おはようございます。部屋の温度は8℃。 創立者・池田先生が示した、智慧・勇気・慈悲を備えた世界市民を育成するSISM。可能性を高め世界に貢献する人材こそ急務。戦争や貧困等、世界の課題は多い。間違いをだだし勇気を持って世界をリードしてほしい。今日もお元気で!

 

〈特集〉 世界市民を育む創価インターナショナルスクール・マレーシアの挑戦2024年3月8日

  • 共に学ぶ9カ国・地域の1期生138人
  • 皆で築く校風――やり抜く力を培う

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 9カ国・地域から138人の1期生が集い、2月22日に待望の開校式を迎えた創価インターナショナルスクール・マレーシア(SISM)。国際的に定評のあるプログラムに沿って中等教育と大学予備教育を行う学校で、日本の中高一貫校に当たる。世界市民の育成へ、本格的な歩みを開始したSISMの授業の様子などを紹介する。

9年生の目的発見型学習の授業で行われた「貿易ゲーム」。模擬的な“貿易”を通して現実世界の仕組みを学ぶもので、生徒たちは英語を駆使しながら熱中して取り組んだ(2月21日)

9年生の目的発見型学習の授業で行われた「貿易ゲーム」。模擬的な“貿易”を通して現実世界の仕組みを学ぶもので、生徒たちは英語を駆使しながら熱中して取り組んだ(2月21日)

 SISMは、マレーシアの首都クアラルンプール近郊にある。開校式前日の2月21日、新出発を控えた緊張感と活気の中で、時間を惜しむように、通常の授業が行われていた。許可を得て、いくつかの授業を取材した。

 9年生(日本の中学3年生に相当)全員が集まった教室から、にぎやかな声が漏れる。皆で、「貿易ゲーム」を楽しんでいた。これは、4~5人のグループが一つの“国”となり、“他国”のグループとの交渉を通して、自国の富を増やしていくゲーム形式の授業である。現実社会の仕組みを学びつつ、知識の応用や問題解決の力を育む「目的発見型学習」の一つである。

 各グループには事前に紙と道具(はさみ、定規、コンパス等)が配布されている。紙はその国が持つ“資源”を表しており、それを決められた形に切ると“製品”となって“お金”に交換できる。

 配られる紙の枚数や道具の数は国によってバラバラ。豊富な道具や資金を持つグループは、いわば“先進国”で、逆に、紙(資源)はあるが道具や資金の少ないグループは“後発国”である。

 各グループは、手持ちの配布物を最大限に生かせるよう、知恵と言葉を尽くさなければならない。実際の授業では、相手から多くの紙を得ようと巧みに交渉を進めるチームや、道具を独占しようと交換を拒むチームが現れるなど、教室内には話し声が絶えず、白熱していた。もちろん生徒が話すのは英語だ。

 授業を終えた生徒からは「楽しかった」との感想に次いで、「将来、社会で活躍する実力をつけたい」等の声が上がった。この授業を通して、現実社会に存在する貧富の差や、国力の差が生む不公正などに目を向ける狙いもあるという。

対話重視の授業

英語力に不安がある生徒が原則2学期間、集中的に学ぶプログラムも準備されている(2月21日)

英語力に不安がある生徒が原則2学期間、集中的に学ぶプログラムも準備されている(2月21日)

 8年生の数学の授業では、3人1組のグループごとに“カフェ”のメニューづくりに取り組んでいた。従業員の労働時間、原材料価格、サービス料等の計算を重ね、合理的な販売価格を設定する。メニュー表のレイアウトも工夫し、グループごとに発表していた。

 一方、7年生の英語の授業では、生徒一人一人がそれぞれの出身国の特徴などを発表。それに対して、教員は皆に質問を投げかけ、全員が発言する工夫をしていた。

 発話機会の多い対話重視の授業を通して、語学力も自然な形で伸びていくに違いない。ある生徒は、「授業が一方通行ではなく、自分の考えを言葉で伝える必要があるので、短期間で英語力がついた」と喜んだ。

 SISMの授業の特色は、少人数で、徹底して「対話」を重視する点にある。生徒にSISMの良さを聞くと、「暗記ではなく、先生や仲間との会話やディスカッションが多いこと」などの答えが多く返ってくる。

昼食の時間には、カフェテリアの至る所で語らいの輪が広がっていた(2月21日)

昼食の時間には、カフェテリアの至る所で語らいの輪が広がっていた(2月21日)

 対話を重んじる雰囲気は、授業だけではない。例えば、マレーシアを含め、9カ国・地域の生徒が暮らす友好寮。4人あるいは3人からなる各部屋は、さまざまな出身国・地域の生徒が入り交じるように考えられている。

 英語に苦手意識があっても、話さなければ意思疎通ができない。対話を通してしか文化的な違いも乗り越えられない。寮の責任者は、生徒全員が対話の術を身に付け、世界市民の精神を養ってほしいと語った。

