おはようございます。部屋の温度は5℃。人を認め合い、励まし合っていけば、温かな家庭が築けると。心を大切にする生き方を身につけよう。今日もお元気で!

 

 

【ルポ一滴】平塚の家庭コン 「20年」の実り2024年2月7日

  • 大人が1センチ変われば
  • 子は1メートル変わる。
  • 子育てに自信と安心を。

平塚文化会館のロビーを使って行われた平塚旭日圏・金目支部の家庭教育懇談会(先月)。参加者は未就学児を育てる保護者をはじめ、小・中学生から高校生、大学生のいる世帯まで幅広く

平塚文化会館のロビーを使って行われた平塚旭日圏・金目支部の家庭教育懇談会(先月)。参加者は未就学児を育てる保護者をはじめ、小・中学生から高校生、大学生のいる世帯まで幅広く

 「子育てするなら、どこ?」と問われたら「平塚市!」――自治体がそうアピールするだけでなく、神奈川県外からの転入者の間でも満足度の高さをうかがわせる声が近年、多く聞かれるとのこと。手厚い支援制度、豊かな自然環境、充実した文化施設などが人気の理由のようです。さらに、同市を活動の舞台とする創価学会・平塚県の友に尋ねると「紹介したい取り組みがあります」と。それは「家庭教育懇談会」(通称=家庭コン)。20年前から組織を挙げて本格的に取り組み始め、地道に続けてきたのだそう。親子にとってどんな実りがもたらされたのでしょうか。(記事=大宮将之)

「おしゃべりするだけ」という励まし

神奈川県平塚市の景勝・湘南平から、相模湾と富士を望む

神奈川県平塚市の景勝・湘南平から、相模湾と富士を望む

 2人の子育てが一段落した今も、石橋満枝さん(支部女性部長)はその手帳を大切にしています。
  
 幼い娘姉妹の育児にあくせくしていた約15年前から家庭コンに参加するたび、学んだことや感じたことを書き留めてきたそうです。「見返すと、わが子への感謝や家族の歩みを再確認できるんですよね」
  
 夫の晃治さん(支部長)は結婚当時、未入会。家庭コンへの参加をきっかけに入会を決めたと言います。2012年1月、長女・さくらさん、次女・みなみさんと共に入会。現在、さくらさんは創価大学2年生で、みなみさんは今春から創価女子短期大学に進みます。
  

石橋満枝さん(右端)が家族と一緒に。左から長女・さくらさん、夫・晃治さん、次女・みなみさん

石橋満枝さん(右端)が家族と一緒に。左から長女・さくらさん、夫・晃治さん、次女・みなみさん

 家庭コンが入会のきっかけになったという晃治さんですが、「そこで信心の話を聞いたわけではないんです」と。家庭コンでは子育て・孫育てを巡って一人一人の話に皆で耳を傾けて、共感を示し、苦楽を分かち合います。すると参加者の心が軽くなり、前向きな気持ちになれるのです。
  
 保護者にとって、こうした“安心と共感の場”がどれほど大切であるかを、かねて晃治さんは知っていました。横浜市の療育センターに勤め、発達障がいのある児童やその親と関わってきたからです。その上で晃治さんは家庭コンに対し、ほかにはない“温かさ”や“信念のようなもの”を感じたのでした。
  
 晃治さんは、場所を改めて教育本部の友と懇談した折、その理由が分かりました。創価の教育者は朝な夕な、自身が関わる子どもたちの幸福を真剣に祈っていること。学会員は子どもを決して“下”に見ず、“一個の人格”として最大に尊重する哲学を持っていること。そして、そうした実践を貫くために、「教育こそ人生最後の事業」と定めた池田先生という師匠に学んでいること――晃治さんは「もっと豊かな療育と子育てができるなら」と、入会を決心。新しい日々が始まったのです。
  

手帳の中には

 晃治さん・満枝さん夫妻が家庭で心がけたことは、わが子の良い面を積極的に見つけ、一つ一つ具体的に褒める“言葉のシャワー”を浴びせること、愛情をしっかり伝えることでした。“私は私でいいんだと自信が持てますように”“生まれてきて良かったと思えますように”と祈りを込めながら――。こうした関わりができたのも、家庭コンを通して、親である自分たちが「自信と安心」を育めていたからだと言います。
  
 では当の子どもたち本人は、どう感じていたのでしょうか。当時を振り返ってもらうと「具体的にどんな言葉を言ってもらってたかは覚えていなくて(笑)」。けれど「家には“安心感”がありました。あと、両親が私たちを信じて、意思を尊重してくれているという実感も」と語ります。
  
 長女のさくらさんが教育者を志して創価大学の教育学部に進んだのも、両親の影響があるからかもしれません。現在は勉学に励む傍ら、箱根駅伝の常連校となった駅伝部のマネジャーとしても奮闘しています。
  

駅伝部のマネジャーを務める石橋さくらさん

駅伝部のマネジャーを務める石橋さくらさん

 次女のみなみさんは幼い頃、自分の気持ちを人に伝えるのが苦手だったそうです。その悔しさやもどかしさを受け止め、勇気づけてくれたのが両親でした。
  
 その安心感を挑戦への力に変え、中学・高校と進むにつれて「よさこい」や「手話」を始めます。人と心を通わせる喜びを知り、「どんな人も笑顔にできる自分に成長したい」と願うようになりました。そして創価女子短大が“全ての人との調和をはかる豊かなコミュニケーション力や英語力”を磨ける所だと知り、進学を決めたと言います。
  
