〈Switch――共育のまなざし〉 池田先生の励ましの言葉から2023年1月14日

  • 「勉強」そして「受験」に挑むわが子と共に

 学校では新学期が始まりました。苦手な勉強や宿題に頭を抱えるわが子を前にして、「どう励ましたらいいものか」と思い悩む親御さんも、いるのではないでしょうか。受験生のいるご家庭にとっては今がまさに正念場。自信が持てずに不安に揺れるわが子に対して、かける言葉も見つからず、祈るような思いで日々接している保護者も、少なくないでしょう。今回は『希望対話』の中から、勉強や進路について悩む中学生に対して池田先生が贈った励ましの言葉を、抜粋して紹介します。(編集・構成=大宮将之)
  

今の学びが未来の自分を強くする

未来部は一人ももれなく無限の可能性を持った「使命の人」――池田先生が限りない期待と励ましを寄せる(1991年2月、恩納村の沖縄研修道場で)

未来部は一人ももれなく無限の可能性を持った「使命の人」――池田先生が限りない期待と励ましを寄せる(1991年2月、恩納村の沖縄研修道場で)

挑戦の心こそ

 <そもそも「頭のいい人」とは? 池田先生は語ります>
  
 昔、こんなことを聞いた。「頭のいい人というのは、いっぱい『疑問』をもっている人だ」と。「これもわからない」「あれもわからない」「あれは、どうして、ああなったのだろう?」「なぜ、こうなったのだろう?」……。そんなふうに、自分で「これが、わからない」と、疑問をもち、「不思議だな」と思う人。この人が「頭がいい」という見方です。
  
 <だとすると、「成績がいい」からといって必ずしも「頭がいい」とは言えないようにも思います>
  
 もちろん、成績はよいほうがいいに決まっている。だけれども、「今まで成績が悪かった」から、自分は「頭が悪い」なんて絶対に思ってはいけないということです。それは、自分に対する「冒とく」です。君たちは、だれでも、いっぱいの可能性をしまってある「宝の箱」なのだから。
  
 ◆◇◆ 
  
 そもそも、人間の脳には、「生まれつきの違いはない」と言われています。もちろん、「向き不向き」はあるでしょう。また才能にも個性がある。学校の勉強だけではありません。脳の中には、絵をかく才能もあれば、人を笑わせる才能も入っている。人と仲良しになる才能、整理整頓の才能、人を思いやる才能、手紙を書く才能、スポーツや音楽の才能も当然、入っています。
  
 みんなが、違っていて、みんなが何かの「天才」なんです。それを「使命」という。だれもが自分だけの、自分にしかできない使命をもっている。使命があるから生まれてきたのです。
  
 <親をはじめ周囲の大人たちにこそ、子どもたちの個性を尊重し、無限の可能性を信じ抜く“まなざし”が求められます。「この子は、どうせできない子だ」などと絶対に決めつけてはいけません。
 語らいの中で、アメリカで行われたある実験について、未来部担当者が言及しました。小学生に知能テストを行い、その中から「将来、伸びる可能性のある児童」という名目で選んだリストを担任の先生に渡したそうです。しかし、それは実は、テストの結果とはまったく関係なく、適当に選ばれた子たちでした。数カ月後、同じテストを実施したところ、リストに上がった子は、明らかに他の子に比べて成績が上がっていたというのです。教師が“この子は伸びるんだ”という期待感をもって接すると、子どもたちもまた、その期待の方向に変わっていくそうです。(アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによる実験。「ピグマリオン効果」と呼ばれる)>
  
 「自信」が“脳力”を伸ばすのです。「頭がいいのと悪いのと、どのくらいの差があるか」――私の恩師である戸田城聖先生は、筆をとって、半紙に、サッと一本の線を引いて言われた。「この線の『上』と『下』くらいの差しかないんだよ」と。
  
 この「線一本」の差とは何か。それは、いろいろに言えるだろうが、「さあ、やってみよう!」という挑戦の心とも言える。「さあ、勉強しよう!」という学びの心です。それさえあれば、だれが何と言おうと、「自分は頭がいい」と思っていいのです。
  

努力する“くせ”を

 <「自分は生まれつき頭が悪いから」と言って、努力することを諦めてしまう人もいます。先生は訴えました>
  
 「生まれつき頭がいい」ように見える人も、人の見えないところで努力しているものです。だから結論を言えば、「頭がいい人」というのは、「絶対にあきらめない人」です。わからないことから逃げるんじゃなく、「何としても、わかろう」と「攻めていく人」です。その「強い心」の人が、頭のいい人なんです。
  
