〈話題の映画〉 「システム・クラッシャー」「ありふれた教室」2024年4月11日

  • 教育題材にした話題のドイツ作品
  • 矢崎由紀子

「システム・クラッシャー」 ©2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschränkt), ZDF

「システム・クラッシャー」 ©2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschränkt), ZDF

 今回紹介する映画は、2作とも国際的な映画賞を受賞しているドイツ映画。かたや9歳の少女、かたや新人教師を主人公にしているが、教育現場を題材にしている点が共通している。
 ベルリン国際映画祭で2部門を受賞した「システム・クラッシャー」(4月27日<土>公開、クレプスキュールフィルム配給)の主人公ベニーは、幼少期の心の傷が原因で怒りのコントロールができなくなった9歳の少女。行く先々で問題を起こし、保護施設を転々としている。ベニーの唯一の望みは母親と暮らすことだが、弟妹への悪影響を恐れる母親には引き取る覚悟ができない。社会福祉課の担当者を中心に、行き場のないベニーの処遇を話し合う会議で頭を抱える関係者たち。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャが3週間の隔離療法を提案する。
 水も電気もない山小屋で暮らすうち、ミヒャに心を開いていくベニー。だが、思い通りにならないことがあると、怒りが爆発する状態に戻ってしまう。彼女を救えない自分の無力さをかみ締めるミヒャの苦悩が胸に刺さるドラマは、当事者のベニーを含めて誰も責められない問題との向き合い方を考えさせる。ドイツ映画賞を歴代最年少で受賞したヘレナ・ツェンゲルの熱演にも注目だ。

「ありふれた教室」 ©ifProductions Judith Kaufmann ©if…Productions/ZDF/arte MMXXII

「ありふれた教室」 ©ifProductions Judith Kaufmann ©if…Productions/ZDF/arte MMXXII

 一方、「ありふれた教室」(5月17日<金>公開、アルバトロス・フィルム配給)の舞台は、盗難が多発する中学校。犯人捜しの過程で、受け持ちの生徒に疑いをかけられた教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)は、自ら犯人を特定しようと決意。パソコンのカメラに犯人が写るように罠をかける。結果、容疑者は浮上するのだが、犯行を否定。罠を仕掛けたことで、同僚、保護者、生徒の反発を招いたカーラは、教室でも職員室でも孤立していく。
 学校新聞を編集する生徒たちが、事件の取材を通じてカーラを追い詰めていく展開が不気味だ。彼らの扇情的な報道を生徒たちはうのみにし、校内には偏見と対立がまん延していく。ドラマが進むうち、学校が社会の縮図に見えてくる作劇が秀逸だ。
 昨年のドイツ映画賞では作品賞をはじめ5部門を受賞。ベルリン国際映画祭でも2賞を受け、アカデミー賞国際長編映画賞の候補になった。
 (映画評論家)