〈みちのくから世界に“春”を――3・21「東北青年部の日」30周年〉2024年3月6日

 本年は「東北青年部の日」30周年。その淵源は、1994年(平成6年)3月21日の東北栄光総会・第1回宮城県総会である。席上、池田先生は「特に青年部の諸君に、語っておきたい」と述べ、「創価学会は、尊貴なる仏勅の教団である。その素晴らしさを、ありのままに随自意で示していけばよい」と訴えた。ここでは、「3・21」の広布史と共に、東北6県の代表の青年を紹介する。

一切の根本は随自意で広布に進みゆく「勇気」

 さわやかな春風がそよいでいた。1994年(平成6年)3月21日、東北栄光総会・第1回宮城県総会が開催された。会場の東京牧口記念会館に、東北6県の代表1750人が欣喜雀躍と集った。
 総会を目指し、東北の同志は本紙の購読推進に取り組んだ。購読者が町民の2割を超える地域も誕生するなど、学会理解の輪を大きく広げた。
 池田先生の出席が決まったのは、総会の前日のこと。「明日は、大事な話をするよ」との師の言葉に、急きょ、青年部のリーダーも総会に参加することになった。
 先生はスピーチの冒頭、「開目抄」の一節を拝し、「仏」について言及した。
 「戦い続ける心が『仏』、行動し続ける姿が『仏』である。魔と戦いきる人が『仏』なのである」
 さらに、“特に青年部に語っておきたい”と前置きし、次のように強調した。
 「仏法には『随自意』と『随他意』がある。随自意は、人々の機根にかかわらず、仏法の真実の法理をそのまま説くこと。随他意は、人々の好みや機根に合わせて説くことである。法門のうえで見ると、法華経は、随自意の“真実の”教えである」
 「随他意の経は、ただ法華経に導くためだけに意味がある。随自意の意義に背いて、随他意の経を用いることは法華経の死である。転倒であり、正法の信心の破壊となる」
 「社会の変化、特質、伝統、人々の理解度に応じて、仏法が“心に入る”よう、知恵を使っていくことは当然である。その努力なくして広宣流布はない」
 「一切の根本は、随自意で広布に進みゆく『勇気』である。これが大聖人、日興上人の教えである。そして牧口先生、戸田先生の大精神なのである。勇気が慈悲に通じ、勇気は知恵に通じる」
 日蓮仏法の魂は、「随自意」で語りに語っていくこと――池田先生は“対話の核心”を訴えた。この日が、東北青年部の原点となった。

1994年3月21日、池田先生が出席して行われた東北栄光総会(東京・八王子市で)。創価の哲学を、ありのままに堂々と!――先生は東北の友に呼びかけ、「新しき東北」「世界の東北」との指針を示した

1994年3月21日、池田先生が出席して行われた東北栄光総会(東京・八王子市で)。創価の哲学を、ありのままに堂々と!――先生は東北の友に呼びかけ、「新しき東北」「世界の東北」との指針を示した

活躍する青年の話題

【宮城】

 「東北青年部の日」から30周年を刻む今、東北の各地で、胸中の師匠と対話しながら、自身の人間革命に挑む青年たちが雄飛している。
 宮城・仙台駅前の飲食店の店長として奮闘する布施政明さん(若林総区、男子部本部長)。
 昨年2月、東京の店舗から異動となった。仙台駅前の店は売り上げが伸びず、閉店寸前の状況に陥っていた。
 布施さんが店長としてスタートしたのが、仙台駅前の店舗だった。2度目となる同店の店長就任。“自分の原点の店をつぶしたくない”――その一心で、御本尊の前に座り、従業員とコミュニケーションを図った。
 数カ月後、転機が訪れる。店の近くに、大手家電量販店が誕生。その影響で客足が伸び、経営はV字回復した。
 大学を卒業後、最初は食品会社に就職し、接客や人的管理などを学んだ。懸命に仕事に取り組んだが、体調を崩し、退職を余儀なくされる。
 再就職では約30社から不採用の通知が届いた。それでも、あきらめずに祈り続けた。その結果、食品関連の10社から採用の連絡をもらい、現在の飲食店に再就職した。
 昨年、16年間の対話の末、友人への弘教が実った。「負けじ魂を胸に、さらなる実証を示していきます」と意気軒高だ。

布施政明さん

布施政明さん

【岩手】

 田子樹さん(花北勇勝県、華陽リーダー)は、花巻市内で農業に従事する。
 農業に興味を持ったのは創価大学時代。「在学中、インドへ短期留学した際、訪れた農園で教育と農業が密接に関わっていることを学んだんです」
 “何が自分の使命なのか”を探し続けていた。インドで、「農業」と「教育」に使命を見いだしたのである。
 大学を卒業後、実家のある東京を離れ、岩手県に移住。住み込みで2年間、研修を受けた。
 初めての農作業、異なる生活習慣……。サッカーをしていた経験などから、体力には自信があったが、想像以上にきつい肉体労働の連続。挫けそうになる日もあった。
 だが、負けなかった。“夢への努力を続ける”と強く祈り続けた。志をもって農作業に取り組む田子さんの姿に、やがて周囲も信頼を寄せるように。今年、農業に従事しながら、パン屋を開店する予定だ。
 昨年、青年部教学試験3級に合格。今、仏法対話に挑戦している。
 「創価の思想を体現できる人に成長したい」と田子さん。“心の大地”を耕しながら、前進している。

