〈世界の体験〉 イタリアで多数の受賞歴を持つ声優2024年3月22日

  • 〈Tomorrow 明日へ向かって〉

イタリア創価学会 エリカ・ヨウコ・ネッチさん

 映画「千と千尋の神隠し」の千尋。「ハリー・ポッター」のジニー・ウィーズリー。「ファインディング・ニモ」のダーラ。これらは全て、エリカ・ヨウコ・ネッチがイタリア語の吹き替えを務めたキャラクターだ。

 「“どうやって声を変えているの?”って聞かれると困っちゃうんだけど(笑)、一番は、やっぱり役への感情移入かな!」

 イタリアでは売れっ子の声優。アニメ、映画、ドラマなど、100作以上に出演してきた。

 何度も吹いた“向かい風”。強くなろうと、どれだけ踏ん張っただろう。チャーミングな笑顔、それは負けなかった証しだ。

 両親はイタリア創価学会のメンバー。生まれた時から、エリカの近くには信心があった。

 「父や母から信仰を強要されたことはありません。でも、いつも池田先生のことを語ってくれて。幼い頃から、平和の音色のように心が落ち着く題目が大好きでした」

 だから突如、パニック発作に襲われた、あの夜も、エリカは題目を唱えていた。

 「あれは8歳の時。不安と恐怖が、急に押し寄せてきたんです」

 実はエリカには、1歳半から持病がある。糖尿病だ。日常にあるインスリンの投与。“みんなとは違う”“いつまで病気が続くの?”。心がざわつき、眠れない。暗闇で安らぎをくれたのは、題目だった。

 12歳の時、無情にも糖尿病が悪化する。怖さを隠して強がる娘と、それを心配する母親――。“私は自立したいの!”。母との衝突はエリカの心に影を落とした。

 「うつ病でした。食事も喉を通らず、みるみるうちに体は弱っていって」。大好きな題目も、あげられなくなった。

 そんな彼女を支えた、“真心”がある。エリカを心配し、遠路はるばる、彼女の元に通い続けたメンバーがいた。“一緒に題目をあげよう!”

 「その心に、私は素直に応えられなかった。それでも、変わらず会いに来てくれて。忘れられない励ましです」

 周囲の祈りもあったからだろう。御本尊の前に座れない日には、自然と池田先生の書籍を手に取る自分がいた。悩み、葛藤、誓い――『若き日の日記』に心が震えた。

 「“君は一人じゃないよ”って、先生が励ましてくれているような気がして……」

 エリカの瞳は、輝いていった。

同志と共に。笑顔がはじけるネッチさん(前列右から2人目)

同志と共に。笑顔がはじけるネッチさん(前列右から2人目)

報恩に生きたい

 声優としてのデビューは6歳の時。きっかけは、ある日、誘われたオーディションだった。キャラクターに命を吹き込む、魔法の世界。挑戦すると、なんとコメディー映画「ビッグ・ダディ」で子役の吹き替えに抜てきされた。

 高校卒業後は、声優の道へ。だがエリカには、いつも足かせになるものがあった。

 「自分に自信がなかったんです」

 繊細な心。パニック発作やうつ病も、まだ克服してはいなかった。

 転機が訪れたのは、19歳の時。エリカは女子部部長の任を受けた。それは、きっと挑戦の連続となるに違いない――。

 「でも、この挑戦が、いつか誰かを励ます糧になると思って。信心の実証を示したかったんです」

 一番、苦しかった時に支えてくれた池田先生――。“報恩に生きたい”。その思いが、エリカの心を熱くした。

 持病もあり、車の免許は取れない。「ならばと、メンバーに会いに、バスや電車を乗り継いで、100キロ以上、移動したこともありました」

 先生の戦いに思いを馳せる道中。心の中で、そっと題目を唱えてみた。心地よい疲れ。その日々の中で、人生が開けないはずがなかった。

 23歳の時、パニック発作とうつ病を克服。またこの間、仕事でも数々の作品からオファーを受けたのだ。3人の友人も入会。エリカは、また一つ強くなった。

ネッチさんの広布の舞台であるローマの街並み。州女子部長として悩める友に励ましを送る

ネッチさんの広布の舞台であるローマの街並み。州女子部長として悩める友に励ましを送る

“追い風”に変えて

 下半身に痛みが走ったのは、それから2年後のことだった。歩くのはおろか、立つことさえもままならない。だが、突きつけられた診断は“原因不明”。月日だけが過ぎていった。

 ある日、エリカは思った。“私は、あとどれだけ強くなればいいのだろう……”。確かな治療も受けられない。腕の中には、気休め程度の湯たんぽだけ。惨めで、心細くて、心で何度も“先生!”と叫んだ。『若き日の日記』を手に取った。

 「すると、偶然開いたページに、先生が寝床に湯たんぽを入れながら、体調について悩む場面があったんです」

 “大丈夫。恐れるものは何もない”。背中を押してもらった気がした。

 2018年、師匠を求めて来日。“必ず病を治します!”。広宣流布大誓堂で、そう誓った。帰国後は、これまでにないほどの唱題に挑戦。すると、何かの治療が奏功したのか、気付けば、あの痛みが消えていたのだ。後に判明した病名は、間質性ぼうこう炎と末梢神経障害だった。

 仕事では、病が襲った4年間、毎年、年間最優秀女性声優賞や最優秀女優賞などを受賞。それは、使命の舞台で実証を示そうと、病に負けず、自分に負けず、挑戦し抜いた結果だった。

 そんな彼女を近くで見ていたのだろう。先日、未入会のパートナーが信仰の実践を決意。さらに4人の友人も題目を唱え始めたのだ。

 エリカは誓う。
 「2030年までに、新たに50人の友人に仏法の偉大さを語っていきます!」

 全てを“追い風”に変えて、彼女は進む。

取材協力/イタリア「IL NUOVO rinascimento」誌

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