名字の言 あす熊本地震から8年2024年4月13日

 先日、参加したあるイベントで隣に座った男性に声をかけた。同郷で同世代だったこともあり会話が弾んだが、学生時代の話題になると顔を曇らせた。「学んでいた東海大学の阿蘇キャンパスには、もう学生の姿はなくて……」▼キャンパスの建物は、8年前の熊本地震で損壊した。その後、建物と、地表に現れた断層が、歴史を後世に伝承する遺構として整備され、体験・展示型施設「震災ミュージアムKIOKU(きおく)」が造られた▼今月、同施設を訪ねた。旧・阿蘇キャンパスの体育館に設置されていた時計を見ると、本震発生の「午前1時25分」で止まったまま。時間が経過しても被災した人々のつらい記憶は消えない――そう訴えかけるようだった▼館内には、東日本大震災の被災者からの励ましの声も展示されていた。「生きていてくれてありがとう!! 必ず朝は来ます」「絆は今も強く結ばれています」「悲しみ、苦しみを越えるはずの喜びがありますから。だからファイト!!」▼あす14日で熊本地震から8年。震災の記憶や経験、教訓を未来に伝えながら、励まし合う心を広げていきたい。その地道な行動の積み重ねが、かけがえのない命を守る。被災者の“心の復興”を支える力になる。(剣)