〈座談会〉 広宣流布大誓堂完成10周年 世界広布への飛躍の10年を振り返る2023年9月21日

  • 参加者:原田教学部長、西方青年部長、林池田華陽会委員長

原田教学部長を囲んで。大誓堂完成からの10年の歩みを確認し合った

原田教学部長を囲んで。大誓堂完成からの10年の歩みを確認し合った

 2013年に「広宣流布大誓堂」が完成し、「世界広布新時代」が幕を開けた。翌14年に「創価学会会則」の教義条項が改正され、15年に創価学会「勤行要典」、17年に「創価学会会憲」が制定。21年に『日蓮大聖人御書全集 新版』が刊行されるなど、これまで学会が世界宗教として飛翔しゆくための教学面の整備がなされてきた。本年11月は大誓堂完成から10周年。ここでは、原田教学部長と共に10年の歩みを振り返る。

大聖人の誓願

 〈西方〉大誓堂完成を目前に控えた2013年10月、池田先生は「日本中、世界中から、偉大な地涌の菩薩たちが続々と集い来り、いよいよ広宣流布の大誓願に新出発しゆく時が来ました」と宣言されました。
  
 〈原田〉その夏には「深く大きく境涯を開き、目の覚めるような自分自身と創価学会の発迹顕本を頼む」と指導されました。そして、大誓堂の落慶記念勤行会のメッセージで、こう語られました。
 「『大願』とは『法華弘通』つまり『広宣流布の大願』にほかなりません」と確認され、「『広宣流布の大願』と『仏界の生命』とは一体です。だからこそ――この誓いに生き抜く時、人は最も尊く、最も強く、最も大きくなれる。この誓いを貫く時、仏の勇気、仏の智慧、仏の慈悲が限りなく湧き出でてくる」と。
  
 〈林〉「大願」や「誓願」は、大誓堂の本質を示していると感じます。
  
 〈原田〉その通りです。大誓堂の1階にある「広宣流布 誓願の碑」には、「日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外・未来までもながるべし」(全329・新261)との報恩抄の一節が刻まれています。世界広布に対する大聖人の「大確信」であり「誓願」です。世界広布新時代へ、この大聖人の誓願をわが誓願として、全世界の友が自身と学会の発迹顕本へと出発したのが2013年でした。
 10年を教学的な視点で振り返ると、日本では2013年から毎年のように「教学部任用試験」を実施し、教学根本の人材育成の流れをつくりました。16年からは「仏法入門」との副題が付き、会友の方にも一段と開かれた形となり、学会が実践する仏法への理解をさらに広げる契機になりました。
  

西方青年部長

西方青年部長

 〈西方〉受験した私の友人も、仏法と学会の哲理に、深く共感してくれました。
  
 〈原田〉素晴らしいですね! この流れは海外においても同様です。任用試験の内容を整備して15年に発刊した『教学入門』は各国で翻訳され、同水準の試験が実施されるようになりました。
  
 〈林〉世界同時進行の教学運動なのですね。
  
 〈原田〉その真価が発揮されたのは、新型コロナウイルスの感染拡大の渦中だったと思います。多くの国で従来の学会活動が思うようにできなくても、オンラインで共に御書を拝し、池田先生のご指導を学び合い、“誰も置き去りにしない”励ましの絆を広げました。
  
 〈西方〉先日、44カ国・地域の青年リーダーが集い、4年ぶりにSGI青年研修会が開かれました。コロナ禍でも工夫して活動する素晴らしい様子が、次々と報告されました。
  
 〈林〉マレーシアではいち早くオンラインを活動に取り入れるとともに、御書講義や『法華経の智慧』の研さんの短編動画を作成して、離れていても学び合える工夫をしたそうです。今は毎朝、小説『新・人間革命』を青年部・未来部のリーダーが朗読し、感想を述べる様子をオンラインで配信。約3500人が、師匠と共に一日をスタートしていると伺いました。
  
 〈原田〉今の時代だからできる、団結と研さんの姿ですね。学会は、池田先生の指導のもと、御書根本だからこそ、思わぬ苦難に遭っても信仰は揺るがず、広布の前進が止まることはなかったのです。
  
  

魂の独立から30年

 〈西方〉世界広布と教学という点では、この10年の中で、「世界宗教として、新たな段階へと飛翔する時にあたり」「学会の宗教的独自性をより明確にし、世界広布新時代にふさわしいものとする」ため、会則の教義条項改正が行われました。勤行要典や会憲の制定もありました。これらの要点は何でしょうか。
  
 〈原田〉まずこれらは、池田先生が長年、とりわけ第2次宗門事件の「魂の独立」以降、世界広宣流布のために展開された教学を、具体的な形にしたものと言えます。ポイントは大きく二つあります。
 一つは、御書に基づいて、三大秘法本門の本尊本門の戒壇本門の題目)の解釈を明らかにしたことです。
 三大秘法について、日蓮正宗では、「本門の本尊」を「弘安2年の御本尊」、「本門の題目」はその本尊に唱える題目であり、本尊所住の処が「本門の戒壇」となると説明しています。
  
