私が社長に反抗し、社長は激怒して事務所を出ていった。


これまで受け続けてきたパワハラもあり、私はすっかり参ってしまった。食事がほとんど喉を通らなくなっていた。お腹がすいたような気がするのだけど、食べ物を目の前にすると気分が悪くなった。たった二日で体重が2kg以上減った。


そんな風になっても、何故か分からないけど、自分から周りに「辛い、助けて」と言えなかった。ほぼ食べ物を口にしていない私の様子に誰か気がついて、声をかけて欲しかった。


辛いのなら自分から発信しなければ誰にも分からないことは分かっていたのだけど、どうしても出来なかった。


もしかしたら、最初にうつ状態に陥った高校生だった息子は、こんな風に心の中で助けを求めていたのかも、と思った。あの子は当時、1ヶ月ほどで7キロも体重が落ちていた。今思えば、全然食べていなかったはずなのに、私は何も気がついてなかった。なんだか沈んだ様子には気がついていたのに「そのうちなんとかなるでしょ」と思っていた。分かって欲しいけど自分からは言えない。自分がそうなってみて改めて、そばにいる人のことをよく見て、何かおかしいと思ったら積極的に声をかけなくてはいけないと思った。


翌日、ものすごく気が重かったが、普通に出勤した。


事務所からはそれまで置いてあった資料などが全て撤去され、パソコンとプリンターと電話だけが残されていた。思わず「ふ~ん。そういう子供みたいなことするのね」と独り言を言っていた。何も無いので、仕事もない。仕方なく、いつもより念入りに掃除をして、YouTubeで勉強をして時間を過ごした。


結局社長は現れなかったが、お客様のところを訪問しているとか、通院とか、1日くらい来ないこともあるかもしれない。週末を挟んで月曜日、もう一度出勤した。