「SGIの日」に寄せて 青年学術者会議の代表の決意

 1・26「SGI(創価学会インタナショナル)の日」を記念し、学術・研究者のグループ「青年学術者会議」(小賀田拓也議長)が決意をつづった文集をまとめた。ここでは代表3人の要旨を紹介する。

●開発職 池本清司さん 開かれた心で相互理解の対話を

 池田先生は、いかに解決が困難な課題であっても、現実に目を背けることなく、平和への行動を貫いてこられました。
 
 かつて先生は提言で、核兵器の脅威が深刻化していた1986年10月、当時のソ連・ゴルバチョフ書記長とレーガン米大統領がレイキャビクで会談し、核兵器廃絶の可能性を真剣に論じ合った歴史に触れられたことがあります。
 
 その中で、この会談に象徴される教訓として、①明確な危機意識に基づくビジョンの共有②他国の反応にかかわらず、自発的にイニシアチブを発揮する確固たる意志③交渉が難航しても、最後まで失われなかった相互の信頼感、の3点を挙げられました。
 
 そして“この三つの教訓を未来への懸け橋として、核時代における「ゴルディウスの結び目」から人類を解き放つ挑戦に、各国の指導者が手を携えて立ち上がるべきだ”と訴えられたのです(「核兵器廃絶へ 民衆の大連帯を」、2009年)。
 〈編集部注=「ゴルディウスの結び目」とは、アレクサンドロス大王が古代フリュギアの都で「ゴルディウス王が結んだ複雑な縄を解いた者は、アジアの支配者となる」との予言を耳にし、その縄を剣で両断したとの故事に由来。転じて「至難の問題」を意味する〉
 
 先生は、歴史家のトインビー博士が核時代の混迷を前に警鐘を鳴らした「ゴルディウスの結び目は剣で一刀両断に断ち切られる代りに辛抱強く指でほどかれなければならない」(『現代が受けている挑戦』吉田健一訳)との言葉も引用され、人類が核兵器問題への応戦に臨む心構えを示されました。
 
 複雑に絡み合った問題を一刀両断すると、体裁上は収まったように見えても、根本解決には至らない。現在の世界の紛争の根本は、こうしたことの繰り返しで生じた憎しみの連鎖によるものと思えてなりません。だからこそ、先生が実践されてきた、他者と理解し合う、胸襟を開いた対話が重要だと実感します。
 
 私たち青年世代は、池田先生の平和行動の軌跡をさらに学び、“新しき世紀を創るものは青年の熱と力”との指針を胸に、弟子として「立正安世界」の心で平和の建設にまい進していきます。

●大学院生 井上巴奈歌さん 人間を結ぶ「音楽の力」を探究

 私は、西洋音楽の研究に励んでいます。
 その中で、世界では今この時も戦禍に苦しむ人々が大勢いるという状況下で“私たちの生活や人生に、音楽はいかなる意味を持つのか”という命題にも、日々、向き合ってきました。
 
 音楽家や芸術家とは違って、音楽研究そのものが人の心に働きかけることは、直接的にはないかもしれません。しかし私は、音楽芸術が持つ“生きんとする意志への励ましの力”を探究することで、池田先生の平和思想を世界に広げ、平和社会の建設に貢献したいと考えています。
 
 音楽の持つ“人の心に作用する力”は、西洋においては古代から認識されており、音楽は多くの人々の心を癒やし、鼓舞してきました。一方で、音楽が戦争のプロパガンダ(政治的宣伝)として悪用されてきたことも事実です。
 
 池田先生は、米ハーバード大学での記念講演「21世紀文明と大乗仏教」(1993年)で、「宗教的なもの」の持つ力用について触れ、宗教にはともすれば独善や狂信に陥りがちな側面があるのに対し、「宗教的なもの」は「善きもの、価値あるものを希求しゆく人間の能動的な生き方を鼓舞し、いわば、あと押しするような力用といえましょう」と述べられています。
 
 また、2022年の「SGIの日」記念提言では、経済学者ガルブレイス博士との対談を振り返り、「いかなる試練も共に乗り越え、“生きる喜び”を分かち合える社会を築くことが、まさに求められている」と訴えられました。
 
 「宗教的なもの」の力用は、音楽のあるべき姿に通じる。“生きる喜び”を分かち合える社会を築くための力が音楽にはある――私は、先生がそう教えられたのだと捉えています。だからこそ先生は民音の創立や音楽家・芸術家との交流を通して、民衆に一流の芸術を紹介し、文化や芸術による人と人の交流を大切にされたのだと確信します。
 
 “人類共通の宝である最高の音楽を、民衆の手に届くものに”との池田先生の信念を胸に、先生の平和思想を音楽研究の分野から広げてまいります。

●大学准教授 白髪丈晴さん 強き責任感で平和行動を継承

 核兵器廃絶や気候危機など人類が直面する課題に対して、私たち青年学術者会議のメンバーは、池田先生が残された哲学をどのように展開していくのか、思索を巡らせています。
 
 特に核兵器について池田先生は一昨年と昨年、世界情勢を踏まえて緊急提言を発表され、「核兵器の先制不使用」の確立を訴えられました。これは、核抑止論に象徴される「相手を信じることができない」相互不信に対し、漸進的かつ着実に歯止めをかけるための提言だと強く実感します。
 
 核兵器廃絶への信念を堅持しつつ、実行可能な一歩前進の目標を提示されたことは、仏法の深い視座から生み出されたものであり、私自身も周囲にその重要性を訴えています。
 
 あらゆる社会問題に対して、仏法の視座から本質的な解決策を提起していくことが、日蓮大聖人の仏法に基づいた平和活動を推進する私たち創価学会の使命であるとの思いを深くします。
 
 3月24日には、核兵器や気候危機の問題の解決を目指す若者・市民団体の協働による平和イベント「未来アクションフェス」が東京で開催され、学会青年部もSGIユースとして参画します。フェスに向けた取り組みの一環として実施した「青年意識調査」の結果は国連に届けられます。本年9月に国連で行われる「未来サミット」に向けて、若者の声が国際的な議論の場に届けられる意義はとても大きいと思います。
 
 国連グローバル・コミュニケーション局アウトリーチ部のマーヘル・ナセル部長は、世界的な課題を踏まえた上で、私たち人類に必要なものは「大志」であり、「希望」であり、また「責任を持った関わり」であると語っていました。
 
 私たち学会の青年世代が仏法の理念に基づいて起こす行動こそ、社会にはびこる「無関心」や「諦めの心」を打ち破る一歩になると確信します。その行動とは特別なことではなく、日頃の真剣な教学研さんをはじめ、目の前の一人を励ましていく学会活動への挑戦にほかなりません。
 
 これからも、池田先生の提言を学び抜き、強い意志を持って師が貫いた平和への行動を継承・推進していきます。