〈社説〉 2024・2・14 サイバー犯罪から身を守る2024年2月14日

基本のセキュリティー対策を

 先日、知人から「クレジットカードの不正利用被害に遭っているかもしれない」と相談を受けた。「身に覚えのない請求がある」との言葉にピンときて、すぐにカード会社に問い合わせるよう促すと、やはり架空請求だった。幸いにも返金措置が取られたが、身近で起きたことを目の当たりにし、人ごとではないと感じた。

 実在する企業や金融機関を装ったメールやSMS(ショートメッセージサービス)を送るなどし、偽のサイトに誘導してクレジットカード情報などの個人情報を盗み取る「フィッシング詐欺」の被害額は昨年、80億円を超えて過去最高となった。残念なことに、最近では能登半島地震やウクライナ紛争への支援をかたる悪質な手口まで見受けられる。パソコンに偽の警告を出し、サポートセンターを装って金銭をだまし取る「サポート詐欺」の被害も増えている。

 政府は、サイバーセキュリティーに関する普及啓発強化のために、2月1日から3月18日までを「サイバーセキュリティ月間」とし、産学官民で連携して、さまざまな取り組みを行っている。

 あらゆる世代がインターネットの便利さを享受する一方で、サイバー犯罪もまた、あらゆる人々の生活を脅かすものとなっている。一人一人がセキュリティーについての関心・意識を高め、対応していく必要がある。

 多くの脅威は、基本的な対策を徹底することで回避できる。NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、最低限実施すべき対策として示す、「サイバーセキュリティ対策9か条」は、“不審なリンクは開かない”“パスワードは長く複雑にする”“OS(基本ソフト)やアプリは常に最新の状態に”など、高度な技術は必要としない。NISCのサイトで公開している、詐欺の手口の概要や対策について学べる動画も、参考になるだろう。

 もし、知らない請求が来るなど被害に遭っていないか不安な場合は、慌てての支払いや連絡を絶対にせず、すぐ最寄りの消費生活センターに相談しよう。

 御聖訓に「さきざきよりも百千万億倍御用心あるべし」(新1590・全1169)と。情報社会に潜む危険を知り、脅威から身を守り、対策を講じ続けるという、着実な取り組みを積み重ねていきたい。