〈教育本部〉 池田先生の指針と実践記録(要旨)2024年3月30日

 未来を開く創価の人間教育を! 教育本部の友は使命の舞台で、子どもと共に努力と挑戦の歩みを刻んでいる。ここでは、同本部の代表の友が糧とする池田先生の指針と、実践記録の要旨を紹介する。

◆新潟・小学校 松﨑祐太さん

 自分のことを見捨てず、信じ抜いてくれる先生がいる――そう思えることが、子どもたちにとって、どれほど生きる勇気となり、伸びゆく力となるか、計り知れません。(『わが教育者に贈る』)
 

信じ抜くことは自身の心との戦い

 私はAさんという児童との出会いを通して、教師として大きく成長できました。現在の学校に勤務して6年目の2022年4月、Aさんを含む小学校6年生の担任になりました。
 
 前任者から、Aさんは「不登校の傾向があり、登校しても保健室で過ごすことが多い」と引き継ぎを受けていました。意欲的な面もあるAさんでしたが、次第に欠席が増えていきました。
 
 私は、Aさんとどのように関わっていけばよいのか、とても悩みました。
 
 そして、池田先生の指針を学んでいく中で、「子どものことを信じ抜く」大切さを理解しているつもりでも、どこか「不登校のAさん」というレッテルを貼ってしまっていたことに気付きました。
 
 まずはAさんのありのままを受け入れることから始めようと決め、毎日、Aさんをはじめ、クラスの子どもたちの良さやその日の頑張りを記録することにしました。
 
 そうする中で、本を読んで考えたことを積極的に語るAさんの姿を思い起こしました。
 
 「Aさんは誰よりも学びたがっている」と考えた私は、子どもたちで本を読み深め、意見交換する機会をつくりました。するとAさんは、次第に学校に通えるように変わったのです。
 
 実は、クラスにはもう一人、不登校傾向のあるBさんがいました。ある日、Aさんが、Bさんを心配し、どうしたらよいか私に相談してくれました。
 
 私は、池田先生の指針にある“信じ抜く”ことの大切さを自分の言葉で話しました。するとAさんは、「私もBさんを信じたい」と語ってくれ、学校行事の様子や授業の内容などをBさんと共有してくれるようになりました。そしてBさんは、少しずつ登校できるようになっていったのです。
 
 私は、Aさんと関わる中で、「子どものことを信じ抜く」とは、子どもの無限の可能性を信じ抜けない自分との戦いなのだと深く実感することができました。
 
 これからも、子どもたち一人一人に光を当て、寄り添い、子どもの未来を信じ抜ける教師に成長していきます。

◆福井・中学校 川口美月さん

 “耳を傾ける”ことは、相手に心を開き、受け入れていく姿勢といえますね。それは、他者を敬い尊重することにも通じます。まさに、“耳を傾けて聞く”ことこそ、対話の第一歩といえるでしょう。(対談集『対話の文明』)

地道な対話で気持ちを受け止める

 読書家で、何事も一生懸命に取り組むCさんの様子が変わり始めたのは、ある年の6月ごろでした。体育大会の応援合戦の練習がうまくいかなかったことをきっかけにストレスを抱え、学校に足が向かなくなったのです。欠席した日には欠かさず家庭訪問に行き、担任である私を通して学校とのつながりがもてるよう、直接話す時間を設けました。交換日記もつくり、口にできない思いを文章で伝えられるように工夫しました。
 
 彼女の家での短時間の語らいから始め、校内を一緒に散歩するなど学校で生活する時間を少しずつつくる中で、登校の頻度や時間を増やすことができました。
 
 Cさんの様子について、クラスの子どもたちにも丁寧に説明し、“Cさんが前を向けるように支えてほしい”との思いを伝えると、生徒たちはCさんに寄り添いながら声をかけてくれました。
 
 また、私の専門教科である国語を通して「教室ではこんな学習をしているんだけど、どうすればみんな興味をもってくれるかな」と彼女に相談することもありました。
 
 しかし、彼女と歩む中で、少し回復すると次のステップを期待し、それに応えてくれないと焦りを感じてばかりいました。祈りを重ねる中で、彼女の思いをどれだけ受け止めることができていただろうと自問しました。それ以来、彼女との対話を重視しながら、様子を観察し、小さな成功を少しずつ積み上げられるよう声をかけながら支援を続けました。
 
 その後、徐々に登校できる日が増えていった、ある英語の授業でのことです。Cさんは自分のこれまでの体験について英語でスピーチを行いました。「私が学校に来るのが難しかった時、友達や先生がたくさん『ありがとう』という言葉をかけてくれました。その『ありがとう』に支えられて、私は学校にまた来ることができるようになりました」
 
 英語で堂々と発表する姿を見て、あふれてくる涙をこらえることができませんでした。
 
 Cさんとの日々は、信じ抜く心は必ず結実することを教えてくれました。どんな時も子どもに寄り添い、未来を見つめて歩みます。

◆沖縄・特別支援 松下啓子さん

 違いを、「排除しようとする方向」ではなく、「認め合う方向」へと「心のベクトル(方向性)」を変えていくことが大切です。「みんな『違う』ってすばらしい!」ということを教えていかねばならない。(『「教育の世紀」へ』)

信頼・達成感が生徒の自主性育む

 特別支援学級の知的学級を受け持ってから19年がたちました。現在勤務する中学校には、さまざまな家庭の事情を抱え、通常学級での学校生活になじめない生徒もいます。私は日頃から、気になる生徒がいると「何かできないか」との思いで、学年主任や学級担任などに状況を確認したり、朝のあいさつなどの声かけをしたりして、つながりをつくるようにしています。
 
 ある日、通級指導教室のDさんが、同じクラスの生徒にけがをさせてしまいました。Dさんは、同じことを繰り返さないように怒りを抑えるアンガーマネジメントや、教科学習などを行う「自己改正プログラム」を開始することになりました。また、Dさんと幼なじみで、情緒学級に通うEさんも一緒に各教科の課題に取り組むことになりました。2人に中学1年からのやり残した課題などを提出してもらい、私からのサインや、各教科担当の先生に評価してもらうことで彼らの意識が高まっていきました。
 
 それまで、なかなか朝から登校できていなかったEさんも、Dさんと声をかけ合って朝から登校できるようになり、欠席もなくなりました。
 
 すると、2人の挑戦の姿に触れ、同級生の不登校気味の生徒や、教室で落ち着きのなかった生徒が少しずつ、支援教室に顔を見せ、給食を一緒に食べ、話をして、交流学級の教室に戻るようになりました。
 
 何が生徒を変えたのか――「自己改正プログラム」を通して、生徒と教師の日頃からの信頼関係が構築されたことと、課題を評価することで自尊心・自己肯定感の向上ができたことが分かってきました。2人に「この教室で頑張れるようになったのは、どんなことが良かったのかな?」と聞くと「先生たちは、私たちの話をちゃんと聞いてくれるし、決めつけて話をしないから」と話してくれました。生徒の「良いところ」を見つけ、信じて、励ましていけば、おのずと自分に合った道を見つけて進んでいけることを教えられました。
 
 こうした経験を通して、生徒たちの気持ちを受け止め、共通理解を図ることを大切にしています。