〈話題の映画〉 「オッペンハイマー」「パスト ライブス/再会」2024年3月28日

  • アカデミー賞を賑わした2作品
  • 増沢京子

「オッペンハイマー」 ©Universal Pictures. All Rights Reserved.

「オッペンハイマー」 ©Universal Pictures. All Rights Reserved.

 
 今年のアカデミー賞を賑わした2本の作品が公開される。今の社会情勢を反映し“戦争”をモチーフにした作品の受賞が目立った今年、とりわけ大きな話題を呼び、作品賞・監督賞・主演男優賞など主要7部門を独占した「オッペンハイマー」と、せつない大人のラブストーリーが口コミで拡散し作品賞・脚本賞の2部門にノミネートされた「パストライブス/再会」だ。
 「オッペンハイマー」(3月29日<金>公開、ビターズ・エンド配給)は、斬新な発想と度肝を抜く映像で世界的大ヒット作を生み出し続けるクリストファー・ノーラン監督が、第2次世界大戦下に原子爆弾の開発を指揮した天才科学者の栄光と没落の生涯を実話に基づいて描いた作品だ。
 原爆開発の極秘プロジェクト「マンハッタン計画」のリーダーに38歳の若さで選ばれたオッペンハイマー。ユダヤ系アメリカ人の彼は国のため、正義のために開発に没頭。だが、完成前にナチスは降伏し、原爆は当初の意図に反して広島・長崎に投下される。その地獄絵図を目にしたオッペンハイマーは深く苦悩する。戦後は一転して水爆開発に異議を唱え、核開発競争に警鐘を鳴らしたことで次第に追い詰められ、1950年代の赤狩りのターゲットとなり、人生は激変していく。
 天才科学者の苦悩と葛藤を追体験するような没入感が圧巻で、印象的なラストも忘れがたい。映画を通し、核爆弾の誕生の経緯を知り、その脅威を自分ごとに感じてほしい。そして科学の驚異的な進歩に人間の心の進歩が追いつかなければ、もっと大きな脅威が生まれるかもしれないと問いかける。

「パスト ライブス/再会」 ©Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

「パスト ライブス/再会」 ©Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

 
 「パストライブス/再会」(4月5日<金>公開、ハピネットファントム・スタジオ配給)は、「運命」という意味に使われる韓国の言葉“縁(イニョン)”がキーワードの物語。
 ソウルで暮らす12歳のノラとヘソンは、恋心を抱きながらもノラの海外移住で別れ別れに。24歳のとき、偶然オンラインで再会するがすれ違い。36歳になったヘソンは既に夫のいるノラをニューヨークに訪ねる。心揺れるノラと2人の絆に、太刀打ちできない“何か”を感じるノラの夫。3人の愛の行方は? こんなにすがすがしい後味が残るのはなぜだろう。(映画ライター)