〈ワールドトゥデイ 世界の今〉 マレーシア 不撓不屈のジョホール2024年4月24日

マレー半島最南のジョホール州の州都ジョホールバルから望む景色。奥に見える海峡の対岸がシンガポール。ジョホールはその“玄関口”として交通網や商業地の開発が進んでいる

マレー半島最南のジョホール州の州都ジョホールバルから望む景色。奥に見える海峡の対岸がシンガポール。ジョホールはその“玄関口”として交通網や商業地の開発が進んでいる

 「青年学会」の構築へ、マレーシア創価学会(SGM)が躍進している。2021年から23年までの3年間で8300人が入会し、そのうち約6割が青年世代だった。SGMの陣列は7万人を超えている。模範の広布拡大をけん引する一つが、“マレーシアの関西”の誇りで進むジョホール州の友だ。州の同志のおよそ半数が10~40代のメンバーで、若々しい息吹に満ちて前進する。本年2月、現地で取材した。

マレーシアの「関西」の誇りで前進

 マレー半島最南のジョホール州。州都ジョホールバルは、隣国シンガポールに接し、陸路で国境を越えられる。約30万人もの人々が、日々、通勤や通学などで往来する。“玄関口”として開発が進み、2026年末には、両国を結ぶ高速鉄道が開通する予定だ。

 この地を使命の舞台とするSGMメンバーの中には、通勤時間を短縮するため、週の数日間、シンガポールに滞在する友もいる。生活スタイルはさまざまだ。

 多忙な毎日を送る中で自らの信心を磨き、団結して広布を進めていけるのはなぜか――。メンバーに聞くと、共通して返ってきたのが「火曜日の『活動日』を軸にしている」との答えだった。ジョホール州では草創期から、全会員を対象にした支部の集いなどを火曜日に行ってきた。内容は、座談会や小説『新・人間革命』、教学の学習会等、週ごとに州の共通テーマを決めて実施している。

 仕事が忙しい人、未入会家族と共に暮らす友など、思うように時間が取れないメンバーにとっても、週1回の「活動日」が良き伝統として定着している。この日を信心錬磨の節として、生活に仕事にと着実に歩みを進める。

 さらに、ジョホール州の友に根付いているのが“五つの挑戦”だ。①対話②折伏③信心の体験を築く④1日1時間の唱題⑤1日20分の研さん――の五つで、コロナ禍にあっても「信行学の実践」を続けていこうとの思いから、2021年4月にスタートした。

 婦人部の潘淑娟さんは、他宗教を信仰する夫と暮らし、仕事、育児に奮闘する日々の中で「“五つの挑戦”という明確な前進の方向を示してくれてありがたい」と話す。潘さんは昨年、友人への弘教を結実。毎朝マレーシア全土で行うオンラインでの『新・人間革命』朗読会などが、仏法対話に挑む力になっているとも語った。

各部一体で力強く青年を拡大
勝つまでやり抜く常勝魂燃やし

SGIアジア文化教育センターが立つジョホール州で広布をけん引するリーダー。左から周州長、鄭男子部長、楊女子部長、林婦人部長

SGIアジア文化教育センターが立つジョホール州で広布をけん引するリーダー。左から周州長、鄭男子部長、楊女子部長、林婦人部長

 確固たるリズムで広布を押し進めるジョホールの友。メンバーの最大の原動力は、13年に池田先生から贈られた、“マレーシアの関西に”との指針である。

 州長の周健龍さんと州婦人部長の林枚霓さんは、13年当時を振り返り、「先生の万感の呼びかけを受け、不撓不屈の精神で全ての障魔をはねのけ、ジョホール広布の常勝の歴史を築いていこうと誓いました」と力を込めた。

 2月25日に開かれた、州南部のインダープラ支部の座談会で活動報告した男子部の何城毅さんは、事業の成功と弘教のエピソードを語り、「常勝とは『失敗しないこと』ではありません。目標を必ず達成するとの一念が重要です。勝つまでやり抜くことこそ“常勝”です」と述べて、発表を締めくくった。

 “マレーシアの関西”との誇りと気概が、壮年・婦人部にも、後継の若人にも赤々と燃え上がっている。

 鄭偉強州男子部長と楊筠照同女子部長のリーダーシップのもと、朗らかにスクラムを広げるジョホールの青年部。昨年には、“青年が集いやすい会合”を主眼に、友人参加の集いを各地で行った。また、SDGsや、世代特有の悩みを共有する“対話の集い”など、多様なテーマを掲げ、小グループでの懇談的な会合に力を入れている。

 SGMに青年が多く集まる理由を尋ねると、新入会の友から「楽しく明るい雰囲気、温かな人々の結びつきが魅力」との声が聞かれた。実際、先の支部座談会の約100人の参加者のうち、20人が青年部員だった。

ジョホール州のインダープラ支部の座談会に集った友が記念のカメラに(2月25日、クライ会館で)

ジョホール州のインダープラ支部の座談会に集った友が記念のカメラに(2月25日、クライ会館で)

 州内には、青年部員の信仰体験があふれている。

陳恩澤さん

陳恩澤さん

 一昨年に入会した男子部の陳恩澤さんは、突然襲った心身の不調に悩んでいた。病院をいくつも回ったが、原因は分からず、やがて職を失った。漠然とした不安の中で、かつて学会の友人から聞いた題目のことを思い出し、自宅の壁に向かって祈った。

 原因不明の病と失業でふさぎ込んでいた陳さんだったが、題目をあげると心が落ち着き、不思議と前向きになれたという。家族が驚くほどの変化を遂げた陳さんは、入会することを決めた。

