〈インタビュー〉 舞台「リア王」主演 段田安則さん2024年2月8日

  • 3月8日(金)から東京芸術劇場
  • ※4月に新潟、愛知、大阪、福岡 5月に長野

 舞台「セールスマンの死」で主演し、その非凡な演技が評価され、昨年の「読売演劇大賞」最優秀男優賞などに輝いた段田安則さん。同作で演出を手がけたショーン・ホームズ氏と再びタッグを組み、次に挑むのはウィリアム・シェークスピアの戯曲「リア王」。3月8日(金)から東京芸術劇場で始まる同公演に先駆け、主人公を演じる段田さんに舞台に立つ意気込みを聞いた。

 ――シェークスピア作品の主演ですね。

 リア王は、1991年に蜷川幸雄さん(故人)の演出でエドガー役として出演しており、とてもいい作品だなと思っていました。今回の話を頂いて、すぐに“やってみたい”と返事をしたのですが、いざ、台本を手にすると“本当にやれるのか”と(笑)。でも、信頼する演出家のショーン氏が、どんな舞台にしてくれるのか楽しみでもあります。

 ――リア王はシェークスピア「四大悲劇」の一つで、人間の心の負の部分を軸に描いています。

 かわいがっていた娘の本音も分からず死んでいく主人公。たしかに悲劇ではありますが、実は結構、笑顔になる場面も多いんです。立派な人でも、どこか至らない部分があるように、人間が本来持っている傲慢さやずるさという“本質”を深く描くことで人々を魅了してきたから、時代や国を超えて何百年も残っているんだと思います。

◆芝居で客の心を動かせたら生きている価値を感じます

 ――共演者もとても豪華です。どんな化学反応を期待しますか?

 私のやり方として、事前に“こうやったら面白いだろうな”と考えて稽古に臨むこともありますが、あまり構えすぎないようにしています。現場で相手役に助けてもらうことや、共演者の皆さんに気付かされることも多いです。
 テレビドラマでも共演したことのある(小池)徹平君は頼りがいがあるし、浅野(和之)さんや高橋(克実)さんは何回もご一緒していて安心感は大きい。互いにそう思える関係性が築ければ、自然と、いい芝居になると思います。

 ――「演劇」と、テレビなどの「映像」の違いは?

 映像と舞台は“別物”だと思っています。映像は演出に沿って“作品の中に自分が入っていく”のに対し、舞台は動きやせりふの間の取り方も自由度が高い。俳優の“仕事量が多い”感じがします。
 それに舞台は、笑い、すすり泣きなど、お客さまの反応で心がどれほど動いているかが分かります。自分の芝居で“心が動いたな”と感じた時は、この仕事をやってきて本当に良かったと思うし、おおげさに言えば、生きている価値を感じます。そんな感覚が忘れられず、40年以上続けているのかもしれません。

 ――観客の反応が、ご自身の原動力になっているんですね。

 最近、だいぶ年を取りましたので、残り少なくなっている電池に充電をしていただいている感覚です(笑)。
 舞台での芝居は、出来上がった何かを披露するというよりも、お客さまと一緒につくっていくイメージです。役者は素材を提供し、それを受けたお客さまが想像したもの、その世界観が“作品そのもの”でもあるのかもしれません。

 ――役者となってから、半世紀近くがたちます。当時と比べて、志は変化しましたか?

 結局は最初の頃と、気持ちは何も変わりませんね。確かに、若い頃とは違い、肉体的にできなくなっていることは多いですが、役を深く理解できるようになったり、新たな振る舞いや解釈が芽生えたりと、できるようになっていることもあるかな……。
 役者には定年がないので、できる限り、ずっと続けていきたいと思っています。

 だんた・やすのり 1957年1月24日生まれ、京都府出身。青年座研究所を経て、81年に「劇団 夢の遊眠社」に入団し、主力俳優として活躍。最近の主な出演作は舞台「シラの恋文」(2023年)、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(21年)など。現在、NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演中。

【記事】木村英治 【写真】梅津賢太郎
 

◆公演情報

【東京公演】
3月8日(金)~31日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス ※8日はプレビュー公演。11日(月)~13日(水)、18日(月)、25日(月)は休演。日により公演回数は異なる。
料金=マチネ1万1000円、ソワレ1万円、U―18チケット3000円(税込み)ほか
問い合わせ=サンライズプロモーション東京 0570(00)3337
 
※同公演のほか、4月に新潟、愛知、大阪、福岡、5月に長野で上演。

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