名字の言 黄色いチューリップ2024年2月23日

 いつもの道を歩くと色とりどりの花々が迎えてくれる。先日、黄色のチューリップと出合い、心がポッと温かくなった▼黄色は「きわめて暖かい快い印象を与える」と言ったのは文豪ゲーテ。博物学者でもあり、色彩が人間の心情に与える影響を研究した。黄色の効果を「眼は楽しくされ、胸は広がり、心情は朗らかにされ、暖かい風がまともにわれわれに吹きつけてくるような気がする」(木村直司訳)と▼29年前の阪神・淡路大震災で被災者の心のケアに尽力した医師は、ボランティアに頼んで黄色を主体とする花をたくさん持って来てもらった。「暖房のない病棟を物理的にあたためることは誰にもできない相談である。花は心理的にあたためる工夫の一つであった」(中井久夫著『災害がほんとうに襲った時』みすず書房)▼東日本大震災の被災地では、がれきをかき分けるように成長し、大輪の黄色い花を咲かせた“ど根性ひまわり”が多くの被災者の希望となった。「がれき」といっても、一つ一つは「被災物」。被災された方々にとって大切な思い出が詰まったものである▼チューリップの花言葉に「思いやり」とあるように、被災者の最後の一人が復興宣言するその日まで、私たちは祈り、行動し続ける。(革)