〈図書贈呈運動50周年〉 教育委員会・教育長の声2024年2月3日

●広島・呉市教育委員会 教育長 寺本有伸氏

想像力を養う読書が教育環境の違い補う

 広島県呉市には、下蒲刈島や大崎下島などの多くの島々があります。その中で私たちが果たすべき役割の一つは、島しょ部で暮らす児童たちと陸地部の子どもたちとの“教育環境の違い”をなくすことです。その違いを埋める手段として、読書は非常に有効な方法だと考えます。
 
 どこにいても、地理的な理由で体験できないことは、たくさんあります。しかし、本を読むことで、それらを補うことはできます。読書による疑似体験が、子どもたちの想像力を養うのです。
 
 しかしながら、島しょ部の中には学校から公共の図書館が遠く、移動図書館で対応している地域もあります。2019年12月、創価学会から多くの優良図書を寄贈いただいた大崎下島の市立豊小学校もその一つでした。
 
 学校の図書館が充実したことで、児童たちが本を手にする機会が増えました。同時に、ご提供いただいたことをきっかけに、感謝の心を育むことができたと聞いています。心より御礼申し上げます。
 
 呉市はこれまでも、全国に先駆けて「小中一貫教育」に取り組むなど、時代を見据えた教育改革に取り組んできました。
 
 22年には、「未来を創る人材を育てる」ことを目標として、教育振興基本計画を策定しました。その中で具体的な施策の一つとして「読書活動の推進」を掲げ、学校図書館の利活用などを進めています。こうした取り組みと、創価学会の図書贈呈運動には通ずる点があり、継続した支援に感謝しかありません。
 
 また、19年には、前年の西日本豪雨の被災地支援の一環として、市内の小学校にいち早く図書と書架をいただき、重ねて御礼申し上げます。
 
 いただいた本を存分に活用し、未来を担う子どもたちの育成に取り組んでいきます。
 

●北海道・安平町教育委員会 教育長 種田直章氏

5年間届く新しい本は児童にとって魅力的

 2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生し、安平町では家屋の倒壊や地割れなど、大きな被害に見舞われました。学校も例外ではありません。震災後すぐに、町内の学校を見回ると、本棚は倒れ、書籍が散乱し、あ然としたことを覚えています。
 
 そんな中、創価学会から被災地支援の一環で、たくさんの本を寄贈していただき、心から感謝申し上げます。
 
 〈創価学会は、胆振東部地震の被害が特に大きかった安平町、厚真町、むかわ町の全ての小・中学校に図書贈呈を行った〉
 
 この間、さまざまな地域・団体からも、あらゆる角度から、ご支援いただきました。
 
 ある学校では、応援してくれた団体の所在地を記した日本地図を子どもたちが作成し、校舎の入り口に掲げていました。多くの支えがあることを実感した子どもたちは、皆から勇気をもらい、感謝の心を身に付けていったに違いありません。
 
 安平町は、日本ユニセフ協会の認証を受け、子どもの声に耳を傾け、子どもの視点をまちづくりに生かす「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」に取り組んでいます。
 
 例えば、学校図書館の充実も“教員が児童に読んでもらいたい本”から“子どもたちが読みたい本”を中心にシフトする視点も必要です。
 
 “新しい本”は子どもたちの目に魅力的に映り、手に取る機会が増えます。その意味からも、御会の5年間にわたる継続的な優良図書の贈呈には、感謝しかありません。
 
 ICT教育(情報通信技術を活用した教育)が進められる現代においても、紙と電子それぞれの良さを理解し、子どもたちが本に触れる機会を増やせるよう努めていきます。

学会は離島や被災地の学校などに図書贈呈を行ってきた(熊本地震で甚大な被害を受けた西原村の山西小学校で行われた図書贈呈式=2017年12月)

学会は離島や被災地の学校などに図書贈呈を行ってきた(熊本地震で甚大な被害を受けた西原村の山西小学校で行われた図書贈呈式=2017年12月)