共に核兵器のない世界へ――カザフスタンでの中央アジア地域会議から2023年9月7日

「核兵器の人道的影響と中央アジア非核兵器地帯」地域会議の参加者が記念のカメラに

「核兵器の人道的影響と中央アジア非核兵器地帯」地域会議の参加者が記念のカメラに

 「核兵器の人道的影響と中央アジア非核兵器地帯」地域会議が8月29日、カザフスタン共和国の首都アスタナで開催され、中央アジアのカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの政府代表らが参加した。ここでは、登壇者の講演(要旨)を掲載する。

◆カザフスタン外務省 カイラト・ウマロフ第一外務副大臣

 核軍縮の進展の欠如は将来の見通しを曇らせ、不安をあおっています。私たちは今、“非常に危険な10年”に突入しています。わが国をはじめ、非核保有国は核軍縮・不拡散を推進し、その妨げとなるような行為に対抗すべく、共に尽力していくべきです。

 カザフスタンは、核実験の悲惨な影響を肌で感じています。私たちの国土は、空中、地上、地下の核爆発を被り、旧セミパラチンスク核実験場周辺に住む150万人の市民の健康に悪影響が及びました。放射能の影響は、実験場閉鎖から30年たった今でも続いています。核実験は、いかなる理由があろうとも、決して再開させてはなりません。

 2006年9月8日、中央アジア非核兵器地帯条約が調印され、核軍縮を断固貫くわが国の姿勢は、さらに勢いを増していきました。非核兵器地帯は世界の核軍縮・不拡散体制の不可欠な一部です。わが国は非核兵器地帯の支持者として、既存の非核兵器地帯の強化に尽くしています。

 19年に核兵器禁止条約を批准したカザフスタンは、発効要件の50カ国の一つとなりました。同条約の第3回締約国会議の議長国として、条約の履行プロセス強化に取り組んでいます。核実験の深刻な影響を受けた国として、同じく被害を受けたキリバスとともに、核禁条約に基づく被害者援助、環境修復、国際協力に関する作業部会の共同議長を務めています。

 核禁条約と非核兵器地帯条約は、その目的が重なっており、紛れもなく明確なつながりがあると私たちは考えています。

◆赤十字国際委員会(ICRC) ビルジャナ・ミロシェビッチ中央アジア地域代表

 核兵器禁止条約は、核実験の被害者への援助や環境修復も規定しており、待ち望まれてきた条約です。核爆発の影響は、独特の性質、規模、持続性があります。世界には、核兵器の製造と実験による何百万人もの犠牲者と生存者がいます。深刻な健康被害、環境汚染は何世代にもわたって続くでしょう。

 核実験の人道的影響は非常に深刻ですが、核戦争による取り返しのつかない壊滅は比較になりません。

 ICRCは、核兵器が使用された場合に壊滅的となる人道・環境への影響、そして使用された場合に十分な人道的対応能力が欠如する状態を深く懸念しています。核兵器が二度と使用されないようにし、禁止し、廃絶することが人道的に不可欠です。

 我々は昨年、核兵器の不使用、禁止および廃絶に関する決議と行動計画を採択しました。そこには、ICRCの全ての構成団体に、各国が効果的なリスク削減措置の実施、核禁条約の普遍的順守を全面的に実施するよう後押しし、またサポートすること等が明記されています。

 ICRCは今日の状況を踏まえ、とりわけ核保有国と核依存国に対して核兵器の使用リスクを低減するための効果的な措置を取るよう求めます。また全ての国に対して、核兵器使用による壊滅的な人道的影響と、人類への継続的な危険性を考慮し、核兵器使用の影響がどのようなものなのかという理解を深めるための措置を取るよう、要請します。

◆核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN) エリザベス・マイナー氏

 2010年のNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議において、核兵器の人道的影響に関する懸念が表明され、人口密集地域での核爆発は、たとえ1回でも多数の死傷者を発生させ、人道的対応を不可能にすること等が示されました。また核兵器使用による人道的影響は非常に深刻で、二度と使用されてはならないことを示し、そのための唯一の方法は核兵器に汚名を着せ、それを禁止し、廃絶することと結論づけました。

 核兵器禁止条約に含まれる核兵器の開発、製造、実験、移転、貯蔵、使用、使用の威嚇、それらの活動への援助等の禁止と、廃絶のための枠組みは、核兵器が壊滅的な人道的影響を及ぼすことへの直接的な対応です。加えて、同条約には、核兵器使用や核実験によって、今もなお苦しむ人々や影響を受けた社会に対応する義務が含まれています。核兵器の人道的影響に対処するための規範的かつ実践的な影響を与える同条約は、核兵器のない世界の実現に向けて、重要なものです。

 核禁条約はまだ若く、初期の段階ですが、私たちは締約国がこれまでに行った作業に勇気をもらっています。同条約に批准していないものの、条約の人道的目標を共有する全ての国に対し、この条約に参加し、自国が行えるあらゆる方法を用いて、批准への努力を進めるよう、奨励します。同条約への加盟によって、中央アジア諸国は核実験に反対する誓約を確かなものにすることができるのです。

◆SGI国連事務所 アナ・イケダ氏

 SGIは、教育と啓発が核軍縮、核廃絶への鍵であり、“この問題に携わる人々の連帯を広げる力となる”との信念の下、草の根レベルで平和・軍縮教育に取り組んできました。同教育は、核兵器やその他の大量破壊兵器に対する規範を強化・促進する上で重要です。そして、私たち市民の意識啓発は核兵器禁止条約の原則と規範をグローバルに支え、維持することにつながるという点から、同条約の目標を達成するために不可欠です。

 平和と軍縮は、正確な情報に基づいた人々の継続的な要求によってのみ達成されるものであり、この目標を達成するための各人の共通の責任を理解し、核兵器の禁止を含む軍縮が国際平和と安全保障のための大切な一歩であるという規範を強化することの重要性を深く認識することによってのみ実現されます。

 その上で、核兵器に関する教育には、核兵器がもたらす壊滅的な人道的結果についての認識を深めることが、必ず含まれなければなりません。

 核兵器の人道的影響について学ぶことは、“この問題が私たちの日常生活からかけ離れた政治的手段に関する抽象的な問題ではない”と理解することにつながるからです。

 非核兵器地帯条約の討議は、軍縮教育を促進するための優れた枠組みです。中央アジア非核兵器地帯条約が皆さまの地域内でも世界的にも、国際安全保障において重要な役割を果たしているという認識を、さらに深めていきたいと思います。