気候変動の問題って?2024年1月22日

  • できる行動を今ここから!

 本年3月24日に、東京の国立競技場で「未来アクションフェス」が開催される。これは、核兵器廃絶や気候危機の問題解決を訴える、若者・市民団体の協働による平和イベント。創価学会青年部も「SGIユース」として参画する。
 
 学会・SGI(創価学会インタナショナル)は長年、こうした地球的課題に対して、池田大作先生のリーダーシップのもと、対話を中心とした草の根レベルでの意識啓発運動や、国際会議への参加、提言の提出等に全力で取り組んできた。
 
 今回は、SDGsのゴール13にも掲げられている「気候変動に具体的な対策を」をテーマに、「現状と課題」を確認しながら、学会・SGIのこれまでの取り組みをたどる。
 
 

◀◀現状と課題▶▶

 「冬なのに、まだ暖かい」――昨年、そう実感した人は少なくなかったのではないか。
 
 事実、2023年は歴史的な“高温年”となった。例えば、静岡県や山梨県等では昨年9月下旬に35度以上となり、観測史上最も遅い「猛暑日」を記録。12月も首都圏などで25度以上の「夏日」があった。
 
 気象庁は、昨年の年平均気温が平年値(1991~2020年の平均)を1・34度上回り、1898年の統計開始以来、最も高くなる見込みと発表。世界気象機関(WMO)も、2023年の世界の平均気温は、記録のある1850年以降で最も高くなることが確実になったと発表している。
 
 地球温暖化の主な原因は、人間の活動によって排出される「温室効果ガス」の増加だ。その代表例としては、二酸化炭素、メタンなどがあり、中でも、化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)を燃焼させることで発生する二酸化炭素は、温室効果ガスの総排出量の約76%を占めるといわれる。
 
 さらに、二酸化炭素を吸収する森林が減少していることも、温暖化を加速させている要因の一つである。
 
 温室効果ガスが多く発生すると、地球を覆う“毛布”のように太陽からの熱を閉じ込め、気温が上昇する。温室効果ガスの濃度は、過去200万年で最も高い水準といわれ、このままでは2050年ごろに世界の平均気温は最大で3度上昇するとも予測されている。
 

人間の生活を脅かす

 平均気温の上昇は、人間の生活や自然の生態系にさまざまな影響を及ぼす。
 
 例えば、豪雨災害。気温の上昇によって海や地面から蒸発する水分が大気中に多く含まれるため、大雨が発生する頻度は高まり、その量も増大する。それに伴う河川の氾濫や土砂災害などが、日本はもちろん、世界各地で頻発している。
 
 一方、過酷な干ばつが発生しやすくなる地域も現れる。そこでは、大規模な森林火災が頻発するリスクが高まるほか、穀倉地帯や農場では作物が不作になり、世界中で食糧価格が急騰する。食糧難に陥る国や地域が今以上に増えるおそれがある。
 
 また温暖化により、現在融解が続くグリーンランドや南極の氷床の大半が崩壊すれば、最終的に海面上昇は10メートルを超える可能性も。小さな島国や沿岸部の都市は水没してしまうかもしれない。
 
 気候変動がもたらす災害による経済損失は、世界で年間平均数十兆円を超えるともいわれ、毎年約2億人の人々が被災している。今のまま気候変動が進めば、最悪の場合、2100年までに10億人が移住しなければならないとの試算もある。
 
 これらの事象は人々の衝突や紛争をも引き起こしており、近年、安全保障に関する国際会議においても気候変動が焦点の一つとされている。つまり、気候変動は今や、単に「環境問題」とくくれるようなものではなく、人権問題や安全保障問題とも複雑に絡み合っていることを認識しなければならない。
 

皆が危機の当事者に

 現在の地球は産業革命前の1800年代後半と比べ1・1度ほど温暖化し、今後も上昇が見込まれる。それを2030年までに「1・5度」に抑えることが、パリ協定(2015年に採択)で掲げられた世界共通の努力目標であり、喫緊の課題である。
 
 気温の上昇幅が2度の場合と1・5度の場合では、その影響は大きく異なる。
 
 例えば、1・5度上昇で熱波は4・1倍、大雨は1・5倍、干ばつは2倍に増える。それが2度上昇すると、熱波は5・6倍、4度上昇で9・4倍といった形で増えていく。
 
 1・5度に抑えるためには、2030年までに二酸化炭素の排出量を2010年比で45%減らし、50年には実質ゼロにする必要がある。
 
 しかし、気候変動問題の難しさの一つは、“害を引き起こしている人”が、“大きな害を被る人”との時間的・地理的ギャップを背景に、当事者意識に立つことが難しいということである。
 
 二酸化炭素の排出量が少ない100カ国は、総排出量に占める割合が3%。一方で、排出量の多い上位10カ国だけで約70%を占めている。日本もその一つで、二酸化炭素の排出量は世界5位だ。
 
 こうした現状は「気候正義」と呼ばれる問題を突きつけている。つまり、先進国や現在世代が享受してきた経済発展や豊かさの“しわ寄せ”を、途上国や将来の世代に押しつけている。こうした「不公正さ」をどう是正していけるか――。
 
 気候危機に“無関係な国”“無関係な人”などない。先進国、途上国を問わず、国、企業、個人が一致団結し、全員が“危機の当事者”として、今この瞬間から行動を起こしていくことが求められている。
 

◀◀学会の取り組み▶▶

 1960年代から70年代にかけて、経済発展が物質的な豊かさをもたらす一方、地球環境は悪化が進んだ。先進国では公害が社会問題化したが、途上国では貧困が深刻なままだった。
 
