〈法律Q&A〉 離婚時の財産分与2024年2月11日

不動産を処分されない手続き

弁護士 今井愛美

 Q 私は夫との離婚を前提に自宅を出て別居しています。
 離婚後の生活が不安ですが、夫に対して、経済的な請求はできますか。
  
 A 夫に離婚を請求する際、財産分与を求めることができます。
  
 Q 財産分与とは、何ですか。
  
 A 結婚後に夫婦で築いた財産を分けてもらうことです。
  
 Q お互いに貯金はほとんどなく、結婚後の財産と言えるのは、住宅ローンを組んで購入した自宅のみです。まだローンが残っていますが、自宅を売却すれば完済でき、費用を差し引いても少なくとも200万円程度の金額は残ります。自宅は夫名義ですが、それでも財産分与の対象となるのでしょうか。
  
 A はい。
 結婚後にローンを組んで購入し、家計費からローンを返済しているような場合は、夫婦間の協力によって築いた財産と言えます。そのため、夫名義であっても財産分与の対象となります。
  
 Q 夫は、近いうちに自宅を売却すると言っています。
  
 A 売却され、売却代金を使い込まれてしまうと、財産分与の対象となる財産がなくなってしまう可能性があります。それを防ぐには、自宅の仮差し押さえが考えられます。
  
 Q 仮差し押さえとは何ですか。
  
 A 財産分与についての結論が出る前に、財産を仮に差し押さえることです。勝手に財産を処分されることを防ぐための手続きです。
  
 Q 具体的には、どのように行いますか。
  
 A 裁判所に「仮差押命令申立書」を提出します。
 また、裁判所が認めた場合、担保として裁判所が決める金額を供託する必要があります。
 ただし、“法テラス”と呼ばれている「日本司法支援センター」(経済的に余裕のない方への弁護士費用の立て替え業務等を行う機関)を利用して仮差し押さえをする場合は、この担保金についても立て替えてもらえる可能性があります。