〈Switch――共育のまなざし〉 池田先生の励ましの言葉から2022年7月21日

  • わが子の勉強のことで悩む親御さんへ

 1学期の終業式を終え、わが子が持ち帰った通知表を見て、一喜一憂……多くの家庭で見られる光景ではないでしょうか。子どもの成績のことで悩んでいる保護者は少なくありません。今回は「学ぶ心、学ぶ意味」をテーマに、池田先生が親御さんたちに向けて送った励ましの言葉を、『21世紀への母と子を語る』(『池田大作全集』第62巻所収)の中から抜粋して紹介します。(編集・構成=大宮将之)

「学ぼう」という心を持ち続ける人が偉い

1996年6月、メキシコのベラクルス国際空港に降り立った池田先生を、子どもたちが歓迎。先生は「いつまでも力強く、生き抜いてください。太陽のように!」と。この励ましを胸に、経済苦の中でも勉学を重ね、その後、公認会計士になった友もいる

1996年6月、メキシコのベラクルス国際空港に降り立った池田先生を、子どもたちが歓迎。先生は「いつまでも力強く、生き抜いてください。太陽のように!」と。この励ましを胸に、経済苦の中でも勉学を重ね、その後、公認会計士になった友もいる

命令調の言葉が嫌い

 <「子どもが、いくら言っても勉強しないんです」「どうしたら勉強させられるでしょうか」。そんな相談が、多くの親から寄せられました。また、近年、日本では子どもの基礎的な学力の低下を指摘する声も……。池田先生は語りました>
  
 日本全体の学力も大きな問題かもしれませんが、お母さんたちにとっては、「わが子」の学力が最大の心配ごとでしょう(笑い)。
  
 以前、創価学会青年部の難民視察団が、カンボジアに行った時のことです。たいへん印象的だったらしく、報告してくれました。
  
 悲惨な戦争を逃れてきた多くの避難民が、水や食糧の確保もままならないような、ぎりぎりの状況で生活していました。青年部員は、そこにいる子どもたちに、「今、いちばん、何をしたい?」と聞いてみた。すると、子どもたちは、輝く瞳で答えました。「早く学校に行って、勉強がしたい!」と――。
  
 子どもは本来、「学ぼう!」「伸びよう!」「吸収しよう!」という意欲を持っているものです。
  
 終戦直後の日本を振り返れば、よく分かります。生活は苦しく、皆、お腹をすかせていたが、青少年にとって、食べ物と同じくらい必要だったのは、精神の栄養でした。皆、「学ぶ」ことに飢えていました。一冊の本を手に入れるために、長い行列に並んだものです。
  
 ◆◇◆ 
  
 要は、子どもの「やる気」を、どう引き出すかだね。「勉強しなさい」と一方的にいくら言っても、子どもはかえって反発することが多い。とくに子どもは、「~しなさい」といった命令調の言葉が嫌いなのです。
  

人生に勝つために

 <確かに、親がいくら「ちゃんと勉強しなさい」と言っても、子ども本人がその気にならないかぎり、逆効果だったという話は、よく耳にします>
  
 お母さん方にしても、自分の子ども時代を振り返れば、そんなに「勉強しなさい」とは言えないはずでしょう(笑い)。
  
 「勉強ができる」からといって、「幸福になる」とはかぎらない。「いい学校を出た」からといって、「立派な人間」とはかぎらない。この当たり前のことを、皆、忘れている。それを混同するから、多くの問題も生まれているのです。
  
 「人間の偉さ」と「成績」は、関係ありません。
 ではなぜ、勉強するのか。
  
 「知は力なり」です。勉強は、自分に力をつけるためにするのです。「人生に勝つため」に学ぶのです。その力で社会に貢献するのです。
  
 勉強していないと、将来、いざという時に、力を発揮できない。夢を持った時に、夢が実現できない。勉強も、努力もしないで、立派になった人はいません。
  

引き出す 励ます

 <マスメディアの影響なのか、努力や忍耐を要する地味なことよりも、華やかな面ばかりに目を向ける人も少なくないのが実情です>
  
 どんな世界であれ、勉強と努力なくして一流にはなれません。華やかに見えるスポーツや、音楽といった世界でも同じです。
  
 もちろん、学校の勉強だけが、勉強ではない。人それぞれ、得意や不得意もある。しかし「学ぼう」「勉強しよう」という心を持ち続けることが大切です。「勉強ができる人」が偉いのではない。「勉強しようという心」を持ち続ける人こそ、偉いのです。
  
