名字の言 日米通算203勝の黒田投手の「かけがえのない財産」2024年2月19日

 広島東洋カープや米大リーグのヤンキースなどで日米通算203勝を挙げた黒田博樹氏が先月、野球殿堂入りした。氏が、何より大切にしてきた思い出がある▼それは、大活躍したプロ時代ではなく、万年補欠だった高校時代のこと。必死に練習に励むも、技術が及ばず、ずっとベンチを温める選手生活だった。それでも腐らず、走り込み、投げ込み、自分を鍛え続けた。悔しさに耐えて頑張り抜いた、その3年間こそ「かけがえのない財産」と氏はつづる(『決めて断つ』KKベストセラーズ)▼とかく人は、優れた人物の華々しい姿ばかりに目を奪われがち。だが、表に見えるものだけをまねようとしても、大抵は徒労に終わる。うまずたゆまず鍛錬を重ねる見えない姿勢にこそ、学ぶべきものが多くあるはずだ▼目立たなくていい。人に分からなくてもいい。“自分はこれだけやってきた”といえる「財産」を持つ人は強い。試練や悩みに直面した時、それに打ち勝つ勇気になるからだ▼御書に「さくらはおもしろき物、木の中よりさきいず」(新2037・全1492)と。桜は、ごつごつした木から、美しい花を見事に咲かせる。努力ありてこそ勝利、苦闘ありてこそ栄光――そう伝えているようだ。(誠)