〈教育〉 子どもの「好き」や「得意」の伸ばし方2023年12月28日

  • 親の価値観や物差しで判断しない

ディリーゴ英語教室代表 廣津留真理さん

 子どものテスト結果が国語は100点満点、算数が30点だった……。親の目が行くのは、100点ではなく、30点の方かもしれません。「私なら苦手な算数ではなく、国語をとことん伸ばす」と話すのは、ディリーゴ英語教室代表の廣津留真理さんです。子どもの「好き」や「得意」を巡って親が心がけたいポイントについて聞きました。
 

■人間関係を豊かにしていく

 子どもたちに英語を教えて30年になります。たくさんのお子さんや親御さんとの関わりを通じて、子どもの「得意」を伸ばす大切さを実感してきました。親御さんが「これができていないから、もっと伸ばさなきゃいけない」と子どもの苦手に目を向けるよりも、「すごいね! ここをどんどん伸ばしていこう」と伝えるご家庭の方が、明らかに子どもの英語力が伸びるからです。
 
 かつては、「苦手を克服することで根性が育つ」といわれていました。けれど、今は苦手なことは、それを得意とする人にカバーしてもらえばいいという考えに変わってきています。
 「〇〇さん、私はこれ不得意だからお願い」「いいよ、任せて」とやりとりすることで、人間関係も広がります。そもそも、会社や組織というのは、それぞれの能力を生かして、互いに助け合うことで成り立っています。ハーバード大学の研究チームによる約80年に及ぶ調査では、「幸福な人生を送る鍵は、富や名声ではなく『良い人間関係』にある」ということも分かっています。
 
 長いようで短い人生、苦手なことに時間とストレスをかけるよりも、自分の「好き」と「得意」を伸ばし、人間関係を豊かにしていくことが大切だと思います。
 

■目の前の子どもをよく見る

 その上で気を付けたいのは、親の考える「好き」と「得意」は、子どもの考えるそれとは、違うということです。なぜなら、親はあくまで“職業”として将来に通じるものを想定したり、期待したりするからです。ゲームやサッカーを追求されても……と考えてしまうのは、このためです。
 
 私が翻訳した本に“子どもの時の好きが職業として生きるのは、その周辺領域である”とありました。子どもが夢中になっているものがあれば、“将来働く時に生かされるかもしれない”ぐらいに構えて、子どもの思いを尊重してあげましょう。

 また、「好き」と「得意」は、必ずしも一致するわけではないということも頭に入れておいてください。私自身、英語に好きも嫌いもありませんでしたが、得意だったから、今の職業になっています。
 
 「うちの子には、好きなものも、得意なこともない」と悩む方もいるでしょう。子どもには、興味や関心を向けるものが必ずあります。それを知りたいのであれば、「目の前の子どもをよく見る」に尽きます。何をしている時に楽しそうにしているのか、生き生きしているのか、じっくり観察してみましょう。
 
 今回は親御さんに心がけてほしいポイントを二つ紹介します。子どもたちは、可能性の塊です。親の価値観や物差しで判断せず、子どもが自分らしく輝けるよう、手助けしてもらえたらと思います。
 
 

〈ポイント〉

●周りと比べない

 子どもを伸ばす親に共通するのは、「自分の子には引き出されるべき才能がある」と信じている点です。たとえ口に出さなくても、そう信じているからこそ、子どもにかける言葉はポジティブなものになります。テストの結果が70点だったら、「70点もできたの? すごい!」と伝えます。
 
 反対に、「うちの子はできない」はNGワード。「好き」と「得意」を伸ばす環境づくりの大前提は、周りと比べない、親が子どもにダメ出しをしない、否定文で語らないことです。
 
 子どもが何か失敗した時は、笑い飛ばしてあげられる心の余裕と明るさも大切です。
 

●優先順位をつける

 時間には限りがあります。全てに満遍なく時間を使っていると、得意を伸ばす時間が短くなってしまいます。
 
 私の娘は小学生の頃からバイオリンに夢中で、少しでも練習する時間をつくるために、宿題は学校で全部終わらせていました。

 子ども自身が何を優先して、どれぐらい行いたいのかを聞いて、親子で一緒に考えることから始めてみてはいかがでしょうか。

廣津留さん著書『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』(講談社)

廣津留さん著書『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』(講談社)

 
 ひろつる・まり ディリーゴ英語教室代表。一人娘のすみれさんは、大分の公立高校から塾なし留学経験なしでハーバード大学に現役合格し、首席卒業。娘への家庭内での学習指導経験を踏まえて編み出した独自の「ひろつるメソッド」を確立。これまで1万人以上を指導してきた。『成功する家庭教育 最強の教科書』(講談社)他、著書多数。