 ――家庭コンの思い出が詰まった満枝さんの手帳を見せてもらいました。「自信を持てる子に」「優しい子に」との祈りにも似た言葉が、記されていました。
  

石橋満枝さんの手帳。“子どもが言われてうれしい言葉”など家庭コンで聞いたアドバイスが書かれている

石橋満枝さんの手帳。“子どもが言われてうれしい言葉”など家庭コンで聞いたアドバイスが書かれている

地域の教育力を高める

 平塚県が「家庭コン」を長年、続けてこられた理由はなんでしょうか。「“会合”ではなく“励まし”という認識があるから」「参加者が必ず元気になる手応えがあるから」と、組織のリーダーや未来本部、教育本部の友は口をそろえます。
  
 家庭コンは式次第の細かな検討をする必要がありません。少人数で“おしゃべり”するだけ。それが子育て世代にとって“励まし”になるのです。
  
 先月13日、金目支部と土沢支部、それぞれの家庭コンの取材へ伺いました。SOKAチャンネルVODの「教育セミナー」を視聴後、感想の共有を始めると、もう話が止まりません。自然と笑顔が広がるのです。 
  

金目支部の家庭コンで皆が楽しくおしゃべり

金目支部の家庭コンで皆が楽しくおしゃべり

青年教育者が一人の父親として、また教員の立場からも意見を述べる

青年教育者が一人の父親として、また教員の立場からも意見を述べる

相手の話を聞くこと――それ自体が励ましに

相手の話を聞くこと――それ自体が励ましに

子どもの「イヤイヤ期」で悪戦苦闘していることも、思春期のわが子のLINE(ライン)をはじめSNSの使い方に頭を悩ませていることも、話せば「うちもそう!」「分かる!」と共感が広がり、不思議と心も軽くなる

子どもの「イヤイヤ期」で悪戦苦闘していることも、思春期のわが子のLINE(ライン)をはじめSNSの使い方に頭を悩ませていることも、話せば「うちもそう!」「分かる!」と共感が広がり、不思議と心も軽くなる

  
 平塚県の友が実感していることは、ほかにもあります。それは大学進学者が飛躍的に増加したこと。創価大学・創価女子短大や創価学園の合格者も、ほぼ毎年出るようになりました。アメリカ創価大学(SUA)に進んだ友もいます。
  
 家庭コンは「地域の教育力」向上にもつながる――これが平塚県の友の確信です。本年もすでに、全ての支部で家庭コンを開催することが決まっています。
  

語らいが弾んだ平塚躍進圏・土沢支部の家庭コン。懇談会終了後にも、会場に残って教育部の友に個別の相談をする参加者の姿があった(先月)

語らいが弾んだ平塚躍進圏・土沢支部の家庭コン。懇談会終了後にも、会場に残って教育部の友に個別の相談をする参加者の姿があった(先月)

土沢支部の家庭コンで、教育部の友が話に耳を傾ける

土沢支部の家庭コンで、教育部の友が話に耳を傾ける

どう生きたいか

 家庭コンで大学進学者が増えたといっても、受験指導しているわけではありません。あえて因果関係を見いだすなら、ここで親自身がわが子と共に学び、共に成長する喜びを実感できる点にあるでしょうか。
  
 原真由美さん(地区女性部長)も家庭コンをきっかけに、成長を実感しました。かつては長男・夢輝さん(高校3年)が希望する進路について内心、“学力的に大丈夫なんだろうか”と不安を覚えていたそうです。
  
 そんな心情を受け止めてもらえる場が家庭コンでした。そして教育本部の友からこんなアドバイスをもらったのです。「わが子にとって一番よい道を、わが子自身が選び取っていけるよう、わが子を信じ、真剣に祈り、最大に応援すること――それが親にできることではないでしょうか」
  
 真由美さんの祈りが変わりました。するとわが子の成長と選択を「待つ勇気」「信じ抜く勇気」が湧いてきたのです。
  

右から原真由美さん、次女・夢来さん、長女・夢真さん、長男・夢輝さん、次男・歩夢さん、夫・義美さん

右から原真由美さん、次女・夢来さん、長女・夢真さん、長男・夢輝さん、次男・歩夢さん、夫・義美さん

  
 検討する受験先が多くある中で、最終的に夢輝さんが選んだのは創価大学の経営学部でした。昨年まで全く考えていなかったそうです。母と一緒にオープンキャンパスに参加する中で学生たちの生き生きとした姿に接し、「自分がどう生きたいかを考えた時、『ここだ!』と思ったんです」。
  
 経営を学ぼうと決めた背景には、父・義実さん(地区部長)と母・真由美さんの「生き方」を見てきたこともありました。両親は、地元・湘南の食材を使った米粉のガレットとクレープを移動販売するキッチンカーを出店。多くの人に“笑顔のひととき”を提供しながら、「地域の発展に貢献する経営を」と尽くしてきたのです。「自分も、人に喜んでもらえる生き方をしたい」――そう夢輝さんは語っていました。
  

米粉のガレットとクレープが大人気。旬の食材を使った限定メニューも

米粉のガレットとクレープが大人気。旬の食材を使った限定メニューも

  
 「大人が1センチ変われば子どもは1メートル変わる」といわれます。保護者の祈り、表情、言葉がけがほんの少し豊かに変わるだけで、子どもはそのわずかな変化を大きく感じ取り、大きく成長するのです。
  
 この“1センチの変化”を年々歳々、地域の皆で積み重ねていったなら――家庭コンがもたらす実りの豊かさは、はかりしれません。
  

  
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 〈ファクス〉 03-5360-9613
  
  
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