〈池田先生の業績をたたえる欧州議会の行事から〉㊤2024年2月25日

  • 池田氏の哲学が平和と共生の世界築く

 ベルギーのブリュッセルにある欧州連合(EU)の欧州議会の施設内で20日に開かれた、池田先生の業績をたたえる行事「対話と人間革命による平和の推進――池田大作の生涯」。登壇者の発言を要旨で紹介する(㊦は後日掲載)。

池田先生の生涯をたたえた欧州議会の行事。平和への行動を貫くことを誓い合った(20日、ベルギーのブリュッセルで)

池田先生の生涯をたたえた欧州議会の行事。平和への行動を貫くことを誓い合った(20日、ベルギーのブリュッセルで)

●欧州議会 ピナ・ピチェルノ副議長

 
理想と現実埋める実践の人

 会場にいる皆さん、そしてオンラインで参加している多くの皆さん。人類に偉大な範を示された池田大作氏の生涯を多くの友人と共に記憶し、たたえるために、欧州議会に皆さんを歓迎できることは、私にとって大きな名誉です。
 
 池田氏は、哲学者、詩人、平和と人権の活動家、若者と女性の偉大な支持者であり、気候変動対策に多大な貢献をされた方です。氏は、このような多様なテーマに生涯を捧げられました。
 
 ご存知のように、池田氏は欧州を含む世界192カ国・地域に広がる、世界的な仏教団体である創価学会の第3代会長を務められました。世界各地で地域に根差し、SDGs(持続可能な開発目標)の推進に積極的に取り組む組織である創価学会と知り合えたことは、とても光栄なことです。
 
 私は2022年、イタリア創価学会の核兵器廃絶運動などを通して、創価学会を深く知るようになりました。
 
 池田氏は理想と現実のギャップを埋めるため、世界を舞台に行動した、実践の人です。
 
 池田氏は、小説『人間革命』を執筆されました。そのテーマは、“一人の人間革命が国家の運命を変え、最終的には全人類の運命をも変革する”ということです。特に今、気候変動や地球規模の危機にさらされている世界において、池田氏の哲学を実践する時が来ていると信じています。
 
 氏はヨーロッパの団結を信じていました。氏は、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵をはじめ、ヨーロッパの多くの識者と交流を結び、対談をされました。だからこそ、ヨーロッパの市民と共に皆さまの師匠を偲ぶのです。
 
 皆さまと共に、池田氏が求めていた理想の実現に向けて出発してまいりたい。ヨーロッパを良くするために何ができるのか、平和と社会の正義を実現するために何ができるのか――共に考えていきたいと思います。平和は抽象的な概念ではなく、正義から切り離されているものでもないのです。
 
 国家という違いを乗り越え、人々のために一緒に働きましょう!

●欧州仏教連盟 ステファノ・ベッテラ会長

 
開かれた社会へ不断の貢献

 フランスの哲学者ミシェル・オンフレは、真の文明を創出する土台を形づくることができるのは、ただ宗教のみであると指摘しています。開かれた対話の社会を創るのか、その反対に、他者を信用しない、疑いに覆われた社会を創るのか――いずれの場合も、土台となる宗教の性格が決定的な影響を及ぼすことは、決して偶然ではありません。
 
 池田大作氏は、仏教の非常に豊かな価値と思想に基づいて、この問いに答えを示そうとした一人であります。
 
 氏のメッセージには普遍的な希望があり、紛争や気候変動、貧困をはじめ、人々を脆弱にする諸課題に直面している今日の社会において、とりわけ輝きを増しています。
 
 氏が遺した文章は数多くありますが、私はここで、小説『人間革命』と国連への「平和提言」を通して学んだことに言及したいと思います。氏の教えや著作にはどれも、誰もが地球規模の問題の解決に貢献できること、また、人はバラバラに生きているのではなく相互に連関していることを認識させる仏教の英知が満ちています。これは極めて氏に特有の力であります。
 
 移民の問題、そして宗教共同体間の対話の問題は、西洋社会が直面する複雑な課題を何よりも象徴しているように思われます。これらは安全保障上の課題であるだけでなく、むしろ欧州社会のあり方について、また、現代の民主主義の脆弱さについて早急に熟考する必要性を浮き彫りにしているからです。
 
 まず、ヨーロッパの宗教界が、より大きな政治的共同体と自分たちとの関係性を認識しているかどうか、またどのように認識しているかを改めて問い直す必要があります。
 
 つまり、欧州には異なる文化との接触を通じて生まれた新たな文化や社会、自己認識はあるのか、あるいは今後生まれる可能性があるのか。そして、それをどのような価値観に基づいて根付かせることができるのか。この複雑な構造の中で仏教はどのような役割を果たせるか――これこそが問うべき課題です。
 
 あらゆる人々に開かれた欧州を志向していく上で、異なる文化の流入は何をもたらすのでしょうか。私たちはそうした価値観と共存しながら、欧州の文化的伝統の上にある生活様式の何を守ることができるか、また何を守らねばならないかを自問せねばなりません。開かれた信頼ある欧州であるために、多様な文化との対話が必要です。未来への橋を架けるために、現在の複雑な事態を受け入れる必要があります。まさにこうした点において、池田氏は不断に独創的な貢献をされました。
 
 氏は人間性の根本かつ中心的要素として、共同体における一人一人の人間の尊厳を訴えています。仏教の本質的なメッセージは、苦しみを癒やし、連帯を再構築し、現代の特徴でもある分断を乗り越える方法を教える点にあります。そして仏教において社会とは教えを実践する場であり、確信をつかみ、孤独から抜け出し、自らの活動が持つ意味を体得する場なのです。
 
 この点について、イタリアのミラノ郊外にある創価学会の会館を訪れた時のことを思い出します。それは7月末の日曜日で、耐え難い暑さにも関わらず、何百人もの人々が宗教間集会に出席するため会場に集まっていました。仏教を含め、さまざまな異なる伝統に対し創価学会の方々が示した熱意と関心に、私は衝撃を受けました。
 
 これほど多くのメンバーが集い合っている姿を目にし、私は創価学会への認識を改めて深くしました。そして数十年前から倦むことなく、時空を超えて世界のあらゆる場所に届いている池田氏のメッセージの力を実感しました。多くの心と人生を結びつける氏の精神に、敬意と献身をもって頭を垂れずにはいられません。
 
 創価学会のコミュニティーには、私の冒頭の問いに対する答えの一部があるに違いありません。今後も仏教界だけでなく世界のために力を合わせていけることを願い、池田大作氏と創価学会のすべての姉妹、兄弟の皆さんに、重ねて敬意を表したいと思います。