〈社説〉 2024・3・30 増え続ける不登校の児童・生徒2024年3月30日

共感を言葉にする大切さ

 「朝、子どもに登校したくないと言われたら、『何で?』と理由を聞かないでください」――2月29日付教育欄のインタビューの際、医師で臨床心理士の田中茂樹氏からアドバイスされた。

 文部科学省によると、小・中学校の不登校の数は29万9048人で過去最多(2022年度)。19年度に不登校だった児童・生徒を対象に行った同省の調査によると、「行きづらいと感じ始めたきっかけ」として、「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」が上位に並ぶ(複数回答)。

 原因を探ることは、対策を練るには重要である。ただ、「きっかけが分からない」と2割強が回答し、当事者でも状況を把握できていないケースは多い。原因が曖昧で、仮に分かっていても対応が難しい例が多いのは、不登校の特徴でもある。明確なのは、苦しんでいる子どもがいるという事実だ。

 精神科医の井上祐紀氏は、子どもが登校した方がいいと知っていながら登校できないのは「『行くべきだ』という気持ちを上回るほどのつらさを抱えているから」(『自分を休ませる方法』KADOKAWA)と指摘する。

 「行きたくない」は、親にとって不登校の始まりでも、子どもにとっては、耐え続けて出した最後のSOSかもしれない。行きたくないと伝えられた時、最も大事なことは「『そうなんだね』『行きたくないんだね』と共感を言葉にすること」と先の田中氏は語る。

 公教育の現場には、多様な学びの機会が提供されている。その上で、復学することだけが選択肢というわけではない。文科省は「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」の中で、学校に通えない子の支援に際し、登校という結果のみを目標としない方針を示している。

 現在は、大人のほとんどが小中学校を卒業している。そのため、周囲は不登校の子に対し、将来を心配するあまり、干渉し過ぎてしまうことがある。しかし、そのまなざしは「行くことができない自分は悪い」と、子どもの自己肯定感の低下を招くことにつながりかねない。

 彼らのペースを尊重し、学びの多様化学校や教育支援センター、フリースクール、通信制高校などでの多様な学び方を応援していきたい。私たちの意識変革が求められている。