〈教育〉 ねんねトレーニング2024年1月25日

成功の鍵は「準備」と「継続」

乳幼児睡眠コンサルタント 和氣春花(ねんねママ)さん

 「一人で寝てくれたら、どれだけありがたいか」と思った経験はありませんか? 赤ちゃんが一人で寝られるようになるための練習「ねんねトレーニング(略して「ねんトレ」)」について、『○×ですぐわかる! ねんねのお悩み、消えちゃう本』(青春出版社)の著者で、乳幼児睡眠コンサルタントの和氣春花さんに話を聞きました。

 
やるかどうかは人それぞれ

 ねんトレは、必ずやらなければいけないものではありません。やるかどうかはもちろん自由です。

 私はよく、相談者に「ねんトレをやった先に家族の幸せが見えるかどうかが大事」だと訴えています。ねんトレは、子どもも親もよく寝られて、みんなが笑顔で過ごすための手段です。「子どもが寝なくて困っている」か「一人で寝られるようになってほしい」の、どちらかに当てはまれば、ねんトレを検討してみてください。

 ねんトレとは、赤ちゃんが持っている寝る力をちょっとずつ引き出すトレーニングとも言えます。では、どのようにしてその力を引き出すのか。必要なのは「親が見守ること」です。

 空腹やおむつの汚れなど、赤ちゃんが何かを訴えている場合は、対応してあげるのは当然、大切です。その一方で、「眠い」と訴えて、毎回すぐに抱っこや授乳をして寝かせてもらえると覚えた赤ちゃんは、眠くなると常にそれを求めるようになります。ですから、「眠い」「寝かせてほしい」という訴えに対しては、少し見守る時間をつくることで、赤ちゃんが自分で寝る力を身に付ける機会を増やしてあげられることになります。ただし、危険や緊急性があれば、いつでも駆けつけられるようにして見守りましょう。

 
心と体の「納得度」を高める

 ねんトレには、しっかりとした準備が大切です。何も準備せずに思いつきで、いきなり始めてしまうのは失敗のもとです。

 まずは、ねんトレを始めることに対して家族内で理解や合意を得ましょう。パパ、ママどちらか一方だけが熱心に取り組んでも、なかなかうまくいきません。準備は、睡眠環境を整えることから始めてください。寝室の安全確保はもちろん、気になる光や音があれば取り除きましょう。湿度は40~60%にし、室温は大人が快適な温度を目安にしてください。

 環境を整えたら、「寝ることを納得させる」ことを意識しましょう。私はこれを「納得度」と呼んでいます。納得度には心と体の両面があります。

 心の面で言えば、「私は寝るぞ」という気持ちにさせてあげること。そのためには、寝るまでの流れをいつも同じにしていくのが有効です。就寝ルーティンと呼んでいますが、例えば、お風呂→スキンケア→授乳→絵本を読む→就寝といった順番を固定化すると、心の準備ができやすくなります。

 体の面で言うと「体が眠くなるようにしていく」こと。寝るために必要なホルモン(メラトニン)は脳の松果体から分泌されます。その松果体は目とつながっていて、目が光を感じていると分泌が抑制されてしまいます。部屋を暗くすることで、メラトニンが出ます。また、副交感神経を優位にすると眠りやすくなります。具体的にはマッサージをしたり、落ち着いた音楽を流したりすることで、リラックスできるような時間を、寝る前に設けることはとても大事になります。

 また、人は体から熱を逃がしてあげると眠気がやって来ます。例えば、お風呂で温まった体温がちょうど下がってきたタイミングで布団に入ると寝付きやすくなります。お風呂から上がって45分から1時間ほどが“寝どき”です。

 泣かせ続けるようなねんトレを始める場合は生後6カ月以降からにしてください。また、赤ちゃん向けのねんトレ方法で効果があるのは1歳半ごろまでが目安となります。1歳半ごろからは自我が強く出てくるため、本人の意思も尊重しつつ、「こうやって寝るんだ」と子どもが納得して寝られるように持っていくのが重要になります。なぜ寝る方法を変更するのか、どのように変更するのが親の希望なのかを伝えて、子どもが納得いかない場合は妥協点を探すことも、時には大事になります。

 
具体的な四つのねんトレ

 では具体的に赤ちゃんのねんトレ方法を紹介します。まずは方針を決めましょう。大きくは「泣かせてもいいから短期間で習得させる」か「時間はかかっても、できるだけ泣かせずに習得させる」の2方針になります。

 「泣かせてもいいから短期間で習得」させたい場合は、次の3通りの方法があります。


①入退室する方法
 
 就寝ルーティンをしたら赤ちゃんをベビーベッド(布団)に寝かせて部屋を出る。寝室の外に出て、3分待機→入室して1~2分間なだめる→退室して5分待機、といったように部屋の外で待機する時間を延ばしながら、自分で寝入るのを待つ。


②離れながら見守る方法

 ①と同じように赤ちゃんをベビーベッドに寝かせたら、親は横に座る。ベッドの横→ベッドとドアの中間地点→ドアの前→ドアの外(ドアは開けたまま)と、親が座る位置を3日単位で少しずつベッドから離していく。


③そばで見守る方法

 赤ちゃんをベビーベッドに寝かせたら、横に座って寝付くまで見守る。泣いたり、立ち上がったり、親に触ったりしてきても抱き上げずに、落ち着いたトーンで声をかけてなだめる。

 短期間で習得させたい場合の三つの方法は、「泣いても抱っこはしない」のが特徴です。「時間はかかっても、できるだけ泣かせずに習得」させたい場合は「10分ねんトレ」という方法をおすすめします。


④10分ねんトレ

 就寝ルーティンをしたら赤ちゃんをベビーベッド(布団)に寝かせる。そのまま2~3分見守る。泣きやまなそうなら抱っこし、落ち着いたらまたベッドに寝かせる。これを2~3回繰り返す。1日10分程度から始め、ベッドに背中をつけた状態で眠りに就く経験を重ねていく。

 最後に、ねんトレを成功させる鍵は「準備」とともに「継続」。つまり「途中でやめないこと」が大切です。

 ねんトレがうまくいかなかったという人に話を聞くと「途中でやめてしまっている」ケースが多く見られます。せめて2週間は続けてみてほしいと思います。続けてみて、何も変化が見られないようであれば、「準備が不十分」もしくは「やり方が子どもに合ってない」のどちらかだと思われます。環境や納得度を見直し、四つの中から他のねんトレ方法も試してみてください。