〈紙上教学研さん 御書根本の大道 池田大作先生の講義に学ぶ〉第25回 食は命2022年11月19日

 今回の「御書根本の大道 池田大作先生の講義に学ぶ」は、沢本農漁光部長が登場。「食は命」のテーマで、『勝利の経典「御書」に学ぶ』第21巻を研さんします。

白米一俵御書

 爾前の経の心々は、心より万法を生ず。譬えば、心は大地のごとし、草木は万法のごとしと申す。法華経はしからず。心すなわち大地、大地則ち草木なり。
 爾前の経々の心は、心のすむは月のごとし、心のきよきは花のごとし。法華経はしからず。月こそ心よ、花こそ心よと申す法門なり。
 これをもってしろしめせ、白米は白米にはあらず、すなわち命なり。
(新2054・全1597)

勇気の指標

 大聖人は、雲で隠れていてもその向こうで輝いている月、寒さに一生懸命に耐え抜き、春に咲こうとする花、そこにも仏を見ているのです。あらゆるもののありのままの姿に、仏界の生命を見るのです。
 私は、この御文を拝するたびに、大聖人の万人の幸福を開かんとする大慈大悲に心打たれます。
 大聖人は、現実の世界で格闘している弟子の一人ひとりに、“あなたこそ仏ですよ”と、讃嘆されているのです。
 ◆◇◆ 
 苦悩に満ちた娑婆世界から遠ざかり、人間離れした特別な存在になることは真の成仏ではないのです。
 「法華経はしからず」です。厳しい現実の苦難に負けることなく、日々の生活に営々と取り組み、最も人間らしく輝く人、それが仏です。
 宿命の荒波に翻弄されているかのように見えても、信心の「志ざし」を燃えたぎらせて、汗まみれになって戦っている姿。そこにこそ尊極なる仏界の生命が現れるのです。
 そして大聖人は、「白米は白米にはあらず・すなはち命なり」(全1597・新2054)と仰せです。
 あなたが供養してくださった白米は、白米ではなく、あなたの命である――と。師匠と共に戦う決意の「志ざし」によって、古の賢人・聖人が命を捧げて仏になったように、あなたの成仏も間違いないと激励されているのです。

雲間から光が差し、黄金の稲穂を照らす。そこには、コンバインに乗り、稲刈りに精を出す男性の姿が(1985年9月、新潟で。池田先生撮影)。先生はつづった。「昔は『新潟米は、まずくて、鳥さえ、またいでいく』と言われたという。それを日本一のコシヒカリ王国にしたのは、冷笑に耐えて、工夫に工夫を重ねた人達の執念だった」

雲間から光が差し、黄金の稲穂を照らす。そこには、コンバインに乗り、稲刈りに精を出す男性の姿が(1985年9月、新潟で。池田先生撮影)。先生はつづった。「昔は『新潟米は、まずくて、鳥さえ、またいでいく』と言われたという。それを日本一のコシヒカリ王国にしたのは、冷笑に耐えて、工夫に工夫を重ねた人達の執念だった」

「地域を照らす灯台」として

沢本英昭 農漁光部長

 幼い頃、夏休みに祖母の家に行くと、畑で取れた夏野菜を振る舞ってくれました。トマトやキュウリ、スイカなど、普段は味わえない新鮮なおいしさをかみ締めた思い出をたどる時、自然と、農漁光部の同志の皆さまへの感謝が湧き上がります。
 「食は命」――。日蓮大聖人は、私たちの命の営みを支える食の重要性を、御書の中で、幾度も教えられています。
 この「白米一俵御書」では、「人は食によって生あり、食を財とす」(新2052・全1596)と仰せです。
 また、「食物三徳御書」では、「食には三つの徳あり。一には命をつぎ、二にはいろをまし、三には力をそう」(新2156・全1598)と御教示になり、生命を維持し、健康を増し、心身の力を盛んにする、という食物の三つの働きを示されています。
 この「食」を守り、いわば命を支えてくださっているのが、農漁光部の同志の皆さんです。
 近年は、台風、豪雨といった自然災害、とりわけ最近はコロナ禍やウクライナ危機による物価高騰の影響など、大変な環境の中で奮闘されています。
 池田先生は、たたえてくださっています。
 「私たちの生命の営みは、農業、そして漁業に携わる方々の尊い労苦と汗のうえに成り立っていることは言うまでもない」
 「その忍耐強く勇敢なる正義の行動に対して、私たちは最敬礼をしなければならない」

汗まみれになって

 その上で今回学ぶ一節には、「月こそ心よ、花こそ心よ」と、“ありのままの姿に仏界の生命をみる”法華経の生命観が説かれています。
 この御文について先生は、「宿命の荒波に翻弄されているかのように見えても、信心の『志ざし』を燃えたぎらせて、汗まみれになって戦っている姿。そこにこそ尊極なる仏界の生命が現れるのです」と講義してくださっています。まさに、農漁光部の友の尊い姿と重なります。
 農業や漁業に携わる方々が、高齢化や過疎化、担い手不足など、さまざまな課題に直面する中で、農漁光部員の奮闘は「地域の灯台」として、周囲を照らしています。
 先日も、部員の体験を収めた2本の番組がSOKAチャンネルVOD(ビデオ・オン・デマンド)に追加され、反響を呼んでいます。
 一人は山形県の女性部員の体験です。化粧品会社に勤め、農業とは無縁の人生を歩んできましたが、代々続くリンゴ農家の夫と結婚。一変した環境の中で、義母の死や自身の病に直面した時、支えてくれたのは、結婚を機に入会した夫の愛情と、創価家族の温かな励ましでした。
 徐々に健康を取り戻し、感謝の心でリンゴと向き合う彼女。“農業の一番の敵は、環境ではなく、自分を信じることができない弱い心”と力を込め、物価高騰など、昨今の状況下でも、今年は例年以上の収穫の見込みで、見事な実証を示されています。

必ずこの地で復活を

 もう一本は、ヒノキ素材(丸太)生産量日本一の岡山県で、林業と農業に携わる男子部員の体験です。父が経営する会社が倒産し、追い打ちをかけるように、豪雨災害で自宅が全壊。最も苦しんでいた時に駆け付け、励まし続けてくれたのが、地域の学会の同志でした。
 “必ずこの地で復活を”と誓い、信心根本に宿命を打開。現在も働く製材所への就職を果たしました。今では上司から深い信頼を寄せられ、後進の育成にも尽力。恩返しの思いで、自治会の区長や消防団員を務め、組織では男子部本部長として、地域に大きく貢献しています。
 「白米は白米にはあらず、すなわち命なり」。この一節を拝すると、米作りに励んだ人の厳しい労働、労苦、そして真心に思いをはせられる大聖人の慈愛が胸に迫ります。先生はつづってくださっています。
 「今、創価の農漁光部が、『農漁村ルネサンスの旗手』として、『食の安全を担い立つ賢者』として、『地域社会を照らす灯台』として、生命尊厳の希望の新時代を勝ち開いていく時が来た」
 “危機の時代”を生きる今こそ、人類の生命を支え、地域を照らす、農漁光部の深き使命を胸に、全国の皆さまと共に前進していきます。

メモ

 「白米一俵御書」は、大聖人が、門下からの真心の御供養に応えて認められたお手紙。御述作の年月や宛先など、詳細は分かっていない。