 ですから、お母さんは、子どもの成績に一喜一憂するよりも、子どもの「学ぼうとする心」を引き出し、たたえてあげてほしい。「お前はだめだ」とか、「どうして、こんなことも分からないの」などと、絶対に言ってはいけません。
  
 大事なのは、「やる気」を引き出すこと。「やればできる」という自信をつけさせることです。「お母さんがしっかり見守って、祈っていてあげるから、あなたは安心して勉強しなさい」と、あたたかく包容し、励ましていくことが大事です。
  
 「押しつけ」てはいけない。「引き出す」のです。「命令」はいけない。「励ます」のです。
  

持続は力なり

 <ある女性リーダーが、青年時代に池田先生から「『決意』が『実践』になり、『実践』が『習慣』になった人は強い」と励ましてもらった思い出を述懐しました>
  
 「持続は力なり」です。何ごとであれ、苦労も、辛抱もしないで、いきなり伸びるようなことは、ありません。そんなのは幻です。
  
 途中の困難を避けて、成果だけ得ようとするのは怠惰であり、要領です。「どうせ、分からないから」と、あきらめてしまうのは弱さです。
  
 ときには、負けそうになることもあるでしょう。投げだしたくなったり、あきらめたくなることもある。挫折することもある。しかし、途中で少々、止まってしまったとしても、もう一度、決意を新たにして、粘り強く進んでいけばよいのです。それが本当の強さです。
  
 お母さんにも、辛抱が必要です。じっと見守りながら、子どもの「前へ進もうとする心」を励ましてあげるのです。少しでも、一歩でも前進したら、「頑張ったね」「よくやったね」「さすがだね」と大いにほめてあげるのです。
  

本に親しむ習慣を

 <ここで話題は「読書」に移ります。子どもの「学び」をより豊かなものにするために、池田先生は、「良書に触れることの大切さ」を訴えます>
  
 私は、現在の活字離れの風潮を深刻に考えている一人です。今はコンピューターも発達したし、本以外にも、情報を得るには、いろいろと便利なものはある。しかし、じっくり本を読むことによって、頭が鍛えられる。批判力もつくし、想像力も豊かになっていきます。また、「読書によって、学力の基本が身につく」と指摘する識者は多い。
  
 社会人として生活するために必要な「読み書き」の力もしぜんに備わっていきます。ですから、お子さんには、本に親しむ「習慣」をつけてほしい。何も、むずかしく、かたくるしいだけの本を子どもに読ませる必要はない。子どもが「おもしろい」と感じられるような本を、子どもと一緒になって読み、聞かせていけばよいのです。
  
 忙しい毎日だと思いますが、子どもばかりでなく、お母さんも読書に挑戦してほしい。その姿から、子どもは何かを感じ取っていくでしょう。
  

若き日の池田先生が「戸田大学」の教材として学んだ書籍

若き日の池田先生が「戸田大学」の教材として学んだ書籍

限りない向上

 <自ら学ぶことの大切さは、母親に限らず、父親も、さらには子どもと関わる全ての大人にも、共通するものでしょう。「生き生きと学んでいる大人の姿」から、子どもたちも「学びへの興味・関心」を自然と抱いていくに違いありません。先生は呼び掛けました>
  
 戸田先生は、最後の最後まで「勉強せよ。勉強しない者は私の弟子ではない」と厳しく言われていました。先生の教えどおり、今も私は、学び続けています。
  
 戸田先生の事業が、いちばん苦境にあったころ、それを支える私は、大学に行きたくても行けなかった。しかし先生は、「心配するな。ぼくが大学の勉強を、みんな教えるからな。勉強は、ぼくにまかしておけ」と言われ、毎日曜日、ご自身の休養もさしおいて、ありとあらゆる学問を個人教授してくださった。日曜だけでは足りず、会社の始業時間前の早朝もです。
  
 生命を削ってでも、ご自身の持てるすべてを、私に伝えきっておこうという気迫であられた。ありがたい師匠でした。私は「戸田大学」の卒業生です。それがいちばんの誇りです。
  
 ◆◇◆ 
  
 「学は光」「無学は闇」――学び続ける人は美しい。学ぶ姿は、すがすがしい。一歩、深い人生を生きることができる。
 親も、子も、ともに学びながら、限りない向上の人生を歩んでいこうではありませんか。
  

【ご感想をお寄せください】
<メール>kansou@seikyo-np.jp
<ファクス>03-5360-9613
  
  
 連載「Switch――共育のまなざし」のまとめ記事はこちらから。過去の記事を読むことができます(電子版の有料会員)。