田子樹さん

田子樹さん

【青森】

 澤口照亮さん(青森常勝県、男子地区リーダー)は、スポーツジムに勤務しながら、国体ホッケー競技の県代表選手兼監督として活躍。後進の育成にも力を尽くしている。
 小学3年から競技を始めた。高校時代、インターハイ出場を目指したが、最後の大会でも東北予選を突破できなかった。その時、“いつか必ず指導者の道に”と誓いを立てた。
 7年前、就職を機に青森へ戻った。しかし、残業や休日出勤が多く、仕事に追われる日々が続いた。そんなある日、男子部の先輩が「“時間革命”に挑戦しないか」と。澤口さんは男子部大学校に入校。学会活動に励む中で、現在のスポーツジムへの転職を勝ち取った。
 5年前、念願がかない、高校のホッケー部のコーチに就任。2年前からは中学校で監督も務める。今、指導者として、実感することがある。
 「選手の個性や特徴をよく理解してアドバイスすることで、各人の実力をより伸ばせると感じます。『一人一人の可能性を信じる』大切さは、日々の学会活動の中で学んだことです」
 今年度、U―15日本代表のスタッフにも就いた。着実にステップアップを続けている。

澤口照亮さん

澤口照亮さん

新緑に覆われた青森・奥入瀬渓流。その自然美は、躍動する青年の生命の輝きのよう(1994年8月、池田先生撮影)。東北の人材の清流は尽きることなく未来へと続く

新緑に覆われた青森・奥入瀬渓流。その自然美は、躍動する青年の生命の輝きのよう(1994年8月、池田先生撮影)。東北の人材の清流は尽きることなく未来へと続く

【秋田】

 秋田県内の病院で、看護師として勤務する古関黎香さん(湯沢太陽県、県池田華陽会サブキャップ)。池田華陽会の指導集『華陽の誓い』などをひもときながら、日々の看護に励む。
 看護の道に進むきっかけとなったのが、好きな少女漫画。看護師として奮闘する主人公の姿に憧れた。高校の時、祖父の介護に携わり、排せつの世話をした経験なども後押しとなった。
 高校卒業後は、看護学校に進学。看護実習の時には、毎日の睡眠時間が削られた。心身が疲弊し、投げ出したくなったことも一度や二度ではない。そのたびに、母・めぐみさんの励ましを胸に、唱題を重ねた。
 看護学校を卒業した後、専門学校へ。看護師だけでなく、保健師の国家試験にも合格した。
 現在の病院に勤めて、まもなく2年。重なる業務に患者と関わる時間が思うように取れず、葛藤することもある。それでも日々、“慈悲の看護を”と御本尊に祈り、患者に安心を届けようと笑顔で接し続ける。
 唱題根本に進む古関さん。看護という使命の舞台で奮闘する“主人公”として、輝きを放ち始めている。

古関黎香さん

古関黎香さん

【山形】

 小学3年から柔道を始めた峯田千裕さん(山形太陽県、華陽リーダー)。中学・高校も柔道を続け、創価大学に入学した。
 しかし、高校3年の夏、右膝の前十字靱帯を損傷。創大入学後も痛みが残り、練習できない日々が続いた。
 やりきれない思いが募った。その時、励ましてくれたのが柔道部の先輩だった。
 「絶対、自分に負けちゃいけないよ」――そう声をかけてくれた先輩は、峯田さんのケガの回復を願い、寄り添い続けてくれた。先輩の真心が胸に染みた。
 “必ず治してみせる”と心が定まった。大学1年の秋には、練習にも復帰。3年の時の都大会では、優秀選手に選ばれた。
 大学卒業後、体調が優れない祖母のやすよさんを支えるため、地元で就職した。職場での人間関係などに悩んだ時もあったが、母・美穂さんの「仏法は“桜梅桃李”。千裕は千裕らしく進もうよ!」との言葉を胸に乗り越えた。
 昨年、仕事ぶりが評価され、昇進。多忙の合間を縫って、学会活動にも積極的に取り組む。
 成長を重ねる孫の姿に、やすよさんが毎日、家族に口にする言葉がある。
 「本当に幸せ!」

峯田千裕さん

峯田千裕さん

【福島】

 母子家庭で育った橋本勇輝さん(福島池田県、学生部部長)は、母の精神疾患や経済苦など、幾つもの苦難に直面してきた。
 給付型奨学金やアルバイトで学費を工面し、勉学に励む日々。だが、ほかの学生の姿を見て、境遇の違いを感じ、唇をかみ締めることもあった。
 そんな時、支えてくれたのが学生部の仲間だった。自分の苦しみを共有してくれ、励ましを送ってくれた。目の前の一人と同苦する真心に胸打たれ、学生部の活動に励むようになった。
 昨年10月、有志と共に核兵器廃絶に関する展示を主催。来場した大学教授から「今後も、こうした活動を続けてほしい」との期待の言葉が寄せられるなど、共感を広げた。
 今春、福島大学大学院の博士課程に進学。宇宙の成り立ちを解明する「初期宇宙論」研究の道に進み、未知の開拓に挑む。

橋本勇輝さん

橋本勇輝さん

 ◇◆◇ 
 94年の総会で、先生は「厳寒の 彼方に春の 花咲かむ 三世の生命は 満開なるかな」など3首の和歌を詠み贈った。
 師を求め、不二の道を進む青年がいる限り、広布の春は必ず来る。若き生命が躍動する連帯を、東北の友は築きゆく。