 その後、男子部の先輩の勧めで小説『人間革命』『新・人間革命』を読み始め、池田先生の哲理と行動を深く知った。「私の苦しみに寄り添ってくださる先生と、対話する思いで小説を読みました」と当時を振り返る。

 入会から数カ月後、若年性パーキンソン病であることが判明。病気との格闘は今も続くが、陳さんの細胞が治療薬の開発に活用されることになり、「同じ病気の人に貢献できることが功徳」と前を向く。仕事においても、バイクの部品関連の会社を起業することができた。

 「病気になった当初は人生に絶望し、父母も涙に暮れていました。けれど祈ることで心が変化し、病気に打ち勝つ勇気が湧きました」。陳さんは今、病で苦しむ同僚の折伏を続けている。

謝芷璇さん

謝芷璇さん

 女子部の謝芷璇さんの転機は、高等部の研修会に参加した時のこと。会合の様子を見つめる中で、「人生の使命」について考えさせられたという。自分はどう生きるのか――先生の『青春対話』をむさぼるように読み、人々に貢献する生き方を実践したいと、大学進学を決意。厳しい経済状況の中で、奨学金を受け、国立大学に進んだ。

 「大学は、大学に行けなかった人々のためにこそある」との先生の言葉を胸に、猛勉強し首席で卒業。奨学金の全額返済免除を勝ち取った。就職活動の時は、コロナ禍に直面したが、「青年は苦労こそ宝である」との師の言葉を思い返し、望んだ保険関係の職に就くことができた。昨年、池田先生の訃報に接し、仏法と師の偉大さを宣揚することを誓ったという謝さんは、自身の体験を語り抜き、仕事と友人関係で悩む友へ弘教を実らせた。

方亜隆さん

方亜隆さん

 青年の前進を温かく見守る多宝の友も元気だ。

 ジョホール広布の歴史を切り開いた一人、壮年部の方亜隆さんは94歳。1969年に御本尊を受持した妻に続き、70年代後半から信心を始めた。

 当初、宗教はどれも同じと思っていたため、妻の信仰に反対もせず、自ら実践することもなかった。仕事で行き詰まった折、妻に信心を勧められた。また当時のペナンの中心者で、後に初代マレーシア本部長を務める柯廷龍さんに励まされ、心を揺り動かされた。さらに母が死去した際、多くの同志がわが事のように悲しむ姿に心を打たれ、ついに創価家族の一員になった。建築の仕事をしており、マレーシア初の広布の法城であるペナン会館の内装にも携わった。

 79年、仕事の関係でジョホールへ。当初、周囲に学会のメンバーは皆無だったが、祈りを重ねていくと、ある時、同業者で信心に励む同志と出会う。経済苦に悩み抜いたが、一人また一人とスクラムを広げ、皆で励まし合って人生の幾山河を乗り越えてきた。“マレーシアの関西”で戦うことを最高の誉れとして、今も報恩の挑戦をと誓う。

蔡雅麗さん

蔡雅麗さん

 一方、婦人部の蔡雅麗さんは86年の入会。10代後半で原因不明の大病を患い、20代後半の出産時には難産で死線をさまよった。30代後半には、足の指が壊死する病にかかり絶望した。そんな時に信心の話を聞き“どうせ死ぬなら”との気持ちで題目を唱えていくと、不思議にも体調が回復。この信心で病身が良くなったら決して御本尊から離れないと誓って以来、題目を根本に感謝の思いで人生の年輪を刻んできた。ほほ笑みを絶やさず、今は誰よりも元気な姿で州の多宝会の責任者を務めている。

 方さんと蔡さんが、共に師弟の原点としているのが、88年2月の池田先生のマレーシア初訪問である。先生は、同国のマハティール首相(当時)と共に、音楽と舞踊の集いに出席した。首相と先生が親しく語り合う姿を遠目に見た方さんは喜びと誇りに満ち、先生と共に、平和建設の道を歩み抜くことを改めて決意したという。

 蔡さんは、青年を大切にする師匠に子どもを会わせたいと願って会場に行くと、偶然にも先生の席の前へ行くことができた。先生の前で子どもと共にお辞儀をすると、先生はその場で立ち上がり、深々と腰を折って母子に一礼した。賓客と勘違いしたのか、周囲の人たちも皆、立ち上がった。一人の庶民を大切にする師の姿を胸に刻んだ。

 人生勝利の大道を進んできた二人は、ジョホールのみならず、マレーシアの全青年部員に、師が示した“常勝”の心を継いでほしいと願う。

ジョホール州のクライ会館で開かれたインダープラ支部の座談会。未来部員が、かわいらしいダンスを披露した(2月25日)

ジョホール州のクライ会館で開かれたインダープラ支部の座談会。未来部員が、かわいらしいダンスを披露した(2月25日)

 池田先生は「不滅なれ 関西魂」と題した随筆で記した。

 「今や『常勝』は、関西の永遠不滅の伝統となり、『関西魂』は学会精神の模範として、世界に語り継がれている」

 「『勝つ』ことをみずからの道と定めた英雄たちには、いかに状況が厳しかろうが、愚痴も文句もなかった。困難であればあるほど、闘魂を燃やし、逆境をはねのけ、勝利の感動のドラマをつづってきた」と――。

 師弟共戦の「カンサイ・スピリット」は今、ジョホールの友をはじめ、勝利の人生を誓う世界の友の“共通言語”となっている。

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