 カフェテリアでの昼食の時間にも、対話があふれている。教職員は積極的に生徒の輪に入る。自分のペースで食べたい生徒などに配慮しながら、できるだけ一緒に食事を取り、語り合う。ある教員は冗談交じりに、「SISMでは一人になる方が難しい」と話した。

 昼食の時間に象徴されるように、SISMでは、教員だけでなく事務職員も含めた全員が、未来の宝を育む自覚と誇りをもって生徒に接するよう、心掛けているという。

 実際、誰が「教員」で、誰が「事務職員」か区別できないほど、大人たちは皆、生徒によく声をかけていた。

 生徒の側では、教職員全員を、「ティーチャー(先生)」と呼んでいるという。

校長室の前に設けられた“目安箱”。SISMでは、生徒が校長を含めた全教職員に、自由に意見を伝えることができる

校長室の前に設けられた“目安箱”。SISMでは、生徒が校長を含めた全教職員に、自由に意見を伝えることができる

社会貢献の人に

SISMでは教室を飛び出しての授業も。マレーシアの先住民の文化を学べる施設を訪れ、“多様性の国”を体感した(昨年10月、セランゴール州内で)

SISMでは教室を飛び出しての授業も。マレーシアの先住民の文化を学べる施設を訪れ、“多様性の国”を体感した(昨年10月、セランゴール州内で)

 SISMには、教職員が検討を重ねた、三つの言葉からなる「校風」がある。

 最初に、「Grit(やり抜く力)」。成長への強い意志をもって困難を乗り越え、努力し続ける不屈の決意と行動のことである。
 次に、「Respect(尊敬)」。他者を思いやり、違いを認め、多様性を尊重する精神だ。

 最後は「Appreciation(感謝)」で、周囲の人々や世界に深く感謝する心である。
 この三つを合わせた造語、「GReAt」を「校風」として掲げた。

 時代とともに学校で習う知識は古くなる。しかし、学び抜く姿勢と「やり抜く力」があれば、生涯にわたって成長し、社会に貢献していける。そんな精神を培ってほしい――「校風」には、こうした願いが込められていると教職員は言う。

 国際的なプログラムに沿って、習熟度などの基準が定められたSISMの授業は簡単ではない。しっかり学んでいけば、欧米等の著名な大学への道も開ける。加えて、SISMは“その先”をも見据えている。

 創立者・池田先生が示した、智慧・勇気・慈悲を備えた世界市民を育成するSISM。栄光の1期生は仲間たちと共に胸を躍らせ、豊かな教育環境で錬磨の青春を歩み始めた。

校舎の前には、美しい天然芝のグラウンドが広がる(7年生の体育の授業から)

校舎の前には、美しい天然芝のグラウンドが広がる(7年生の体育の授業から)

SISMではコンピュータールームも完備。授業では、ウェブページの作成などを学ぶ

SISMではコンピュータールームも完備。授業では、ウェブページの作成などを学ぶ

永遠の友情を結ぶ友好寮

5階建てで400人を収容できる友好寮。体を鍛えるジムや、生徒同士が交流しやすいように設計された、広々としたロビー等を備える

5階建てで400人を収容できる友好寮。体を鍛えるジムや、生徒同士が交流しやすいように設計された、広々としたロビー等を備える

 SISMでの学びと成長を支える友好寮(フレンドシップ・ハウス)が、2月22日の開校式に合わせてオープンした。マレーシアを含め、9カ国・地域から集った生徒が入寮。寝食を共にしながら、互いの文化を理解し、切磋琢磨する世界市民の揺籃である。

寮の責任者であるインド出身のメハラさん㊧とマレーシアのチュさん

寮の責任者であるインド出身のメハラさん㊧とマレーシアのチュさん

 寮の責任者である「ディレクター」には、サリル・メハラさんが就任。メハラさんは、インドで教育関係の事業を営んでいたが、創価教育に人生をささげたいと、夫婦でマレーシアに移った。

 メハラさんは、「世界市民育成のために、寮は文化交流の重要な舞台です。池田先生が教えてくださった“互いに学び合う心”“友情を築くこと”を大切にしたい。自分が親代わりになる気持ちで、どこまでも生徒を大事にしていきます」と決意を語る。

 寮運営、生徒の心身のケアに尽力する「マネジャー」には、マレーシアのパメラ・チュさんが就いた。また、24時間体制で見守る「寮父・寮母」も常駐する。

友好寮では原則、3~4人が1部屋で暮らす

友好寮では原則、3~4人が1部屋で暮らす

寮に設置された自習室。午後7時30分から1時間、自習の時間が設けられている。担当の教員に質問することもできる

寮に設置された自習室。午後7時30分から1時間、自習の時間が設けられている。担当の教員に質問することもできる