〈創価大学駅伝部2023-2024 VOL.3〉 箱根駅伝直前リポート 覚悟の走りで全てを出し切る2023年12月15日

 第100回となる箱根駅伝が明年1月2、3日に開催される。4年連続のシード校として7度目の箱根路に挑む創価大学駅伝部。節目の大会で総合3位以上を目指すチームの“現在地”を取材した。

澄み渡る青空の下、山森選手を先頭に、吉田響選手(右端)らが真剣な表情で練習に取り組む(今月、東京・八王子市の創価大学で)

澄み渡る青空の下、山森選手を先頭に、吉田響選手(右端)らが真剣な表情で練習に取り組む(今月、東京・八王子市の創価大学で)

 今月6日の夜、練習を終えた創大駅伝部は白馬寮の食堂でミーティングを行った。
 
 5日後に迫った箱根駅伝のチームエントリーに先立ち、部内で登録メンバー16人が発表されたのである(本紙12日付1面で既報)。
 
 選ばれたのは4年生3人、3年生4人、2年生4人、1年生5人。上級生より下級生が多いことが、現在のチームの勢いを物語っている。
 
 榎木和貴監督の指導の下、創大を強豪校へと押し上げた主力が抜け、“エース不在”となった今シーズン。「ゼロからの挑戦」を掲げたチームには“次は自分がエースに”という選手が増え、「例年以上に皆で切磋琢磨しながら、一人一人が主体的に練習に取り組んできました」と志村健太主将(4年)は振り返る。
 
 その中で、特に重点を置いたのが「スピード強化」だ。
 
 昨今の大学駅伝は高速化が目覚ましく、上位校と勝負するためには「強さ」と共に「速さ」が欠かせない。
 
 6月の全日本大学駅伝・関東地区選考会がないアドバンテージを生かし、チームは春のトラックシーズンから5000メートルを強化。これまで例年の5、6人をはるかに上回る14人が13分台を達成した。
 
 「出雲駅伝ではその成果が表れ、自信を深めました。しかし全日本では、良かった区間と、思うように走れなかった区間の差が大きく出てしまいました。この課題を克服しなければ、箱根では勝てません。どんな条件でも、誰が相手でも、常に100%の力を出すために何をしなければいけないのか。それをチームとして考え、練習に落とし込んで強化を図っています」(榎木監督)

各選手が設定した目標タイムを刻みながら、錦秋のキャンパスを駆ける。チームでは、ここまで1万メートル28分台を13人、ハーフマラソン63分台以内を13人がクリア。過去最高の選手層で箱根路に旋風を巻き起こす

各選手が設定した目標タイムを刻みながら、錦秋のキャンパスを駆ける。チームでは、ここまで1万メートル28分台を13人、ハーフマラソン63分台以内を13人がクリア。過去最高の選手層で箱根路に旋風を巻き起こす

 11月の全日本以降、箱根のエントリーメンバー争いは一段と激しさを増していった。
 
 意地を見せたのは、最後の大会となる4年生だ。
 
 出雲で区間賞を獲得した山森龍暁選手に負けじと、2年連続で箱根を経験した桑田大輔選手が奮起。けがで苦しんだ悔しさをバネに、先月26日の「日本体育大学長距離競技会」の1万メートルで28分11秒08の創大日本人歴代最高記録を出した。「自分がエースとの自覚で、本番にピークを合わせていきます」と力強い。上杉祥大選手も今月2日の競技会で自己ベストを更新した。
 
 3年生も、上級生の自覚を胸にチームを引っ張る。
 
 今春、東海大学から編入した吉田響選手はブランクを乗り越え、チームに順応。「与えられたメニューだけではなく、自主練習でも周囲が驚くほど自分を追い込む。“ここまでやらなければ強くはなれない”という範を示してくれる存在」と榎木監督も厚い信頼を寄せる。
 
 出雲と全日本で見せた激走の勢いそのままに、「5区の区間賞・区間新で“山の神”になり、支えてくれた人たちに恩返しします」と意気込む吉田響選手。そんな彼に「良い刺激をもらっています」と語るのは、吉田凌選手だ。
 
 2月のケニア合宿を経て、肉体的・精神的に大きな成長を遂げると、夏には月間走行距離で目標の900キロを上回る1000キロを走破。“ダブル吉田”でチームをリードしてきた。
 
 今季は二つの駅伝でアンカーとして好走。全日本ではチームをシード圏外から圏内に押し上げた。「どんな展開でも自分の走りを貫いて結果を出します」と闘志を燃やす。
 
 同じく3年生には、ハーフマラソンで創大日本人記録を持つ小暮栄輝選手、初エントリーの濱口直人選手もいる。
 
 「エース」を目指す意識が高い2年生は、石丸惇那、山下蓮、野沢悠真、竹田康之助の各選手が5000メートル、1万メートルなどで自己新をマーク。入部以来、“三大駅伝皆勤賞”の石丸選手は「どの区間を任されても“ゲームチェンジャー”の役割を果たしてみせます」と決意を口にする。
 
 そして、今季のチームの象徴ともいえる1年生は、これまで小池莉希、織橋巧、スティーブン・ムチーニの3選手が三大駅伝で力走。箱根にはどの学年よりも多い5人がエントリーされた。
 
 3000メートル障害の高校チャンピオン・齊藤大空選手と共に初選出となった川上翔太選手は「自分たちも“強い1年生”の走りを見せたい」と強気の姿勢だ。
 
 マネジャー、スタッフのサポートにも、一段と熱がこもる。2年生から主務としてチームをまとめてきた吉田正城さん(4年)は「応援してくださる方々への感謝を結果で示せるよう、選手を全力で支えます」と笑顔で語った。

吉田主務(左端)が練習内容を確認する

吉田主務(左端)が練習内容を確認する

 箱根駅伝は往路・復路合わせて10区間。本番を走れるのはわずか10人しかいない。
 
 主将の志村選手、副主将の石井大揮選手、寮長の森下治選手をはじめ、青春の全てを懸けて夢舞台を目指した11人の4年生。
 
 悔し涙をのんだ多くの同期・先輩たちの思いを背負い、16人のエントリーメンバーは今、最終合宿で「区間配置のイメージが毎日変わるほど」(榎木監督)、熾烈な出走枠争いを展開している。
 
 王者・駒澤の圧倒的な強さが光る今シーズン。100回目の記念大会で新たな歴史の幕を開くのは、どの大学か。
 
 勝負の「1・2」まであと18日。榎木監督は力を込める。
 
 「自分たちがやってきたことを100%出し切れば、たとえ負ける区間があったとしても、“最小限の負け”で済むと思います。自分たちのミスをなくす準備をして臨めば、勝機は必ずあります。攻めの走りで、覚悟をもって総合3位以上の目標にチャレンジしていきます」

  
  
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https://www.seikyoonline.com/summarize/hakone_sp.html

選手と積極的にコミュニケーションを取る久保田満コーチ(中央)

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練習コースの距離を測り、目印のコーンを設置

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給水をサポートするマネジャー

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選手のタイムを計測

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