 〈西方〉学会も、特に宗門を外護していた時代は、この教義解釈を尊重していました。
  

SGI青年研修会で行われた「世界青年交流交歓会」。師のもとに集い、誓いを新たにした

SGI青年研修会で行われた「世界青年交流交歓会」。師のもとに集い、誓いを新たにした

 〈原田〉日蓮正宗から魂の独立を果たし、歳月を経て、会則の教義条項の改正の際、三大秘法について次のように説明しています。「本門の本尊」を「末法の衆生のために日蓮大聖人御自身が御図顕された十界の文字曼荼羅と、それを書写した本尊」とし、「本門の題目」とは「本門の本尊」に唱える南無妙法蓮華経の題目で、「本門の戒壇」とは「本門の本尊」に題目を唱える場を指します、と。「本門の本尊」は、「弘安2年の御本尊」も含みますが、それのみを「本門の本尊」とするものではありません。
 先のような日蓮正宗の教義は、江戸時代の日寛上人の教学に基づいています。その教学には、大聖人の正義を明らかにする“普遍性のある部分”と、当時の疲弊した宗派を護るという要請に応えて、唯一正当性を強調する“時代的な制約のある部分”があります。その両者を立て分ける必要があるのです。
  
 〈林〉御書を通して大聖人の本義を追求することが大切ということでしょうか。
  
 〈原田〉その通りです。「本門の本尊」を確立された大聖人は、多くの御本尊を御図顕されましたが、特定の御本尊のみを「本門の本尊」にするとの仰せはありません。日興上人は、大聖人が御図顕された御本尊を等しく尊重されています(新2180・全1606)。教義条項の改正は、御書に照らし、大聖人の仏法の本義に立ち返って整理したものであり、私たちの実践は何も変わりません。
  
 〈西方〉魂の独立から30年以上、学会員一人一人が信心の確信をつかみ、幸福を開いてきました。日本でも海外でも、各人が受持した御本尊を根本に「本門の本尊」の確たる実証を示してきました。
  
 〈原田〉そうです。二つ目のポイントは、釈尊から始まる「仏教の人間主義の系譜」の中に学会があることを明確にしたことです。
  

林池田華陽会委員長

林池田華陽会委員長

 〈林〉『教学入門』「仏教の人間主義の系譜」にこう記されています。
 「創価学会は、釈尊に始まり、インドの竜樹・天親(世親)らの菩薩とたたえられた論師、中国の天台大師(智顗)・妙楽大師(湛然)、日本の伝教大師(最澄)、日蓮大聖人へと発展的に継承された仏教を信奉する教団です。釈尊以来の仏教の生命尊厳・万人尊敬という人間主義の正統な系譜に連なっています。創価学会は、大乗経典のなかでも法華経に依拠し、日蓮大聖人が身をもって示された法華経の根本精神に則った信仰実践と活動を現代に展開しています」
  
 〈原田〉世界において「創価学会とはどのような宗教団体か」を理解してもらう上でも、仏教の創始者である釈尊との関連性を明確にすることは重要です。
 簡潔に言えば、釈尊、法華経、大聖人、そして学会へと流れる仏法の精神を、いかに伝えるのか。釈尊の教えの真髄である法華経に脈打つ「生命尊厳」「万人尊敬」の思想を広げる宗教であり、自身の生命を変革する「人間革命の宗教」です。そして、異なる文化的、宗教的背景を持った人と語り合い、協調して世界平和へ進んでいく宗教です。こうした日蓮仏法の本質を、誰もが理解しやすい言葉で展開し、宗教間対話を通して示してこられたのが、池田先生なのです。
  
  

人類にとって重大な分岐点

 〈林〉教学部長が海外の御書講義でメンバーと接する中、日蓮仏法の偉大さを感じるのはどんな点でしょうか。
  
 〈原田〉どの国でも青年が強く仏法を求めています。一人の人間に尊厳性があり、誰もが主人公であるとの考え方が、青年を引きつけているのです。単なる理論ではなく、現実生活で悩みに立ち向かい、乗り越える人間の強さを、皆が証明しています。
  
 〈西方〉日本でも、青年が自らの言葉で仏法の魅力を語ろうと決意し、挑戦しています。池田先生は、学会創立100周年となる2030年までの10年は、「人類にとって重大な分岐点」と言われました。青年部へ期待することは何でしょうか。
  
 〈原田〉若い今、そして世界が揺れ動く今だからこそ、生命尊厳の仏法を血肉にしてほしい。昨年、池田先生が「大白蓮華」誌上で御義口伝の要文講義を開始されましたが、それは学生部への御義口伝講義60周年を記念してのものでした。
  
 〈林〉はい。1962年8月31日、先生が学生部に御義口伝講義を開始された当時は、東西冷戦期の真っただ中。10月には、全面核戦争が危ぶまれたキューバ危機が発生し、人類は分断と核の脅威にさらされていました。
  

原田教学部長

原田教学部長

 〈原田〉そうです。明日の世界がどうなるか分からない、そんな激動の時に、先生は青年に対し、御義口伝を通して仏法の生命論を講義されたのです。
  
 〈西方〉今、気候変動のほか、コロナ禍、ウクライナ危機と、人類は再び、分断や紛争の脅威にさいなまれています。
  
 〈原田〉昨年11月の講義初回で池田先生は、御義口伝を学ぶ意義について「民衆仏法」「師弟の宗教」「生命尊厳の思想」という三つの柱を示されました。「地球の平和のために『生命尊厳の宗教』『人間主義の仏法』を、『御義口伝』の尽きせぬ智慧から学び、より一層明確にしていきたい」と。
 人類が危機に直面する今、世界の未来は、青年世代の熱と力に託されています。無限の希望を生み出す日蓮仏法の、生命尊厳の哲理を抱き締めて、平和を切り開く主役として、生き生きと使命を果たしてほしいと思います。