〈社説〉 2024・4・24 「こどもの読書週間」に思う2024年4月24日

新たな視点が想像力を豊かに

 「黒いだけの文字が、緑の樹々になり、赤や黄の花壇になり、純白の雪の結晶になり、青い海にもなる。(中略)それが本です。『想像力』の力です。『活字を読む』ことによって、『想像力』が、どんどん鍛えられていくのです」(『希望対話』)。これは、池田大作先生が未来部の友に、読書の大切さ、楽しさについて呼びかけたものだ。
 
 ウェブサイトやSNS等には日夜、膨大な情報がアップロードされている。スマートフォンで開いた動画アプリ等で、次々に流れてくる動画を見続けてしまい、気付けば、あっという間に時間が……。そんなことはないだろうか。
 
 生成AIの活用も本格化し、情報化社会は、より複雑さを増すだろう。押し寄せる“情報の洪水”の中で、真偽を見極め、正しい情報を受け取るためには、想像力や思考力が不可欠だ。そして、それらを鍛える読書は、ますます重要な価値を持つ。
 
 では、どんな姿勢で読書に臨めば、効果的に鍛えられるのか。
 
 昨年8月2日付本紙「わたしの読書観」に登場した、言語学者・金田一秀穂氏のアドバイスは具体的だ。氏は、物語などで読書感想文を書く場合、設定を変え、別の話を創ってみては、と語る。
 
 例えば“桃太郎に出てくるイヌ・サル・キジ。2匹だけ連れていくなら、どれか? 反対に、1匹増やすなら、どんな動物か?”と考えるのも面白い。感想文を書くまで至らずとも、読書の効能をさらに高める方途だろう。「ほかの登場人物が主人公だったら」「主人公の環境が違ったら」――ストーリーに沿って、主人公に思いを重ねるだけでなく、異なる条件や立場を仮定する。そうして読み進める中で得られる新たな気付きや視野、そして、そこから生まれる発想は映像化されたコンテンツ以上の広がりを持つに違いない。
 
 池田先生は「想像力こそが、人間を進歩させてきた。想像力は、創造力です」(前掲書)と語っている。だからこそ、次代の担い手である子どもたちには、良書に親しみ、無限の想像力を豊かに養ってもらいたい。
 
 23日から「こどもの読書週間」が始まっている(5月12日まで)。私たち大人もまた、子どもたちと共に読書を楽しみ、想像の翼を羽ばたかせながら、共に成長のページをめくっていきたい。