 そうした中で池田先生は、78年に“環境問題は全人類的課題”として「環境国連」の創設を提唱。その後も、国連に「環境安全保障理事会」の創設(91年)、「環境・開発国連」の設置(92年)など、一貫して地球環境問題への提言を重ねていった。
 
 92年には、ブラジル・リオデジャネイロで開かれた「国連環境開発会議」(地球サミット)の公式関連行事として、SGIが「環境と開発展」を同国内で開催し、意識啓発運動を活発に展開した。
 
 また同年、アマゾンの生態系保護を目的として、ブラジルに「アマゾン自然環境研究センター」(現・アマゾン創価研究所)が設立。植樹運動、環境教育、希少種の保護への貢献などを実施し、地域でも大きな信頼を集めていった。

雄大なアマゾン川に面して立つブラジルのアマゾン創価研究所(マナウス市郊外)。昨年、アマゾン地域の民間団体として初めて、地球憲章インタナショナルとの提携協定を結んだ

雄大なアマゾン川に面して立つブラジルのアマゾン創価研究所(マナウス市郊外)。昨年、アマゾン地域の民間団体として初めて、地球憲章インタナショナルとの提携協定を結んだ

 
日本と世界で環境展

 2002年には、池田先生が「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(環境開発サミット)に寄せて環境提言を発表。それをもとに、SGIが、国連による「持続可能な開発のための教育の10年」の制定を提唱した。その後、市民の共通の声として日本政府が提案し、同年12月の国連総会において満場一致で採択される。
 
 それを支援するため、同年から「変革の種子」展を27カ国・地域で、10年からは「希望の種子」展を40カ国・地域で開催。国内でも06年から「21世紀環境展」を、11年から「わたしと地球の環境展」を多くの都市で巡回展示し、関連する問題の意識啓発に尽力した。
 
 先生は、12年の「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)にも環境提言を発表。その理念を基調に、SGIと地球憲章インタナショナルが共同制作した「希望と行動の種子」展を21年から国内外で開催し、現在、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が主導している「持続可能な開発のための教育――SDGs実現に向けて」(ESD for 2030)を後押ししている。

ベネズエラで開催された「希望と行動の種子」展(昨年9月、首都カラカスの科学博物館で)  

ベネズエラで開催された「希望と行動の種子」展(昨年9月、首都カラカスの科学博物館で)  

 
国際会議に市民の声

 学会・SGIは、気候変動に関する国際会議や行事に、市民社会の一員として積極的に参加している。
 近年では、19年9月に国連本部で開かれた「若者気候サミット」にSGIの代表が出席。
 
 「国連気候変動枠組み条約」の締約国会議である「COP」にも参加し、関連行事の開催や、行事での登壇、意見の提出などを行っている。
 
 さらにSGIは、同条約の「宗教NGO連絡委員会」や、ニューヨークの宗教NGO委員会気候変動小委員会などのグループにも参加。国際社会の議論に市民の声、信仰者の声を届ける努力を続けている。
 

“草の根”で意識啓発

 学会青年部は20年3月から、気候変動対策を語り広げる運動「マイ・チャレンジ10」を開始。また、動画「『気候危機』を乗り越えゆくための挑戦」等を通し、温室効果ガス削減へ向けた草の根レベルでの対策、意識啓発に取り組んでいる。
 
 21年からは、創価学会平和委員会が中心となり、未来部・青年部世代を主な対象としたセミナーや講演会、映画上映会「SDGsオンラインシネマシリーズ」等を実施している。
 
 こうした講演会や上映会での学びを行動につなげることを目指し、各回の開催後には参加者の「マイアクション」を募り、紹介するなどの工夫も。これまで多くの行動事例が生まれた。
 
 現在では、イギリス、イタリア、インドなどの各国組織も同様の運動を展開しており、SDGs達成へ向けた行動の連帯が大きく広がっている。
 

◀◀池田先生の言葉から▶▶

 現代社会に蔓延しつつある、物質的価値を最優先する風潮を見直すための視座を提示し、一人一人の生き方をより良き方向へ向け、時代変革の挑戦を後押しすることにこそ、宗教が果たすべき使命と責任があると、私は思います。
 (環境学者のヴァイツゼッカー博士との対談集『地球革命への挑戦――人間と環境を語る』〈2014年刊行〉から)
 
 事態がいかに難しくとも、そこであきらめては何も進まない。「地球環境問題」には、さまざまに複雑な要因が内包されていますが、人間が生み出したものである以上、人間の手で解決できないはずはありません。そのためには、国際的な世論の結集と連帯が不可欠です。
 (ローマクラブのホフライトネル博士との対談集『見つめあう西と東――人間革命と地球革命』〈2005年刊行〉から)
 

◀◀地球温暖化対策10選▶▶

〈今すぐ家庭で〉
①エアコンは適正温度(冷房は28度、暖房は20度)に設定し、こまめにフィルター掃除を行う
 
②冷蔵庫の中身を整理し、物を詰め込みすぎない
 
③食品ロスを減らし、ゴミはしっかり分別する
 
④できるだけまとめて洗濯する
 
〈省エネ化促進〉
⑤電気の契約を再生可能エネルギー由来のものに切り替える
 
⑥住宅リフォームの際には省エネ改修工事を行う(政府は支援のキャンペーンを実施中)
 
⑦電化製品の買い替え時は省エネ効果の高い製品を選ぶ
 
〈お出かけ時に〉
⑧常にマイバッグを持参
 
⑨できるだけ電車・バスなどの公共交通機関を利用し、近くに行くときは徒歩や自転車で移動
 
⑩駐停車時はアイドリングストップを心がける