誓願 223~225ページ 【小説「新・人間革命」】第30巻〈下〉2024年1月13日

 創価学会の平和運動は、仏法の生命尊厳の思想を人びとの胸中に打ち立て、ユネスコ憲章に謳われているように、「人の心の中に平和のとりで」をつくることを基調としている。
 法華経の精髄たる日蓮仏法には、人間に内在する「仏」の生命を顕現し、悪の心を滅して善の心を生じ、自他共に幸福を確立していく方途が示されている。学会は、日々、その教えを実践し、一人ひとりが人間革命に励み、苦悩の宿命を転換するとともに、社会建設の主体者となって、はつらつと生命尊厳の哲理の連帯を広げてきた。
 平和とは、単に戦争のない状態をいうのではない。核の脅威や飢餓、貧困、差別など、“地球社会の歪み”の解消への取り組みが進み、人びとが互いの尊厳を輝かせつつ、生きる喜びと幸せを実感できてこそ、真の平和である。創価学会員には、まさに、その歓喜と幸福の人生の実像がある。
 次いで、あいさつに立った関西総合長の十和田光一は、この青年平和文化祭を新たな出発点として、さらに、「核兵器のない世界」「悲惨な戦争のない世界」をめざし、平和に貢献していく決意を披瀝した。そして、デクエヤル国連事務総長から、この文化祭の開催にあたって届けられた、SGI会長の伸一へのメッセージを紹介していった。
 「創価学会のような日本のNGO(非政府組織)が、世界平和と軍縮の推進に寄与されていることを知り、我々は大いに勇気づけられております」「私は軍拡競争の危険性を世界の諸国民と諸政府に、より広く知らしめんとするSGI会長並びに創価学会のご尽力に深く感謝するものであります」
 国連でも、国家レベルの論議は、ともすれば国益の確保などが優先され、軍縮や核兵器廃絶への前向きな交渉が進まない現実がある。その壁を破るために、不戦を願う民衆の連帯を広げ、時代変革の波を力強く起こす機軸となるのが、NGOの存在といってよい。
 創価学会は、前年の一九八一年(昭和五十六年)に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国連広報局のNGOとして登録されている。また、SGI結成から満七年にあたる、この八二年(同五十七年)の一月二十六日、創価学会平和委員会が設置され、いよいよ本格的な平和運動の展開に着手したのである。
 仏法は、人間を守るためのものだ。ゆえに平和を守ることは、仏法者の使命である。
 そのあと、五千五百人の来賓を代表して、長崎市の本島等市長と広島市の荒木武市長があいさつした。
 本島市長は、一九五七年(昭和三十二年)、戸田城聖第二代会長の「原水爆禁止宣言」以来、学会が被爆証言集の出版や核廃絶の署名など、長年にわたり、平和の建設に取り組んできたことを高く評価した。