〈世界の体験〉 アメリカで画家・大学教授として後進の育成に奮闘2024年2月23日

  • 〈My Drama〉

アメリカSGI
クリッシ・スタイキディスさん

 1枚の絵に、いくつものストーリーを織り込む。
 
 それが、物語画家であるクリッシ・スタイキディスさんが描く絵画の特徴だ。
 
 「私の作品は多くの場合、自分が経験してきたことを“視覚的に伝える物語”になっています」
 
 作品のテーマは「愛犬」「鳥」「月」「海」「生死」など、多岐にわたる。
 
 何度も塗り重ねられた作品には、さまざまな感情が色鮮やかに表現されており、彼女自身の人生体験の「回想」と「未来」が投影されている。
 
 今、アメリカのノーザン・イリノイ大学芸術・デザイン学部で学科長を担う彼女は、学生たちに美術教育を指導しながら、自身の制作にも余念がない。
 
 「仏法を実践する者として、学生一人一人を尊い存在として大切にしようと心がけています。また将来、今度は教え子たちが教員になった時に、自身の理想通りの教育を実践してもらえるよう、サポートしています」

スタイキディスさんが教壇に立つノーザン・イリノイ大学のキャンパス ©Ken Wolter/Shutterstock.com

スタイキディスさんが教壇に立つノーザン・イリノイ大学のキャンパス ©Ken Wolter/Shutterstock.com

 
先住民の絵画

 生まれはニューヨーク。絵を描くのが大好きな少女だった。大学時代は美術史と人類学を専攻した。
 
 卒業後は、エクアドルに移住し、アンデスの先住民族が農業で生計を立てながら、日常の中で芸術作品を制作している様子を観察しに行った。
 
 帰国後、幼なじみのノラ・バラバンさんと再会。彼女がアメリカSGIのメンバーだった。
 
 「私は毎日、南無妙法蓮華経の題目を唱えているのよ」
 
 彼女から仏法の話を聞き、1985年、スタイキディスさんはSGIの一員になった。
 
 「唱題を実践していくと、心の中の不安が和らいでいくのを感じたんです。また、小説『人間革命』を読み進める中で、戸田先生の弟子として戦う池田先生の姿を知り、自分も師匠に応える弟子になろう、妙法の芸術家、美術教員になろうと誓いました」
 
 96年、池田先生がニューヨークを訪問し、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで「『世界市民』教育への一考察」と題した講演を行った際には、スタイキディスさんは女子部の一員として運営役員を務めた。
 
 「先生の世界平和の戦いの一端を担えることが、いかに素晴らしいかを感じました。それとともに、自分はティーチャーズ・カレッジで博士号を取得し、芸術という角度から、平和を創る世界市民としての道を進もうと決めたんです」
 
 この言葉通り、同カレッジに進学。美術教育を専攻した。

ノーザン・イリノイ本部のメンバーと(後列右から3人目がスタイキディスさん)

ノーザン・イリノイ本部のメンバーと(後列右から3人目がスタイキディスさん)

 
 彼女が美術を究める上で着目したのは、マヤ系先住民の絵画だった。
 
 「先住民の人々にとって、芸術は生活の一部となっています。彼らの絵画がどのような役割を果たしているのかを研究したかったのです」
 
 スタイキディスさんは、中米のグアテマラに飛び、先住民の画家に師事することに。作品に込められた画家の思い、さらに文化的背景を探究していった。
 
 「私は幼少期から、自分に自信がありませんでした。しかし、祈り、活動に励む中で、粘り強さや強い信念が培われていくのを感じました」
 
 帰国後、懸命に論文執筆に挑み、2004年、晴れて博士号を取得できた。
 
 さらにノーザン・イリノイ大学の教授として採用され、“マヤ絵画”の研究に一層力を入れられるようになった。
 
 また、同大学の教授であるマイケル・バーンズさんと出会い、念願だった結婚もした。

アメリカ・シカゴの街並み

アメリカ・シカゴの街並み

 
先駆者たちの功績

 勢いは加速する。
 
 大学で教壇に立ちながら、マヤ絵画のアーティストらと共に作品を手がけていった。
 
 彼女が着目した一つが、絵画の中に描かれる社会問題だった。
 
 「マヤ系先住民の人々は、かつてはスペインの侵略を受け、抑圧されました。また今も社会的に弱い立場にあります。だからこそ、素晴らしい芸術作品を多くの人に見てもらえるように、あらゆる手を尽くしてきました」
 
 スタイキディスさんらの奮闘により、いくつかの絵画は、国内の有名博物館などで展示されるように。一方、彼女の研究や実績も次々に評価されていった。
 
 21年には、全米美術教育協会から、執筆、研究、専門的リーダーシップ、教育または社会奉仕において優れた業績を上げ、芸術教育の専門家として顕著な貢献をした個人に贈られる「ジューン・キング・マクフィー賞」を受賞した。
 
 「この受賞は、社会的正義と美術教育のために奮闘した、数々の教授たちの努力が認められたということでもあります」
 
 現在は同大学の教授として、数多くの講義を受け持ちながら、自身の作品づくりに挑戦する。
 
 また、多忙の合間を縫って、昨年まではアメリカSGI芸術部長として奮闘。現在は婦人部本部長として、友の激励に走っている。
 
 「私の目標は、広宣流布のために戦う世界的な画家に成長することです。まだまだ道のりは長いですが、池田先生にお応えできるよう、社会で実証を示し、師匠の構想を実現する世界市民となって、勝利の人生を歩んでいきます」
 

取材協力/アメリカ「ワールド・トリビューン」紙

 
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