誓願 231~232ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年1月19日

 九月十八、十九の両日には、第二回世界平和文化祭が、「平和のルネサンス」をテーマに掲げ、埼玉県所沢市の西武ライオンズ球場で盛大に開催された。
 前年の六月、アメリカのシカゴ市郊外のローズモント・ホライゾンで第一回世界平和文化祭が行われてから一年三カ月、今回は、世界三十七カ国三地域のSGI代表三千人を含め、四万人の若人が集い、屋外球場を使ってのナイターでの開催である。
 山本伸一は、十九日の文化祭に出席した。
 各界の来賓一万二千人をはじめ、三万人の観客を迎えて、光と音を駆使した、世界平和の讃歌と誓いの祭典となった。
 この日は、朝から雨が、時に強く、時に弱く、断続的に降っていた。
 開会一時間前の午後四時半過ぎ、雨に煙るグラウンドにスーツ姿の伸一が下り立った。人文字の出演者ら青年たちに、心からお礼を言いたかったのである。
 彼は、降りしきる雨のなか、傘も差さずに、グラウンドを回り始めた。スタンドは大歓声に包まれた。皆に向かって手を振り、何度か立ち止まっては、深く頭を下げた。
 役員の青年が差し出したマイクを手にすると、伸一は呼びかけた。
 「皆さん! 本当にご苦労様。風邪をひかないよう、工夫してくださいね。……本当にありがとう!」
 そこには、なんの気負いもなかった。父親が愛するわが子を気遣って、語りかけるような言葉であった。
 世界平和文化祭の成功は、当然、大事である。皆、何カ月も前から、梅雨の日も、炎暑の夏も、この日をめざして練習に励んできたのだ。なんとしても成功してほしいと、真剣に祈りもしてきた。
 しかし、彼にとっては、それよりも、青年たちが風邪をひいたり、決して事故などを起こしたりしないことの方が、はるかに大事であった。世界平和の旗手となる、創価の宝の、大切な後継の青年たちであるからだ。