名字の言 能登半島地震――温かな声を惜しまず2024年1月4日

 東北の地で東日本大震災を経験した際、「人の声」のありがたさが身に染みた。発災直後から時折つながるメールで各地の友から“真心の声”が届いた。「大丈夫か? 何でも遠慮しないで言ってくれ。全力で応援する」など▼あの日は月のない雪の夜だった。停電で周囲が見えづらい中、避難所の皆が“励ましの声”をかけ合った。胸中に響く“師の声”も支えだった。こうした「声」がなかったら、暗闇の不安な日々を耐え切れただろうか▼その大震災以来となる大津波警報が発表され、最大震度7を観測した「令和6年能登半島地震」が1日夕方に起きた。甚大な被害状況、懸命に続けられる救助・救援活動の模様をニュースで見聞するほどに、より強く同苦の心を重ねている▼地震の後、テレビ各局が現地の様子を中継したが、刻々と空が暗くなっていく画面に、胸が張り裂ける思いだった。こうした時、耳や心に届く“温かい声”が、どれほど被災者を支えていたかと思うと、私たちの祈りの音声にも一層真剣さがこもっていく▼人が発した声には、その人の心が宿る。そして聞く側は、届いた声に相手の心を知るものである。声は心――苦難と戦う人々が再起を遂げるその日まで、慈悲の声を惜しむまい。(城)