 社会に出ても、「わからないこと、苦しいことから逃げない」という心がある人は、必ず勝っていきます。そのために今、みんなは頭脳と心のトレーニングをしているのです。
  
 ◆◇◆ 
  
 勉強は苦しい。苦しいからこそ、「わかった」ときに楽しい。苦しみと喜びは一体です。何でも、そうです。
 こんなことを言うと、ご両親や先生に叱られるかもしれないけれども、一生懸命に努力して、それでも成績が上がらなかったら、それはそれでいいと私は思う。
  
 一時の結果よりも、大事なのは、「努力するくせ」をつけることだからです。勉強でも何でも、全力を出す「くせ」をつけることだからです。もっている力を出しきる「くせ」をつければ、どんどん「力」が出てくるのです。そういう「くせ」をつければ、自分の「使命」も、やがてわかってくる。
  
 自分という「宝の山」の鉱脈を掘り出す「シャベル」――それが「全力で努力する習慣」なんです。「へこたれない」習慣がつけば、時間がかかっても、必ず、「結果」は出ます。結果が出るまで、あきらめないことです。
  

目標に向かって、ノートに向かって

目標に向かって、ノートに向かって

「うさぎ」と「かめ」

 <他の誰かの成績と比べて、一喜一憂してしまうこともあるでしょう。先生は語ります>
  
 他人と比べても、しようがない。「うさぎとかめ」で、「かめ」が勝ったのは、別に相手が「うさぎ」だったからじゃない。「かめ」は、相手がだれであろうと、ただ自分の道を、自分の全力で、休まず、あせらず、一歩一歩、歩んだのです。その人が最後に勝つ。「他人に勝つ」ことよりも、「今までの自分に勝つ」。それでいいのです。
  
 「きのうの自分」よりも、きょうは一歩、前へ進んだ。
 「きょうの自分」よりも、あすは、これだけがんばろう。
 そういう一日一日であってほしいのです。
  
 ◆◇◆ 
  
 本当の「自信」とは、「あいつよりは自分が上だ」というようなものではない。それは「もっと上」が出てきたら崩れてしまう自信です。そうではなく、「自分は、やるだけのことはやったんだ。『これ以上、やれと言われたって、できない』ところまで、やったんだ」という積み重ねから、真の自信は生まれるのです。
  
 ある大学の総長が、こんな言葉を残している。「他人が1回でできることは、自分は3回やれば必ずできる。他人が3回でできることは、自分は10回やればできないことはない」と。これが「自信」ということです。
  

本当のゴールとは

 <受験生は今まさに、目の前の“大きな山”を登ろうと毎日毎日、一歩一歩と、歩みを重ねています。先生は「受験も貴重な『チャンス』なんです」と訴えました>
  
 目標に向かって、これほど集中して勉強できる「時」は、人生のなかでも、あまりない。学校も、家族も、積極的に応援してくれるわけだし、それも上手に使って、思いっきり勉強に挑戦してみたらいい。
  
 自分が「どこまでできるか」――やってもみないで決めつけてはいけない。それは自分という「宝の生命」への“冒とく”です。
  
 「高校受験さえなければ、中学生活もバラ色なのに」と思ってる人もいるかもしれない。しかし、受験がなくても、昔のように「いやでも親の仕事を継がなくてはいけない」という不自由な社会だったら、はたして楽かどうか。
  
 本当は、「楽な時代」「楽な社会」なんか、どこにもないのです。もちろん、今の社会には、いっぱい悪いところはある。しかし、今の日本は、じつは「やる気になれば、何でもできる」時代とも言える。国によっては、勉強する学校もない、先生もいない、食べるために働かなくてはいけない子どもたちも、たくさんいます。他の国の人の目で、みなさんを見れば、どんなにうらやましく見えることか! そういうことも、わからなくちゃいけない。
  
 <受験を前に、さまざまな迷いや葛藤を抱えている未来部員に対して先生は重ねて励ましを送ります>
  
 いつも私は信じている。使命ある諸君が、何があろうと負けるわけがない、と。君たちは、「勝つために生まれてきた」のだから! 夢に向かって、がんばってもらいたい。ご両親とも、よく相談してもらいたい。
  
 ただし、「希望の高校に行けなかったら、私の人生は終わりなんだ。未来も閉ざされたんだ」なんて、絶対に思っちゃいけない。
 
 その高校に入ることが、あなたのゴールではない。幸福になることが、ゴールです。かりに希望の高校に入れなくても、大学で志望校に入ればいい。大学がうまくいかなければ、社会人になるときに、勝てばいい。20代でできなければ、30代で挑戦すればいい。この繰り返しです、人生は。
 
 たとえ遠回りしても、最後に、勝利のテープを切ればいいのです。強くなることです。強い人が幸福の人です。
  

  
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