあります。今まで以上にチームは良い状態ですので、4年生が模範を示しながら、箱根の総合優勝に向けて勢いよく進んでいきます」

マネジャーたちが給水やタイム計測をサポート

マネジャーたちが給水やタイム計測をサポート

 選手たちはここまでのレースでも着実に結果を残している。
 
 1月の「大阪ハーフマラソン」では、野沢悠真選手(3年)が創大歴代最高記録となる1時間1分46秒をマーク。吉田凌選手は2月の「香川丸亀国際ハーフマラソン」で自己ベストを1分以上更新し、副主将の小暮栄輝選手(4年)は3月の「日本学生ハーフマラソン選手権大会」で2年連続の入賞を果たした。
 
 このほか、黒木陽向(3年)、小池莉希(2年)、スティーブン・ムチーニ(同)の各選手をはじめ、多くのメンバーがトラックの競技会で自己新を記録。今月21日の「東海大学長距離競技会」では、吉田響選手(4年)が1万メートルで創大日本人記録(28分11秒8)に迫る28分12秒82をマークするなど、チームとして順調な仕上がりを見せている。

新ユニホームのお披露目となった3月30日の「TOKOROZAWAゲームズ」で力走。3000メートルに出場した吉田響(左)、黒木(中)、小暮(右)ら15選手が自己記録を更新した(埼玉・所沢市の早稲田大学織田幹雄記念陸上競技場で)

新ユニホームのお披露目となった3月30日の「TOKOROZAWAゲームズ」で力走。3000メートルに出場した吉田響(左)、黒木(中)、小暮(右)ら15選手が自己記録を更新した(埼玉・所沢市の早稲田大学織田幹雄記念陸上競技場で)

 新入生も頼もしい。昨年末の全国高校駅伝を区間上位で走った4人を含む、過去最強のルーキーたちが入部した。
 
 さらに今月から、シドニー五輪男子マラソン日本代表で、旭化成陸上部のコーチを務めていた川嶋伸次氏が総監督として加入。東洋大学監督時代の教え子である久保田満ヘッドコーチや、築舘陽介コーチと共に、榎木監督を中心とする手厚い指導体制が出来上がった。

久保田ヘッドコーチ㊧が選手にアドバイスを送る

久保田ヘッドコーチ㊧が選手にアドバイスを送る

 「実業団時代の先輩でもある川嶋さんをチームに迎えることができ、とても心強いです。一流のノウハウをチームに取り入れ、より高いレベルで練習することができます。今後は昨シーズンから取り組んできた『A』『B』『C』のグループ分けに加え、『S』グループを作れるようにし、選抜で海外合宿も行っていく予定です」(榎木監督)
 
 5月9日からは春のトラックシーズンの決勝点となる関東インカレが、東京・国立競技場で開催される(同12日まで)。「真価」を示し、「進化」を見せる戦いが本格的に始まる。

選手を献身的に支える築舘コーチ㊧

選手を献身的に支える築舘コーチ㊧

●インタビュー 川嶋伸次総監督

川嶋総監督㊨と榎木監督

川嶋総監督㊨と榎木監督

 ――旭化成の後輩である榎木監督とタッグを組むことになりました。
 
 これまでも練習の受け入れなどで、創価大学の選手をサポートする機会がありました。榎木君を監督に推薦したのは私です。彼はとても面倒見がよく、細部にも気を配れます。現役時代に苦労した経験もあり、大学の指導者に向いていると思っていました。ですから、就任2年目で箱根準優勝という結果にも、そこまで驚きませんでした。
 創大はこの5年で選手たちの練習姿勢や自主性が向上し、“戦う集団”に成長したと思います。その中で今回、総監督の打診があり、チームが次のステージに進むために何か自分にできることがあればと決断しました。
 
  
 
 ――大学駅伝で勝ち抜くには、何が必要でしょうか。
 
 やはり安定した力だと思います。東洋大学の監督時代、駒澤大学の大八木監督(当時)から言われたのは「常に3位に入るチームを作っておくんだ」ということでした。そうすれば優勝の可能性が出てくると。そのためには瞬間的なものではなく、年間を通して練習ができる、結果を出せる選手の育成が不可欠です。
 私はスカウト活動が中心になりますが、榎木監督の方針に合わせて、将来的に世界を目指す選手のサポートなどもしていきます。その上で特に大切にしたいのは「対話」です。選手自身が課題を見つけて、自分の強みや弱みと向き合いながら成長できるよう、適切な言葉でタイミングよく、モチベーションの上がる声かけに努めていきます。
 
  
 
 ――今後の抱負を。
 
 これから伸びていく選手たちの姿を見られることは、とても楽しみでワクワクしています。前総監督の瀬上雄然さんをはじめ、多くの方々の尽力に感謝しながら、チーム一丸で頂上を目指していきます。
 
 
 【プロフィル】かわしま・しんじ 1966年、東京都生まれ。シドニー五輪男子マラソン日本代表。引退後、東洋大学の監督に就き、箱根強豪校に押し上げた。旭化成陸上部コーチを経て、創価大学駅伝部総監督に就任。